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【生理か?更年期障害か?】

「『更年期障害と生理とどっちが辛いか?』ですか、人によるとは思いますけど、私は、更年期のほうが辛かったかな。」 

そう話すのは“働く女性がどんな時も自分らしく働き続けることが出来る社会を目指す”と言うことを事業コンセプトに掲げるコンサルタント会社「株式会社HANAEMI」の代表・和田聖子さん。ご自身も産業カウンセラーやキャリアカウンセラーの資格を持つ。1970年、兵庫県丹波篠山市生まれ。まさに今、更年期真っ只中の世代だ。

(「株式会社HANAEMI」の代表・和田聖子さん)

これまで女性の生理の辛さ、めんどくささ、厄介さについて取材を重ね、女性とは生理と言う何とも大変なものと人生の大半を付き合わねばならないのか、とようやく理解出来始めたところに、生理よりまだ辛いものがあると言うのか。いやはや!なんともはや!
その理由を和田さんはこう説明する。

「確かに、生理は、今思い出すとしんどかったと思うんですが、当時は、それが当たり前と感じていましたもんね。もちろん、その考え方は、今では、よくないと思いますが」

ボクは、直球で訊く。

「実際、生理は酷かったんですか?」

随分とこうした質問をすることへの心理的障壁は低くなった気がする。相手の身体のことを慮る気持ちがあれば、意外と素直に出てくる気がする。
いずれにせよ、まだ“気がする”レベルだけれど。
和田さんは答える。

「今思うと、酷い方だったと思いますよ。痛みが出ちゃうと起き上がれない。特に腰の痛みが酷くてね。立っていられなくなるの。その結果、鎮痛剤を朝から晩まで3日間飲み続けると言うようなことが、毎月のルーティーンだった気がしますね」

にも拘わらず、生理より更年期障害の方が辛いと言う。その訳は?

「生理はね、周期があるので、いつ来るか分かるじゃないですか。一方、更年期障害は周期がないので、いつ何時なるかが分からない。特に最初の頃は、どうしてこんなことになるのか、原因が分かっていないと言うのが一番辛かったですね。自分で一切コントロール出来なかったですし。今は、原因も分かり、治療もしているので、その辛さは半減しています」

実際、和田さんの更年期障害は重かったそうだ。兆候は45歳の頃。当時は東京に本社を置く広告系の会社の関西の事業所長の要職にあった。
ある時・・・

「部下に注意しているうちに、止まらなくなっちゃって。このままだとパワハラになっちゃうと言うことは分かっていたんですが、それでも止まらなかったんです。注意を受けていた部下の顔から、汗がタラ~っと流れていたのを覚えています。何であんなことを言っちゃったんだろう?どうしたんだろう、私?って言う感じで。仕事から自宅に帰ると、もう自己嫌悪にさいなまれ、突然、涙が止まらなくなることもしばしばありました。さらに、自信もなくなりつつあって、職場で自分の悪口を言われているのでは?と言う妄想にもとりつかれ、ますます自己嫌悪にと言う負のスパイラルに陥りましたね。そんな時、社長の勧めもあって、病院に行くと、そこでようやく更年期障害であることが明らかになったんです」

なるほど。確かにこれだと生理の辛さを超えている。
しかし、そもそも「更年期」とはいつ頃から始まるかご存知か?閉経をもってスタート?いやいやそうではない。(って、あたかも自分はよく知っているように書いているが、このあたりも全くの無知だった)
更年期とは、「閉経期前後の10年間」のことを指すそうだ。うん?
更年期に加えて、今度は「閉経期」なる言葉が出てきた。
閉経とは「はい!この日で閉経です!!閉店ガラガラ、ワォ!」と言う明確なものではないらしい。
和田さんの場合はこうだったそうだ。

「生理の間隔が長くなるんです。周期を打っていたものが、1回飛ぶとか。そして、あれ?元に戻ったのかなぁと思ったら、今度は月に2回来たりとか。私はなかったけれど、(出血の)量が異常に多くなったりとか。そう!若い時以上に凄い出血量になったりとか。しかし、結局は、間隔があいていって、量も徐々に減っていって、そして閉経を迎えるんです」

そして、ここから更年期の“後半”を迎えると言うわけだ。
と言うことは更年期の“前半”は生理があると言うわけだ。
さらに、と言うことは毎月の生理の痛みに耐えながら、更年期障害の辛さにも向き合わないといけないと言う時期があるわけだ。
相変わらず、ボクは、また呆けた質問をした。

「生理もある。更年期障害も来る。ダブルパンチですやん?もう、ボコボコですやん?」

和田さんは軽く微笑みながらこう答えた。

「そうですね」

しかし、こう付け足した。

「生理は、女性ホルモンであるエストロゲンが卵巣からの分泌されることなどによってひき起こされるわけで、更年期障害は、反対にこのエストロゲンの分泌が減少することから引き起こされるわけですよね。こう言うと、あたかもエストロゲンが悪者のように見えてしまいますが、もちろんそれは違いますよね。エストロゲンは、女性の身体を守ってくれているんです。と言うのも、更年期が終わった段階で、女性は病気の発症率が上がるんです。例えば、骨がもろくなる「骨粗しょう症」のリスクが増加するであるとか、「高血圧」や「動脈硬化」のリスクも増加します。それまでは、エストロゲンが守っていてくれたんですよね。そう考えると、更年期と言うのは、そういうことに耐えうるよう準備を進める移行期と言えるのかもしれません」

もっと更年期、もっと更年期障害の話もお聞きしたいが(男性にも更年期障害と言うのはあるそうだし)、今回はあくまで「生理」がテーマ、ここで総括してもらうことにした。

「ちゃんと周期がある人は、その周期を活用すればいいんです。自己コントロールがしやすくなります。確かに“元気な瞬間”って短いけれど、その瞬間はパフォーマンスが出しやすい時!また、ちゃんと周期を知っていれば自分の感情コントロールもしやすくなります。しんどいものはしんどいけれど、年がら年中ダッシュすることは出来ません。“生理があるおかげ”と捉えて、自分で強弱を作る。そんな風に強弱を作ることが出来たら“頑張れる時期”と言うのも分かってくるので、周期が順調であるのならば、生理をバロメーターにすれば、パフォーマンスは上げやすくなると思いますね。更年期はそれがないので、下手すると突っ走ってしまうし、反対にしんどくなると、しんどいままになって、浮き上がれるキッカケすら見つけられずに沈んじゃいますからね。」

なるほど。生理への見方が少し変わった気がした。
ところで、取材中に和田さんに注意されたことがある。

「大谷さん!今『女性って大変ですよね』とおっしゃいましたが、こうは続けないで下さいね!『無理せんと、ゆっくりしときね』と」

ボクの呆けた顔はますます呆けていたに違いない。この人にはそれだけでは伝わらいと理解していただけたのか、さらに続ける。

「それだと、その女性は、この先のキャリアを失う可能性がある。生理は当然個人が抱える問題ですが、企業においては、その職場の問題。周囲がどうサポートをしていか、協力していくべきか、みんなで考える問題なのです」

確かに。
しかし、どうだろうか?企業の経営者は、まだまだ大半が男性。こうした和田さんのアドバイスに、どれだけ真摯に耳傾けているのだろうか。

「聞こうとされない方、聞きたくないと言う方、さらに未だに『気のせいだ!』と言う方もおられます。(笑)『自己コントロール出来ない人間が、管理職になるべきじゃない』と言う発言も未だにありますよ」

神様でもない限り完全に自己コントロール出来る人などいない。
しかし、それでもボクは知っている。多くの若き男性経営者たちが、そうした風潮を打ち破るよう努力していることを。問題は、頭の中が以前“昭和”と言う、そうボクらの世代だ。

「大谷さん!本音を言ってもいいですか?」

はい!もちろん!!

「その世代には、多分何を言ってももう無理やろなと、私は思っています」

おっしゃる通りかも(汗)

「もちろん、最低限の知識は持って欲しいけれど、まずは若い世代が動きやすいように任せてやって欲しいですね。新しい組織作りを、若い世代に任せる勇気を持って欲しいと思います」

同世代の皆さん、今こそ“勇気”を見せようではありませんか!誤解を恐れずに言うと、それが最後の大きな仕事に違いないのだから。

※参考:
働く女性のメンタルキャリアをサポート│HANAEMI (w-hanaemi-personal.com)



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