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最後のマスカラ【毎週ショートショートnote】

往年のバーレスクダンサーだったばあちゃんと、メキシコさながらのマリアッチ楽団を結成していたじいちゃんが大声で話をしていた。

あいかわらず話がかみ合っていなかったが二人は楽しそうだった。二人ともショービズに関わっていたというわけだ。私はその孫娘だ。血を引いたせいなのか私もバルーンアーティストとして大道芸人をしている。

じいちゃんによると、ばあちゃんの肢体はそれはそれは見事だったそうなのだが、その美貌とそれを引き立てるメイクはそれを遥かに超えていたらしい。

「観客はばあちゃんの技術よりもその目力に圧倒されていたんだ!」
じいちゃんはこの話題のときだけはしっかりしていた。

容姿の衰えとともに早くに引退したばあちゃんだったが、じいちゃんは楽団からソロに転身して長らく現役だった。日本でも数少ないある楽器専門のパーカッショニストだった。

なんてことは無い。二人は最後のマスカラと最後のマラカスで盛り上がっていたのだ。

私にとって自慢の二人だったが最近はじいちゃんの衰えが目立ち自宅での介護が困難になった。そんなじいちゃんをそばで世話をしたいのだ、とばあちゃんも同じ介護施設に入ることになった。

「介護は、明日からだよ!」

確か私が二人に告げたのはその一言のはずだった。

(524文字)

いつもありがとうございます。今週も参加できて良かったです。








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