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呪いの臭み【毎週ショートショートnote】

世間では「不幸の臭み」というのが流行っていて社会問題化していた。

よくある人を恐怖に陥れて面白がるパターンで当初は「呪いの臭み」で始まったが明らかに人為的なので「不幸の臭み」と呼ばれるようになった。

それは宅配業者でさえ配送時に顔をしかめるほど臭くて、実際業界では「不幸の臭み」の引き受け拒否が検討されるほどだった。

不幸にもその「臭み」が届いてしまった場合、3日以内に新たな「不幸の臭み」を誰かに送らないと大変な事になる。発送を拒否したもの、3日に間に合わなかったものにはその10倍もの「臭み」が送られてくるのだ。

その「臭み」にはAppleタグが付いておりどこぞの誰かに追跡されていた。心あるものが「臭み」抜きでAppleタグだけ送付したとしても事情を知らぬものが受け取ると「臭み」10倍が待ち受けていた。

「臭み」には指定はなかったが不幸の多くはニシンの発酵食品「シュールストレミング」によるものだった。

同梱のマニュアルにはそれが推奨され、さらにそれによるテスターの作り方も事細かに書かれていたからだ。とにかく不幸な者はそのマニュアルにさえ従えばさらなる「臭み」10倍が避けられた。

そして「シュールストレミング」であるが、これは本場スウェーデンでは缶を開ける前にご近所に挨拶回りして注意喚起するほどの代物である。

その騒動のさなか、知人がソレによりアパートを追い出されたという話を聞いた。ベタ過ぎる話ではあるが…。

「いや参ったよ!ソレが届いた時、僕はちょうど流行り病で嗅覚を失っていたんだ。事の重大さに気づかなくて大惨事さ…不幸ってやつは重なるもんだね」

いやそこまでいくと不幸じゃなくて呪いなんじゃないかな……(^0^;)

送ったのはアタシだけど…


(708文字)

たらはかに様の毎週ショートショートnoteに参加致しました。

('23.9.18 18:50追加)

本記事を投稿した後に書こうと思っていたはずなのに、またコメントを頂いた方に追加記事を書きます!という思いをお伝えしたはずなのに、一向に「シュールストレミング」にまつわる後書きが書けません。

何なんだこの心理的抵抗は!

とここまで書く気を失わせる「シュールストレミング」って凄いと思います。パワーワードとしてはすぐに使いたくなるほどの最強なのですが……いざそれをレポートしようとすると途端にやる気が失せるのはなぜ😭



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