見出し画像

【OPOI感想】ワンピースオンアイスという幻のような真実②

OPOI感想、PART2です。
PART1はこちら↓



宇野昌磨はルフィになりえるか

初めのキャラ紹介パートでルフィが登場したところまで書いて終わっておりました。その続きからいきます。

まず、昌磨さんというのはどういう人なのか。

これもみなさん言ってましたが、ルフィとは真逆と言っていいと思います。

誰とでもすぐ仲良くなるルフィと、昔は初対面の人とは誰かを介してじゃないと話せなかった人見知りの昌磨さん。

基本笑顔のルフィと、「楽しいことがないなら笑えない」と作り笑いを嫌う昌磨さん。 

思ったことを直ぐに口にできるルフィと、基本無口で考えてから話す昌磨さん。

根幹の部分は共通項もあるのですが、演技に現れるような表面的な気質はかなり違う。

まあそもそも本人とキャラが似てる必要は全然ないんです。本人として出るわけじゃなく、演技することが前提なわけなので。

ただ、普通のドラマとか舞台と話が違うのは…ほぼ全員が、演技未経験であること。
演技未経験となると、やっぱり元のキャラに似ている方が有利になってくるんじゃないか、と思いました。

昌磨さんがスケーターとして超一流なことは知ってますが、演技ができるかは全然知らない。

というかむしろ、苦手な部類の可能性もあるのかな、と思ってたりもしました。だからこそ、元のパーソナリティとかなり離れているルフィを演じるというのが結構、大丈夫なのかな…?みたいな、
どうなるんだろう?っていう予想のつかない気持ちを持っていました。

ちなみに、なんで苦手だと思ったかというと。
今まで、キャラクターを演じるタイプのプログラムがほぼないからです。

フィギュアスケートには様々なプログラムがありますが、大きく二つに分けることができると思っています。
①ストーリーがある
②ストーリーがない
です。

①の代表格は、オペラ座の怪人とか、ロミオとジュリエットとか。数々の選手が滑っています。
音楽に合わせて滑ることが前提なので、本当にキャラになりきっているわけではないかもしれませんが、悲劇では切なさを、喜劇ではコミカルさを表情も使いながら表現していく。これはワンピオンアイスにおいての「演技」に繋がってくる要素だと思います。

その意味で、昨季のFS「こうもり」が記憶に新しい友野くんがキャラクターを演じる姿はすんなり想像できました。彼は①に該当するプログラムが多いイメージ。


一方昌磨さんは、②ストーリーがないプログラムが多いと思うんです。
昨季をとっても、FSはG線上のアリア。SPはGravity。どちらも映画やミュージカルをテーマにしたものではなく、曲として独立してできているものです。

もちろん音楽にも全くストーリーが無いわけじゃない。それぞれの楽曲で伝えたい思いというのは存在しています。ただそれは解釈を通して読み取るもので、ロミオ、ジュリエット、みたいなキャラが明確にいるわけじゃない。
そういう、キャラがはっきりしているプログラムを昌磨さんが滑っているイメージが私にはほとんどありません。

しいて言うなら、トゥーランドットとかでしょうか。カラフ王子。
ただこれはもう擦り倒された曲なので、ストーリーやキャラより曲の印象が強い気がします。

(蛇足ですが、私はこの2015GPFを見て宇野昌磨に惚れたのでこの演技は全人類に見てほしいです)

基本的に昌磨さんの真骨頂は、キャラを演じるとかではなく、実体のない音楽というものを具現化する表現だと思っています。
元のストーリー、脚本があるわけではないプログラム。それを彼が滑ると、そこに無限の解釈が生まれるような。

Oboe concertという曲にストーリーはない。誰かを演じているわけじゃない。ただ、oboeの旋律が人の形をとったらこんな風になるだろう。そう思えるのが、彼のスケートだと思っています。彼のそういうスケートが大好きです。

そう思う一方で。

明確にストーリーを追ってキャラを演じるスケートもしてくれないだろうか!?という願望はずっと持っていました。

ミュージカル系のプログラムってやっぱり定番なので、ストーリーのあるプログラムってどの選手も一度は通るイメージがあったのですが、どういうわけか昌磨さんはそれが他選手と比べても少ない、なんでなんだろう、と思ってきました(ちゃんと数えたわけじゃないですが)。

昌磨さんは自分で曲を決めません。でも、何らかの理由でストーリー性の強いものを避けてたりするのかな?あるいは、美穂子先生やステファンは昌磨さんにはそういうのが向いてないと判断しているのかな?と思ったりもしていました。

(またまた蛇足ですが、私は昌磨さんの演じるジャンバルジャンが見たいです…彼の泥臭い人間味の中の気高さと美しさは、レミゼラブルの世界観にきっと会う。いつか絶対に滑ってほしい。)
レ・ミゼラブルじゃなくても、ミュージカルのような脚本のはっきりしたプログラムが来ないかな、と思っていたら。

…めちゃめちゃはっきりしたやつ来た………

こんな形で来るとは思ってなかった。

そんな感じで、ついに来た!という気持ちとどうなるんだ…?という気持ちが混在しておりました。



8年間推している男がルフィになった夏

語りが長くなりましたが、ここで横浜千秋楽の視点に戻ります。

麦わらの一味が次々と登場し、ついに最後に船長が登場。

…そう、そこにいたのは、紛れもないルフィでした。
宇野昌磨はどこにもいなかった。

滑るというより、駆け回る。でもスケートのスピード感と滑らかさは確かにある。
ルフィならきっとこう動く、その姿がありました。

なによりすごかったのがその表情。普段の愁いを帯びがちな美少年フェイスは成りを潜め、本当に漫画のような爽快で眩しいニカっと笑顔。
楽しい時の昌磨さんの笑い方とも違う、「ルフィの笑顔」としか言いようのない笑顔。

作画萩尾望都の少年が、作画尾田栄一郎になっていた。

腰を低くして滑り、
キョロキョロと、目だけではなく首全体(何なら肩から)を回して周りを見て、観客を見つけると嬉しそうに腕いっぱい振ってくれる。

これは他のキャストにも言えることなのですが、本人の普段の癖や素が、表情にも動きにも一切出ない。

通常の演技は5分弱。今回はその何十倍もの時間、観客の目に晒され続けるにも関わらず、一秒たりとも気を抜かずルフィになっている。素の昌磨さんとは一見真逆の気質のルフィに。

8年間推していて、彼のすごさよくわかっているつもりだったのに。まだわかっていなかったんだ、と反省しました。

演技できるのかな、とか思った自分、宇野昌磨を舐め過ぎ。

よく思い出してみると、昌磨さんは(初めからできたわけではないのかもしれないけど)大抵のことができる。フィギュアスケートはもちろん素の運動神経もいいし(側宙してた映像持ってる人いたらください)、絵もゲームも本気出せば上手い。

本気になれば、それが容易ではなくとも必ずやり遂げる。
そういう姿をこの8年間何度も見てきたはずなのに。
まだ新しい凄さを見せてくれる。

宇野昌磨は、天才なのだ(今更?)。


フィギュアの"演技"、俳優の"演技"

(私はミュージカルとかを見るのは好きなんですけど、ただ好きなだけで演技については全くの素人です。知ったかぶりになってたらごめんなさい!)

まず前提として、私たちは誰もリアルで麦わらの一味に会ったことが無い。死ぬほど野暮なことを言うと、現実にはいないので。

だから、マネするとかはできない。知らない部分を、「ルフィだったらこう動きそうだな」を考えて動かなければいけなかったと思います。

漫画やアニメだと、そのキャラがメインの時はスポットを当ててくれてるので何をやっているか描かれていますが、メインでないときはフレームアウトしてるので何をしてるかわからないし、わからなくて問題ないと判断されている。

しかし今回は自分がメインでないシーンでも常に見られている状況だったので、そこはそれぞれのキャストや演技指導の方たちが想像して膨らませて擦り合わせて作り上げていたんだと推察します。

それがすごい。演技、完全に素人の方たちですよ…。それも映像作品じゃなく、生なので失敗もできない。どれだけ練習した、というか考えたんだろう。

「一ケ月という、アイスショーとしては異例の稽古期間」とか言いましたが、これを見てしまうと逆の意味で異例である。一か月でなんでこんなものが作れるんだ…

ただ、彼らは演技に関しては素人かもしれないけど、演技の素養は前提としてある人たちだったのかもなと後から振り返ると感じます。なにせ、普段から「360度、一秒たりとも目を離さずに見られる」という経験を当たり前のようにしている人たちなのですから。

フィギュアスケートファンの方には周知ですが、フィギュアの採点の約半分を占める演技構成点は、「スケーティング技術」「技のつなぎ」「演技力」「振り付け」「音楽の解釈」という5つの項目からなります。
高い評価を得るためには技術を持ち、且つそれを目に見えてわかる形でアピールしていかなければいけない。常に、どう見られているか考えながらプログラムを滑り抜くわけです。

「人に見られる」ということに関してのプロフェッショナル。だからこそ、ふと気を抜いてしまうことが無い。どう動いたらどう見えるか、を10年以上研究し続けている、それに人生をかけている人たちなわけで。そして、アスリートでもあるから体の使い方にも長けている。
そうなってくると、体の動かし方については練習する必要もなく始めから仕上がっていたのかなと思います。だからキャラ解釈、解像度の向上に注力出来た結果が、あの「本物がいる」感だったのかな。

これもまた、フィギュアスケーターが演技をする意味の1つだったなあと振り返ります。考えれば考えるほどこの企画立ち上げた金谷さん、すごすぎないか。


公演感想続き

感想が行ったり来たりしておりますが、また公演内容に戻っていこうと思います。このあたりから色んなキャラの初出シーンが続くので、それぞれのキャラについてお話していく感じでいきます。

マネマネの実

麦わらの一味の登場シーンの後は、溺れていたボン・クレーを助けるところから。本格的に演技が始まるのはここからですね(すでにこんなに語ってるのに…?)

ボンちゃんの完成度はもう言うまでもないんですけど、初見で驚いたのはお面です。マネマネの実の能力、どうやるんだろう…?と思ってたらこう来たか!これは予備情報なしだったので驚いたし、取り替えのからくりがわからない。めっちゃスムーズ。

宇野昌磨、本田望結、織田信成…みんなの顔をしたお面でクルクル顔が変わってく。小道具手が込んでるな…衣装の完璧さもそうですけど、ほんと美術さんの仕事が素晴らしい。チケット高いけど、ここにお金かけた結果高いんだろうなというのがクオリティからわかるので、お金払ってよかったなあと思えましたね。
お面どこにしまってたんだろう…あれだけ瞬時に取り替えておきながら、スピンしても取れないくらいには固定されてる。ほんとに仕組みがわからんかった。

今回、プロジェクションマッピングの見やすさ的にはスタンドの方が良いという評判も聞かれましたが、こういうところはやっぱり近ければ近いほうが良いですね。

(配信で見た時にお面を回収して裏に持っていく昌磨さんが映っていてびっくりしました…現地で全然気づかなかった。基本ルフィ推しカメラにしてたつもりだったんだけど、視覚の穴ついてるんだなあ)


☆しばらく加筆する時間がなさそうなので、一度ここで切ります🙇すごく中途半端なところですみません!続きはPART3で!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?