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神0話 「女神と魔王」⑤ #6

アテネ、パナケイア様が宿る神殿に到着した。

「パナケイア様  !  …  パナケイア様  !!  アテネです  !   …  パナケイア様  !!  」

そこは、広い広いどこまでも続いている草原と、前が見えない程の真っ白な霧。そのど真ん中に、大きな大きな木だけが、ぼんやり見えた。

大きな大きな木は、ここパナケイアの神殿でエネルギーを貯えているようだ。その奥から、顔は優しい見た目だが、体は大きい、薄ピンク色の衣装を着た神が現れた。

あくびをしながら大きな大きな木の裏から、ヒョイと現れ、歩いてアテネの目の前に現れた。

「うるさい  !  何度も呼ばなくても  !   私はいます   !!  」

寝ていたところを起こしてしまったようだった。

「あら、それは失礼致しました。 お久しぶりです  !  パナケイア様  ~  …  。」

「そ  ー  ね  、 お  ・  ひ  ・  さ  ・  し  ・  ぶ   ・  り  。  …  …  で  ?   、魔王に落ちて、 穢れたアテネが何の用  ?!  」

「  …  酷い言い方ですわね  ~  !!  …  …  」

皮肉な顔をし言った後、咳払いを挟み、真剣な顔にしてから、パナケイアに言った。

「今日は、 頼みがありまして  !   …   。  」

パナケイアは、それを聞いた途端、アテネを睨みつけた!。その様子にアテネは、少し動揺しながら、強い心を持ち言った。

「こっこの子を  !  どうか、治してください  !!  」

パナケイアは、アテネが何をしに来たのか分かっていた。で、こう答えるつもりだった。

「ふん  !   嫌だね  !  」

「なぜです  ?!  」

「そのまま、ほっておいた方が死にそうだかさ  !  」

「なっ  …  !!  」

「だって  !   そーだろ  ?   。あんたと、魔王の子供なんだから  !   …  。」

と、パナケイアに怒鳴られた。実は、アテネは、こうなる事を100%確信していた。
だから、違う作戦を用意していたのだった。

「あら  、  そう  !   。わかった  !  」

アテネは、手から液体が入った瓶を沢山、創り出す。

「だったら、この瓶の中の液体、そこらじゅうに撒き散らすわよ  !?  」

「ん  ?  あなた  !  何言ってるの  ?  」

パナケイアは、液体をじっくりと見て、成分を分析し、気づいた。

「その液体って  !?  !!  まさか  !  あんたこの神聖な私の土地を枯らすつもり  ??  !!  」

アテネは、コクんと大きく頷き、言った。

「本気よ  !!   リンネを今すぐ治してください  !   。そしたら、 今すぐ辞めるわ  !   さぁ、どーするの  ?  」

アテネの手の平から、 液体の入った瓶が創り出され、どんどん増えていく  !!  。

焦りを見せたパナケイアは、アテネに止めてもらうよう必死になる。

「アテネ  !  悪魔がするような真似しないで  !  」

アテネは、その言葉に腹が立ち、瓶の量をさらに増やす。

「違うわ  !   パナケイア様これは脅しと言うのよ  !  。」

「なんでもいいわよ  !!  それ早くやめなさい  !!  」

パナケイアの舐めた態度と言い方にまた、アテネは、腹を立て、今度は、瓶をひとつ手に持ち、蓋を開けた。

「ちょっと  !!   アテネ  ?!   …  !  。」

「これをまかれたくなきゃ  !!   リンネを治して  !!  」

パナケイアは、焦りながら言った。

「落ち着きなさい  !   アテネ   !!  」

アテネは、瓶を逆さにしようとした。すると、パナケイアは、妥協した。

「あ  ー  待って  !!  。わかったわよ  !!   その子治すから  !!   だから  !   やめてアテネ  !!  」

まだ、やめようとしない、 アテネだったが  。

「それ、ほんと  ?!  手を抜いたり、殺したりしたら  …  …   !!  」

アテネは、瓶を逆さに持ち、蓋を開けようとする仕草をとり、パナケイアを脅している。

「わかった  !!  わかったから  、アテネ  !  その  …   リンネ君  ??  貸してくれる  ?!  」

アテネは、 その言葉を聞き、リンネを神聖なる芝生に優しく寝かし、そばを少し離れる。 パナケイアは、リンネに近づき、治癒を始めた。その間もアテネは後ろで監視する  !!  。

パナケイアは、リンネの容態を見るなり、独り言をペラペラと言い始めた。

「あ  ー  あ  ー  、こんなにも血を流して  …  。
あ  ー あ  ー  、 翼が跡形もなく見事なカタルシスね  !  。かなり、痛かっただろうね  !  …  …  。」

アテネは、パナケイアの後ろをウロウロウロウロしていた。

「  …   アテネ  !!   後ろに立たないで  !   気が散る  !!  」

パナケイアに怒鳴られたアテネは、監視を辞めなかった。何か悪さをしないか心配だったからである。

パナケイアは、しつこくウロウロするアテネに呆れて、後ろは無視と決め込み、リンネを治すことに集中した。

パナケイア のエデン、【癒しの光】を手に込め、 リ ンネの背中辺りに置く。 それに合わせるように大きな木の葉々が揺れ、 木のてっぺんに光りを集め始める。その集まった光は、リンネに向かった。

パナケイアを監視していたアテネなのに、光の美しい光景に見惚れて思わず声を出した。

「わァ  ~  」

しばらく、その美しく綺麗な光景が続き、光が霧に変わっていった。

パナケイアは、光の霧に感心しているアテネにまた呆れて、声をかける。

「終わったよ  !   翼はもう戻らないだろうけど、 命は取りとめた  !  」

アテネ、それを聞き、ほぉ~と安心する優しい表情になった。

「良かったぁ  ~  !  、って  !   えっ  ??  翼は戻らない  ?!  」

翼が戻らないという言葉の解釈は、後からきたようで、パナケイアにあたった。

「えぇ、そう  !  」

アテネは、また、心配そうな顔になり、泣き崩れた。

「どうして  !!   。リンネは、3歳で翼が生えたばかりなのに  !!  」

「私にも、無理なものはある  !   命を取りとめてやったんだから、それだけでも感謝して欲しいね  !!   」

アテネは、泣きながら立ち上がり、ぺこりと敬意を示した。

「あ  、はい  !  それはとても感謝致します  !   ありがとうございました  !!  」

「はいはい  !   ところでアンタ  !  」

アテネは、驚いた。いきなり名前をアンタと呼ばれてたからである。パナケイアは、アテネのことを今まで、アンタと呼んだことがない。

パナケイアは、急に態度を変え、冷たい口調で言った。

「もう、私の前から消えとくれ  !!  」

アテネは、当然、疑問に思う。

「なぜです  ?!  私のことをお嫌いですか  ?  」

パナケイアは、アテネのことを見ず、どこか違う場所を見て、怒るように言った。

「あぁ  、   嫌いだね  !!   悪魔の真似をする女神など  !!  」

アテネは、真剣に答える。

「パナケイア様  !!  あれは脅しです  !!  」

「おとしだろうが、 おどしだろうが、どうでもいいだよ  !!  さっさと去れ  !!  」

アテネを追い出すように言ったパナケイアの表情は、急ぎ焦っているようだった。その事になんとなく気づいたアテネは、

「は  ー  い   、ありがとうございました  !!   。パナケイア様  !  」

と言い、リンネを抱え、サタンのいる所へ帰ろうとした。
パナケイアは、やけに素直だと目をアテネにやった。すると、アテネの周りに瓶が散らかっていたのが見えた。

「あっ  !!  その下に散らばった瓶  !   片付けて行きなよ  !!  」

アテネは、完全に片付けるのを忘れていたが笑って誤魔化す。

「あっ  !  、あはは、わかっておりますよ  ー  」

手の平を下に向け、 1周回す仕草をすると、散らばっていた液体の入った瓶が消えた。一瞬で片付けたのだった。

「それでは、パナケイア様  !   失礼致しました  ~  」

そう言い、アテネは、リンネを抱えながら、翼を広げ、笑顔で飛んで行った。
そのすぐ直後、入れ違いのようにシヴァという神が現れた。

「パナケイア  !   今、 随分と力を使ったようだね 何をしたんだい  ??  」

パナケイアは、アテネの時には見せなかった、とびきり笑顔をシヴァに向けた。が、聞かれたことには、誤魔化ながら答えた。

「あら  、シヴァ様  !  …  …  ちょっと、厄介な虫が出た為  …  、追い払っておりました  ~  …  …  。シヴァ様こそ、どうなさいましたか  ?  」

「それなら、いいが  !!  …  。
あぁ  ~  、いつもの癒薬が切れてね、それを貰いに」

「ほ  ~  、なるほど  !   しばらくお待ちください  !  」

「悪いな  !  」

パナケイアは、薬を手元で作りながら、言う。

「全然ですよ  ~  !   シヴァ様  !  」

ものの、1分もかからないうちに薬が出来上がった。

「はい  、 どうぞ  !  」

と、パナケイアは、笑顔で、渡した。

「ありがとう  !   邪魔したね  !  パナケイア  !  」

シヴァは、翼で、突風を巻き起こし空へ飛んで行った。パナケイアは、その姿を、ずっと眺めていた。そして見えなくなった頃、メロメロとデレデレが現れ、呟いた。

「シヴァ様  !  今日も ス  ・  テ  ・  キ  !  ♡  」

【続く】

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