神0話「女神と魔王」④ #5
〈 カタルシス編 - 後編 - 〉
アテネは、リンネを両手で優しく包むようにして、強く抱きしめた。その姿は、泣いていた。アテネ1人では、少しパニックになっていた為、正確な判断が出来なかった。なので、呑気に空中で会話をしながら、降りてくる2人に助けを求め叫んだ。
「サタン !! アレス !! 」
何事かと驚いた2人は、即座に会話を止め、アテネの元へ降りてきた。
そして、翼を失くし、気を失っているリンネと、そのリンネを抱きしめ、泣き沈んでいるアテネを見た、アレスとサタンは、とてもショックを受けた。
アレスは、リンネに話しかけた。
「リンネくん !! 生きてるかい ? 息してる ? 」
生存確認がしたかったのだろう。
サタンは、その状況を受け入れることが出来ず、こう言った。
「リンネ ! 翼は ? … 」
アレスは、リンネからの応答がないこと、リンネの背中から血が流れていること、など、状況を判断し、把握した。
そして、現場の状況、ここに来るまでに怪しい者はいなかったか、など、冷静に1人、頭を働かせた。すると、思い出す。
「あっ ! さっきの天使たち !! 」
サタンは、目の前のリンネとアテネしか頭にない状況だったが、この言葉は耳に入り、アレスに聞き返した。
「ん ? 天使たち ? 」
天使たちを殺してしまいそうなほど、怖い表情だった。
アレスは、苛立ちや葛藤を隠せず、自分の見た者をサタンとアテネに説明する。
「さっき、この場所から、急いで立ち去る天使たちを見た ! 何が知っているかもしれない ! 聞いてくる ! 」
アレスは、近所の神 2人と、天使たち3人を捕まえ、話を聞こうと、頭に血を昇らせ、追いかけようと考えまた。だが、怒りが込み上げ顔に出る。アレスは、この顔を見られたくなく、アテネとサタンに背を向けた。急いで翼を広げ、少し宙に浮いたその時だ。誰かがアレスのズボンの裾を掴んで、引き止めた。
「まって ! … アレス 」
そうゆっくり言ったのは、目を覚ましたばかりのリンネだった。
アレスは、体を止め、振り返った。
それと同時に、 引き止められた訳を知りたい欲で、 リンネの記憶を無意識に覗いてしまった。
「あの、天使たちの仕業か !! 」
リンネの記憶を通し、真相を知ったアレスは、さらに怒り狂うような目つきになった。
だが、アテネは、そのアレスに腹を立て怒った。
「アレス ! まさか !! 記憶を覗いたの ? 」
アレスは、はっと気づき、目を下の方にむけ謝る。
「あ … うん ! … ごめん ! 覗くつもりは … 」
記憶を覗くという行為は、相手のフラッシュバックを得て、見ることができるのである。なので、アテネは、アレスに記憶を覗かれ、リンネの苦しむような表情を見た。だから、怒っていたのだった。
そうとも知らず、サタンは、近所に住む神 2人と、天使 3人に対し、腸が煮えくり返るような怒りを見せた。
「ここに住む神と天使どもが ? 、リンネをこんなにしやがったのか ?? !! 」
サタンは、強く顔を歪ませ、アレスに問うた。
アレスは、それを少し怖いと怯え、答える。
「はっ … はい ! 崩壊のエデンで【 カタルシス 】を遣って ! 」
サタンは、さらに強く顔を歪ませ、瘴気まで放ち、激怒した。
「崩壊だと !! 。【 カタルシス 】… 。許せん ! 。神と天使ども ! 、許せん !! 」
サタンは、黒い翼を広げ初め、近所の神2人と天使3人どころか大量に殺しそうな。そんな様子で、この場を去ろうとしていた。それをアテネが、止める。
「サタン ! 、サタン !! 落ち着いて !! 」
この言葉は、サタンには届かなかった。アテネはアレスに叫んだ。
「アレス ! サタンを止めて !! 」
アレスは、返事をし、素早く動いた。
サタンの前で、両手を大きく広げ、通せんぼし、言った。
「サタンさん ! 大丈夫だ ! 落ち着いて ! 」
「うるさい !! 黙れ !! アレス !! 」
と、サタンは、前にいるアレスを片手で掴んで振り落とし、もう片方の手の爪で右頬に引っかき傷を与えてしまった。が、気にとめず、サタンは、落ち着けない。今にも我を忘れ、暴れだしそうだ。そんな姿にアレスは、怯え、何も出来なくなり、固まっていた。
その時 !! 、リンネが痛みを我慢しながら、ゆっくり小さい口をあけ言った。
「おとう … さん … ! 。これはね … 、 僕が自分で … やったことだ … 。ごめんね … おとうさん … 。」
それを聞いたサタンは、怒りの顔を笑顔に変えた。
「なんだ ! 、お前がやったのか ! そうか、そうか ! 」
アレスは、口を挟む。
「んっ ? リンネくんが自分で翼を ?? 分かるよね ! 、違うよ ! 」
アテネは、俯きながら、アレスに強くあたる。
「アレス ! もういいの !! 」
アレスは、状況を呑み込めず、
「よくないよ !! 。 さっきの天使達 、 探してくる !! 」
と、混濁した表情を残し、空へ飛んで行った。
「 アッ … アレス … … まって 」
リンネは、少し焦る表情を見せた。
近所の神々・天使たちを庇おうとしていたからだ。その事に気づいていたアテネとサタン。
アテネは、リンネを再び抱きしめ言った。
「リンネ 、 大丈夫よ ! 自分のことを考えてね。 痛みはない ? 」
「あるに決まってるだろ ?! 。 こんなに血が … ! 」
サタンも、リンネのそばに寄り添い心配を示した。
アテネは、サタンに相談した。
「ねぇ、サタン ! どうにか出来ない ? 」
「んー、この世界だしな、 もう魔力は遣えない」
「そうよね ~ … … 。」
どうすることも出来ないのかとアテネは、思ったが、1つ、喜びに溢れたように閃いた。
「あっ !! パナケイア様の所へ連れていきましょう ! 」
「ん 、 だれ ? それ ? 」
「医者よ ! 医術、癒しを司る女神様なの ! あっでも … サタンは来ないで 。 」
「なぜだ ?! 」
「パナケイア様は、魔界が魔界の者が、大っ嫌いな方だから」
サタンは、何も言えず、飲み込んだ。
「あぁ、分かった ... 気をつけて ! 」
アテネは、 リンネを抱えて、 パナケイア様という女神のいる神殿へと向かって、飛んで行った。
1人残されたサタンは、家に帰って、 アレスとアテネの帰りを待つことにした。
アテネは、ものすごい速さで空を飛び、パナケイア様の神殿に到着した。ここは、ミクロスから、50000km程、離れた場所にあり、神を基準にすると、移動時間は、5時間かかる。それをアテネは今回、2時間で到着した。
アテネは、息を切らせながら、呼び叫んだ。
「パナケイア様 ! … パナケイア様 !! アテネです 。 … パナケイア様 !! 」
【続く】
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