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ちょっと変わった田舎暮らし、はじめます。#3

あの後上司の厚意で、フリーになっても定期的に仕事を依頼してくれるという事にも決まっって、フリーになることへの不安がちょっとだけ解消された。


と同時に嫌がらせから離れることができると思うと、あと少しだけ、がんばれそうな気がした。


「あ、そうだ。先輩にも報告しておかないと。」
仕事終わりの帰り道、ダメもとで先輩に電話をかけてみた。


『もしもし?どうしたの?』
「あ、お疲れ様です。あの、ちょっと報告があって。」
『うん。』


「今日、上司と懇談したんです。それで、あったこと全部話してフリーになることに決めました。」


『そっか、フリーにはいつから?』
「あと大体半月です。」
『じゃあ、あとちょっとか。』
「はい…」
電話口の先輩が少し寂しそうに微笑んでいるのがわかった。


『圭ちゃんの門出は祝わないとね!4月6日ぐらいでいいかな?』
「決めるの早すぎません?」
さっきの声色から急にウキウキにな感じになった先輩の声に思わず笑ってしまった。

正直、涙のお別れという感じじゃなくて嬉しかった。


『ふふ、じゃあまた連絡するね!』
電話が終わった後は、心が少しぽかぽかしていた。



フリーになると決める前、『今住んでいるところから電車とバスで行けるぐらい比較的近くて、生活しやすいぐ田舎すぎない田舎で、できるだけ家賃が安いところがいい』という条件のようなものを考えていた。


でも、フリーになることが決まった今、もう少しマシな、というよりもちゃんとした条件を考えなければいけない。


実家は田舎にあったけれど、両親の死後、すぐに手放したから帰れる場所じゃない。けどずっと、いつか田舎に帰りたいと思っていたのもあって、考えていた条件は外せないものばかりだった。


「いや~、でも、もっとこう、ちゃんと考えないとだめだよな~。」


家についてからそう言いながら、大学生の頃から使っているパソコンを立ち上げた。田舎暮らしを初めるとなれば、色々調べてみないと。


「何から始めるべきか。」


ひとまず検索エンジンで『田舎暮らし』と調べてみると、民家バンクのサイトが並んでいた。一番上に出てきたサイトをクリックしてみると、全国の使われていない民家がマップ上に物凄い量で映し出された。


あまり何も考えずにズームアップしてたまたま近くに表示された民家を見てみると、その民家の情報が詳しく載っていた。たまたま見た民家は約50坪の大きい民家だった。


「50坪って実際どのぐらいなんだろ。」
新しくタブを開いて『50坪 どれぐらい』と調べてみると、家族4人がのびのび暮らせるような大きさの家の画像が出てきた。


「さすがに一人でこれは大きすぎるかな。」他に探せば、いいところが出てきそうだけど、地図上に並んだ赤い点から探すのは大変そうだ。


調べ方を変えて、『田舎 移住』と検索してみた。
検索結果の上から3番目に「”トカイナカ”で理想の暮らし、しませんか?」という広告を見つけた。


魅力的な謳い文句に吸い寄せられるようにその広告をクリックすると、『名川町ながわちょう』の移住者向けページが表示された。


どんなものか見てみると、『田舎すぎない”トカイナカ”でくらしませんか?』という見出しがあり、全体的にパステルカラーで統一されたそのページは最近できたものだった。


見出しを下に下に見ていくと、おすすめポイントが書かれていた。
移住支援の助成金があることや、リフォームするもよし、DIYするもよしなどなど。


「DIYか、ちょっと楽しそう。」
DIYをするなら地域の人がサポートしてくれるらしい。
いきなり地域の人とかかわるのはちょっと抵抗があるけど、つながりは大切だし思い切ってもいいかもしれない。


おすすめポイントを見ていると、私の思い描いていた理想像と似通っていた。

「週末に行けないことはない距離だし、一回見に行ってみよう。」
今週の土曜日に個別説明に行くことにした。


最後まで読んでいただいてありがとうございます。
どんどん田舎暮らしに近づいていますので、今後も楽しみにしていてください。

梔子。

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