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みんビグラム参加作まとめ・2


こんにちは、Σです。
1年前に引き続き、制作秘話的ななにかとかを残しておこうと思います。




2022-09 「祝」

「祝」①「祝」②「祝」③

記念すべき1周年目らしく、お題は「祝」。
1つ目の作品はシンプルな対応ですが、「礻」の字形をかなり引き算的にデフォルメしていますね。類例「祝/呪」(oyadge01さん・意瞑字査印さん)が記憶にはあったので、対応解釈を考える際にその影響が表れているかもしれません。
第9回第11回第12回と風車型の作品が鮮烈で私も制作してみたいと思っていたので、4枚風車型と6枚風車型も制作しました。風車型はこれが初挑戦で、これを機にかなり視点が広がりました。
風車型の作品はいずれも、ざっくりと描いたあとにIllustratorの「オブジェクトを一括選択」という機能で調整を加えていく方法で制作しました。


2022-10 「葬」

「葬」①「葬」②

対応させやすいところから対応させていくと「艹」と「廾」、「夕」と「匕」が対応して「死」の1画目の横画が余ってしまうのが悩みどころでしたが、セリフのような飾りをつけることでこの横画と対応させました。おまけに制作した「お葬式」の「丶」/「工」の対応にもこのセリフ状の飾りを活用しています。
例によってこれだけでは飽き足らず、4枚風車型ではうまくいかなかったので6枚風車型で制作しました。


2022-11 「郷」

「郷」①「郷」②

お題のアンビグラマビリティが高く、1つ目の作品のシンプルな対応解釈で十分大きな改善点もなさそうです。
2つ目の作品は、2次元敷詰にもとづく3倍重畳型も兼ねていますね。ほかに作例が思い当たらない珍しい重ね方ですが、6ヶ所が対応していながらかなり読みやすくできていると思います。


2022-12 「癸卯」

「癸卯」①「癸卯」②「癸卯」③

お題が過去随一の自然アンビグラムで、1つ目の作品から「癶」の上部や「卯」のハライを少し調整すればほとんど文句なく仕上がりました。線幅ツールでシンプルに制作しています。
ちょうど重畳型をいろいろ開拓して身についてきた頃で、築いたセオリーどおりに3倍重畳型で考えたのが2つ目の作品です。

2種類のパーツA,Bからなる1単位が3回繰り返され、それに対して[ABA][BAB]と文字の切れ目がきれいに等分されているのが特徴です。この考え方には重畳型を考えるときの基本として利点が多そうで、各文字のサイズがぴったり揃って判読しやすくなったり、なにより、決まったパターンに沿って重畳ビリティを感知しやすくなったりします(三字熟語の2倍重畳型なら[AB][CA][BC]、四字熟語の3倍重畳型なら[ABC][DAB][CDA][BCD]というぐあい)。
開催期間終了後に思いついた3つ目の作品は、「2023」の寄せ字のようにもなっています。「癸卯」の字形としても流麗で気に入っています。


2023-01 「前進」

「前進」①「前進」②「前進」③

あまり得意でない柔らかい対応づけが求められるお題で、かなり悩みました。「隹」を省略してみたり「丷」を図案と対応させてみたりと1つ目の作品から苦悩がうかがえます。
「⻌」が不自然な形になってしまったので、2つ目の作品では「⻌」の形を決めてから制作しました。印刷文字字形の「⻌」を採用したことでなかなかかっこよく対応して全体的に整った字影になっていてお気に入りです。
3つ目の作品は、「迅」と同様に対応する線を“0.5本分”ずらしています。ここでもやはり「丷」が余ってしまうので、装飾でごまかしています。


2023-02 「鬼/福」

「鬼/福」①「鬼/福」②「鬼/福」③

そのままでは対応しがたい部分が多いお題で、1つ目の作品から凝った字体になっています。以前の「武家諸法度」のように、シャーペンによる手書きとIllustratorでの調整との合わせ技で制作しています。線幅が一定のかちっとした字体に対して、線の太さや手書きで線がブレることによるゆらぎが、細かな対応にいきています。
「鬼」と「福」ではやはり「田」どうしを対応させたくなるところを、ずらして対応させたのが2つ目の作品です。「鬼」の「田」の4つの部屋のうち左上の部屋のみを「福」の「田」(の省略形)とすることで、「礻」の縦画などが余らずに対応しています。
回転型の「鬼」回転型の「福」振動共存型の「鬼/福」も先行作品があるというところから、回転共存型と振動共存型を兼ねられそうだと思って3つ目の作品を制作しました。特にこれらと親和性が高い意瞑字査印さんによる回転型の「鬼」を大いに参考にしつつ、フォントからパーツをもってきて調整することで、複雑な型ながらかなり読みやすく描きあげられたと思います。


2023-03 「遊」

「遊」

これ以外に特に思いつかず、シンプルな1作品。以前にも「浮遊感」で制作したことがありましたが、「勹」の部分を「И」状のシンプルな解釈にしたりと少しテイストを変えてみました。


2023-04 「夜/桜」

「夜/桜」①「夜/桜」②

簡単にはいかないお題で、1つ目の作品では普段あまりやらない線の強弱で長さや貫きを調整しました。これがハライと横画などの傾きの調整(→参考)にもちょうどはまっているのもいい感じです。

2つ目の作品では、対応させる角度をずらすことで新しい解釈を求めました。「夜」と「桜」では対応している角度が180°から45°ずれていますが、間をとってずれを補うことで180°回転型に落とし込んでいます。
斜めに筆画が対応するときの線端の処理がとちらにも合うようにするデザインは、douseさんの「新参」で得た知見を大いに活用しています。

線端が水平・垂直に切り揃えられていると整った印象になることがある。これを斜めに対応している筆画の双方で実現するために、このような形状の線端になっている(同様の理由で、丸い線端や細い線を選ぶことも多い)


2023-05 「字」

「字」「字/あ」

みんビグラム初の型自由お題で、思いつくままに大量に制作しました。
1つ目の作品はシンプルな180°回転型を選択しました。以前にも「千字文」で制作したことがありましたが、ぎゅっと詰まった筆画にすることで、「宀」の点と「子」がつながっている違和感を軽減させました。
2つ目の作品はいわゆる「オセロ」型の重畳型です。この「オセロ」に始まる2次元敷詰にもとづく重畳型作品の開拓や、そのころのアンビグラム理論の整理のおかげで制作できた作品です。9つ目の作品は、これをさらに発展させたいがときしんさんの「蹴」のような対応で、やはり重畳型の技術進歩の流れを汲んでいます。

13個目の作品はケルベロス型の作品です。試行錯誤をひたすら繰り返し、偶然現れた形も頼りにしつつ形づくりました。
17個目の作品は、市松模様状の集合で図と地を反転(当作の図地反転性には議論の余地があるようです)させて重ねています。縞模様と市松模様でいろいろなパターンを試し、うまくいきそうな形から調整することで制作しました。

果てしない試行錯誤の様子


2023-06 「ただいま/おかえり」

「ただいま/おかえり」①「ただいま/おかえり」②

1つ目の作品はシンプルに。「い」1画目がかっこよくはまっています。
2つ目の作品は、2×2の文字組みで縦書きの「ただいま」と横書きの「おかえり」を対応させることで、対応する文字の組み合わせがまるっと変わっています。この組み合わせでの対応を考えたところ、「夜/桜」と同様に対応角度をずらすことにしました。奇跡的なまでに4組ともこの角度のずらしかたにぴったりです。以前のお題「いもほり」で悩まされた「い」の頭の高さの問題も、この対応により解決されています。


2023-07 「眠り姫」

「眠り姫」

シンプルながら、悩ましい「民」上部と「女」下部の対応をおしゃれに決められたと思います。
例によって角度をずらそうとも思いましたが、Snow/淡雪さんつーさま!さんがすでに制作されていたのでこの1作品のみに。


2023-08 「アイスクリーム」

「アイスクリーム」①「アイスクリーム」②

1つ目の作品から案外一筋縄ではいかず、「ス」1画目を大胆めに解釈しています。
対応させる文字を1文字ずらしてみようと思い、「ア」を余らせるとちょうどぴったりはまりそうだったので、2つ目の作品はこうなりました。「ア」がアイスクリームの図案🍨と対応していてかわいらしいです。


前年のまとめでは他の方の作品にも多く触れていましたが、アンビグラム制作者も増えて言及したい傑作も増えており、語りきれないので省略しました。つまりは全部見てほしいです、ハッシュタグからぜひ!
みんビグラムがとても長く続いていて本当にめでたいです。ちょうどいいお題に裏打ちされた素敵な企画なので、ぜひみなさんも参加してみてください!


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