月街8丁目

戯曲「更年期と蒼黒のヴァンパイア」身体と時間の物語。全17記事で終幕。無料+有料+想像…

月街8丁目

戯曲「更年期と蒼黒のヴァンパイア」身体と時間の物語。全17記事で終幕。無料+有料+想像の翼=完成。舞台化したいという方、ご連絡をお待ちしております。 DM→https://twitter.com/swanrinn http://Instagram.com/swanrin11

最近の記事

森優貴作・演出 「The Lake」  新制作白鳥の湖 兵庫県立芸術文化センター中ホール

宝塚のワークショップ「Stella Voice」で森優貴氏が担当したコンテンポラリーの場面がとても印象的だったので、鑑賞してきた。 事前情報やプログラムでは、家族と死者を巡るかなりスピリチュアルなストーリーだと感じたので(エヴァンゲリオンぽいかなと・・)、その手は少し苦手なので二の足を踏んだのも事実だけれど、ベースは白鳥の湖だからそこまで取り残されることはないだろうと。 実際の舞台は、振付に引きつけられる力があり、装置・衣装・照明・場面構成・音楽と、舞台芸術としてとても見応

    • ステラボイス 宝塚歌劇とコンテンポラリー

       今までにも宝塚のショーでコンテンポラリー的な場面はあったとは思うのですが、どちらかというと、コンテンポラリー的要素を宝塚の様式美の中に馴染ませているもので、今回のようにコンテンポラリーを全面的に出した演出というのは珍しいのではないでしょうか。    コンテンポラリーといえば、去年観た、森山未來さんの没入型パフォーマンス「FORMULA」は、ストーリー性を廃し、人間の存在についての哲学的思索を背景にして、パフォーマーが観客に静謐な対峙を投げかけていました。それに比べると、今回

      • ディミトリ所感 歴史を甘い味付けで美しくする危うさ

        複数回観たものの、引っかかるところがかなりある芝居だなと思っていて、でも評判はいいみたいだし、その中でちゃんと批判するのって気力体力がいるし、贔屓の星組メンバーのパフォーマンスだけ見とけばいいかと思って、ツイッターにはざっくりした感想しか載せていなかったのですが、例の演出家のパワハラセクハラ問題が明るみになり、彼の作品群には疑問と怒りを抱えていたのに、どんどん、宝塚だけではなく外部でも、大演出家であるかのように持ち上げられていく彼を批判するのが面倒くさく(そんなことしたって私

        • note戯曲 更年期と蒼黒のヴァンパイア⑰

          第六場   暗闇の中で声だけが聞こえる。 律「一本もらうね」 守也「奥から取って。古いのから」 律「了解―」 久美「私も頂戴」 砂月「それは守ちゃんが作ったやつ」 久美「へえ!」   ライト点く。   律と久美が箱に座って、ペットボトルに   入った血を飲んでいる。   砂月と守也が試験管を持ってる。 律「新製品だね」 守也「どうですか」 久美「砂月のよりも渋みがある」 守也「ダメ?」 久美「私は好み」   千重、登場。   砂時計を手に持っ

        森優貴作・演出 「The Lake」  新制作白鳥の湖 兵庫県立芸術文化センター中ホール

          note戯曲 更年期と蒼黒のヴァンパイア⑯

          龍之介「それで?」 千重「思い出話は、ここまで」 龍之介「長かった」 千重「その後続く私のヴァンパイア人生の、ほんのさわりの部分」 龍之介「もういいだろ。俺は行く」 千重「言いたいことはまだあるんだけど」 龍之介「勘弁してくれよ」 千重「あんたに血を吸われて、私は生まれ変わることができた。とっても、とっても・・感謝してる」 龍之介「今更・・」 千重「私をヴァンパイアにしてくれて」    千重、言葉を飲み込む。 龍之介「なんだ?」 千重「あ・・・」 龍

          ¥100

          note戯曲 更年期と蒼黒のヴァンパイア⑯

          ¥100

          note戯曲 更年期と蒼黒のヴァンパイア⑮

            砂月、守也、登場。 千重「成功」 守也「ほんとに一人で行くのか」 千重「うん。守ちゃんは、砂月のそばにいてね」 砂月「無茶はしないで」 千重「心得ておく」 砂月「(ギプスの首を触りながら)首なら、治るのに」 千重「そういう問題じゃないから。・・・お墓参りに行ってくる」   千重、退場。 砂月「怒ってる?」 守也「そりゃそうだよ。パートナーが、こんな酷い目に遭わされたんだ」 砂月「パートナー、ね」 守也「俺だって怒ってる」 砂月「なら、守ちゃんもパ

          note戯曲 更年期と蒼黒のヴァンパイア⑮

          note戯曲 更年期と蒼黒のヴァンパイア⑭

          守也「薬、持ってこようか」 千重「もう無い。あの店に行かないと」 守也「一人で?」 千重「店主にヴァンパイアだとバレてるの。守ちゃんも疑われちゃう」 守也「それでも行くのか?」 千重「これが最後よ・・」   守也、退場。   千重、ヨロヨロと起き上がる。   歩美、二階のステージに登場。   千重、手すりに掴まりながらそこへ向か   う。 歩美「満身創痍ですね」 千重「間に合った?まだ閉店してないね」 歩美「処方箋をお渡しします」 千重「できれば現物

          note戯曲 更年期と蒼黒のヴァンパイア⑭

          note戯曲 更年期と蒼黒のヴァンパイア⑬

          第三場   試験管を持った守也、砂月から魔術の訓   練を受けている。 守也「(アラソイハエム)」 砂月「アラソハイエムだよ。アラソイハエム、とかになってない?」 守也「何故わかった」 砂月「ヴァンパイアだから。はい、次は正しくね」 守也「何度もやってると、分からなくなる」 砂月「今日は最初から集中できてない。どうしたの。寝不足は解消されたでしょ?龍之介がいなくなって、安心して影になって昼に営業できてるんだし」 守也「そうだけどね」 砂月「何か気になることで

          ¥100

          note戯曲 更年期と蒼黒のヴァンパイア⑬

          ¥100

          note戯曲 更年期と蒼黒のヴァンパイア⑫

          第二場   龍之介、辺りを見回す。   千重、その背中をじっと見つめる。 龍之介「歩きながら話すか」 千重「背中」 龍之介「ん?」 千重「背中、いつも見ていたなぁって。小さい頃、村の浜辺で貝を拾いに行ってる時も。先をいくあなたの背中を一生懸命追いかけた。振り返って、いつも言われた」 龍之介「遅いなぁ」 千重「そう!そんな風に」 龍之介「今も遅いよ。なんでそんなにゆっくり歩くんだよ」 千重「腰痛持ちなの」 龍之介「魔術なんかに頼るからだ」 千重「私はヴァ

          note戯曲 更年期と蒼黒のヴァンパイア⑫

          note戯曲 更年期と蒼黒のヴァンパイア⑪

          第二幕  第一場   砂月、試験管を持って登場。   台の上に置き、針から血を落としなが    ら、空いた手で、魔術をかける仕草。   その手を止め、椅子に座って目を閉じて   胸を抑える。   守也、登場。 守也「大丈夫?」 砂月「眩暈と動悸が。千重は、まだお客さんを施術してる?」 守也「さっき帰ったよ」 砂月「千重の方がもっと体にきてるんじゃないかしら。私のために営業時間まで変えさせて。香を逃がしてから、また何か起こるんじゃないかって、神経を尖らせてるみた

          note戯曲 更年期と蒼黒のヴァンパイア⑪

          note戯曲 更年期と蒼黒のヴァンパイア⑩

            三人、退場。   二階ステージに香、登場。 香「手の甲にキスをされた、4人」   変装を解いた龍之介が出てくる。   香、龍之介に向かって手を差し出す。 香「キスしてみる?消えちゃうかも」   龍之介、香の手首を振り払う。 龍之介「俺たちはちゃんとヴァンパイアをやっているから、大丈夫なんだ」 香「ちゃんとって」 龍之介「だから。若い人間の生きた血を吸い、昼は眠り、夜に活動する。ヴァンパイアがずっとやってきた生活を、続けていけばいい。変えることなく」 香

          ¥100

          note戯曲 更年期と蒼黒のヴァンパイア⑩

          ¥100

          note戯曲 更年期と蒼黒のヴァンパイア⑨

            カーテン前。   守也、登場。 守也「やれやれ。よく働いた」   にゃー、という鳴き声が外から聞こえて   くる。 守也「今夜は満月か。猫が元気なのはそのせいかな」   守也、カーテンをめくって 守也「おはようございまーす。起きてますかー」   カーテン開く。   棺桶が二つ並んでいる。 守也「失礼します」   守也、蓋を開ける。 守也「いない」   千重と砂月、袖から出てくる。 守也「既にお目覚めでしたか。おはようございます」 千重「今は夜よ

          note戯曲 更年期と蒼黒のヴァンパイア⑨

          note戯曲 更年期と蒼黒のヴァンパイア⑧

           第七場   守也、登場して千重を見つける。 守也「千重さん!もう帰りましょう!」   千重、下に降りていく。 守也「このホテルにもう香さんはいないですよ。いるだけ時間の無駄」 千重「さっきホテルのフロントに聞いたら、香は突然来なくなったらしいわ。辞めたことになってる」 守也「でしょでしょ。もうここに用はない」 千重「疲れたから、お茶でもしていかない?」 守也「いや帰りましょう。ヴァンパイアにお茶は似合わない」 千重「お茶くらい飲めるわよ」 守也「すぐに帰

          ¥100

          note戯曲 更年期と蒼黒のヴァンパイア⑧

          ¥100

          note戯曲 更年期と蒼黒のヴァンパイア⑦

          第六場   カーテン開く。   棺桶が一つ置いてある。   龍之介、登場し、棺桶を訝しげに見る。 龍之介「なんだこれは」   龍之介、棺桶に近寄る。   棺桶の蓋が開いて、制服姿の香が出てく   る。 香「あ、おかえり」 龍之介「・・なんだこれは?」 香「作ってもらった」 龍之介「誰に?」 香「千重さんたちに」 龍之介「お千のところへ行ったのか」 香「そうだよ」 龍之介「影の体になったのか」 香「うん。もうもどったけど」 龍之介「あっさり言うな

          note戯曲 更年期と蒼黒のヴァンパイア⑦

          note戯曲 更年期と蒼黒のヴァンパイア⑥

           第五場   カーテン前。   舞台袖から、大きな布袋の両端を持っ   て、床の上で引きずりながら、龍之介と    香が出てくる。 香「ストップ」   香、足を止めて、腰をのばす。 龍之介「疲れた?」 香「この人重い」 龍之介「見た目によらずな。筋肉が多い男だったのかもしれない」 香「死体を埋める作業って、苦手。いつまでたっても慣れない」 龍之介「今更、どうした」 香「あらためて、思っただけ」 龍之介「けど・・いい血だったよな?」 香「(口に手を当てて

          ¥100

          note戯曲 更年期と蒼黒のヴァンパイア⑥

          ¥100

          note戯曲 更年期と蒼黒のヴァンパイア⑤

          第四場   舞台奥の二階ステージに、香がフラつき   ながら登場。 龍之介「香!」   龍之介が後を追ってきて、香の腕を掴   む。 龍之介「今にも倒れそうじゃないか。まだ、日は沈んでない。そんな体で外へ行くなんて無理だ」 香「でも仕事の面接が・・。夜はやってないって言われたから、ぎりぎりの夕方ならって」 龍之介「やめとけ」 香「どうしても受かりたいの。一度結婚式場で働いてみたかったんだ」 龍之介「結婚式場?なんでだ」 香「明るくて、幸せそうな場所だから」

          note戯曲 更年期と蒼黒のヴァンパイア⑤