【ショート】トモダチ以上
彼は会社の同僚
お互い悩みを話したり
することはあったが
異性として意識したことはなく
彼とは友人のような感じで
それ以上の何物ではない
その日も仕事終わりに
独身の数名で飲みに行った
ひとりふたりと散っていき
最後に彼と私が残った
以前も同じことは何度かある
でも
今日は何か
気になる
酔いざましに少し歩こうと
夜の街に出た
12月の大通りは
街路樹にイルミネーション
ヒカリの並木道
さすがにテンション上がる
全てが輝いて見える
『キレイね』『そうだね』
ふたりで見上げながら歩く
周りはほとんどカップル
不意に『なぁ』と彼の声
彼の方を向いた瞬間
彼と目が合った
私の中で
何かが
変化した
彼の瞳の奥もキラキラ輝いてた
彼は私の手をスッと取り
『手をつなごう』と彼が言う
私は彼に言われるがままに
そしていつの間にか
私は彼の腕に身体を預けていた
どれくらい歩いただろう
100m先に電飾の切れめが
見え始めた時
彼が私の腕を引っ張り
ビルの壁沿いにいざなった
私は抵抗することなく
彼の胸に引き寄せられた
嫌な感覚もなく
むしろ自然に飛び込んだ
私たちは身体を寄せて
お互い見詰め合った
彼の深い琥珀色した瞳
瞳には街の光が映り込む
光の中に私が映っていた
瞳に吸い込まれそうな感覚
まるで夢の中にいるみたい
次の瞬間
彼の唇が私の唇をふさいだ
それはごく自然で
ふたりがいつもしているかのように
そして
私のココロは
彼に満たされていった
どれくらいの時間
そうしていたのだろう
私の記憶は曖昧で
彼の琥珀色の瞳がゆれ
穏やかな彼の声が
優しく耳に残っている
確かなことは
彼の唇は
思ったより
柔らかく
彼とのキスは
ミントキャンディの
味がした
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