ベーシストとギタリストにおすすめのダイレクトボックス(DI)
ベースやギターなどの楽器の出力をライブハウスのミキサーに直接繋ぐ場合には「ダイレクトボックス」(DI)という機材が必要になります。
ベースの場合にはライブハウスでダイレクトボックスが用意されていることが多いのでベーシストの人にとっては馴染みのある機材だと思います。
ギタリストにとってもオーディオインターフェイスなどを使ってギターの音を録音する場合には、オーディオインターフェイスにケーブルを直接繋ぐよりもダイレクトボックスを介してオーディオインターフェイスに繋いだほうが自分好みの音が録音できることが多いです。
◆「ダイレクトボックス」(DI)を使う目的
そもそも「ダイレクトボックス」を何で使うかというと、大きく分けて以下の3つの目的があります。
主な目的としては
① インピーダンスを変換する
② バランス信号に変換する
副次的な目的としては
③ 音を自分の好みに変える
があります。
① インピーダンスを変換する
ギターやベースの端子から出力される信号は基本的にインピーダンスが高く、ノイズが生じやすかったり、ハイ落ち(高域がぼやける)がしやすいという傾向があります。
そのため「ダイレクトボックス」を通してインピーダンスを下げることで音質の劣を防ぐことができるようになります。
② バランス信号に変換する
ギターやベースの端子に繋ぐシールドケーブルの端子を見ると接点が2つあるのが分かると思います。
2つの電線だけ使って信号を伝送するこの方法は「アンバランス伝送」と言いますが、グランドループ(ケーブルによって形成される輪の中を磁束が貫くことでノイズが発生する現象)によってノイズの原因となる電流が流れた場合、ノイズまでも増幅されてしまうという欠点があります。
しかし「ダイレクトボックス」の出力の端子を見ると、3つの接点から出力できる「バランス伝送」用になっているものが多く、外来的なノイズに対して非常に強くなります。
ライブハウスのようにステージからPAミキサーまで長いケーブルで音を伝送する時には「バランス伝送」で送ったほうが音質的に圧倒的に有利です。
またレコーディングにおいて出来るだけノイズが少ない音を録音したいという場合にもダイレクトボックスを使ってバランス信号に変換したほうが良い音で録音できることが多いです。
③ 音を自分の好みに変える
ダイレクトボックスは本来はギター・ベースから出力される音を変化させずに伝送することが望ましいのですが、実際には入力端子のインピーダンスの大きさや、インピーダンスを変換するためのトランスなどの影響で音が変わります。
そのためライブハウスやレコーディングスタジオに用意されているダイレクトボックスだと「自分の好みの音と違うサウンドになってしまう」という場合があります。
このような場合には自分の好きな音質のダイレクトボックスを持ち込むことで自分好みの音を出すことができます。
また最近のダイレクトボックスには意図的に倍音を付加したり、入力インピーダンスを変化させて音を「良い感じ」に変化することを狙った製品も出てきています。
◆ダイレクトボックスの選び方
ダイレクトボックスの選ぶポイントとしては
① パッシブかアクティブか
② 音を変化させたいか、エフェクトが必要か
③ プリアンプ機能も必要か、大きさ(頻繁に持ち運ぶか)
などがあります。
① パッシブかアクティブか
「パッシブ」タイプのダイレクトボックスは電源や電池が不要なのがメリットですが、インピーダンスの変換の程度が比較的小さいため、ライブハウスなどのようにノイズのある環境で長いケーブルで信号を伝送するのには向いていません。
「アクティブ」は電源や電池が必要というデメリットがありますが、インピーダンスを十分に下げることができるのでライブハウスなどの過酷な環境でも音質の劣化が少ないというメリットがあります。
ギタリストが自宅でレコーディング用途で使うような場合にはパッシブタイプでも十分というケースも多いと思いますが、ベーシストがライブハウスで使うような場合にはアクティブタイプのダイレクトボックスを選んだほうが無難ですし、ライブハウスのPAさんもパッシブタイプのダイレクトボックスは嫌がる人が多いです。
アクティブタイプのダイレクトボックスに電源を供給する方法としては、電池を入れるタイプの他に、ファンタム電源(ミキサーやオーディオインターフェイスに「48V」と書かれているボタン)で供給するタイプがあります。
② 音を変化させたいか、エフェクトが必要か
音質の劣化を防ぐという目的だけであれば普通のダイレクトボックスでも十分ですがが、ダイレクトボックスの中には敢えてトランスなどで音を変化させることを売りにしていたり、エフェクター機能が付いているものもあります。
音の変化を楽しみたいという場合にはエフェクターとダイレクトボックスを1個ずつ買うよりも、ダイレクトボックスとしても使えるエフェクターを買ったほうがコストパフォーマンスは良いです。
③ プリアンプ機能の有無、大きさ(頻繁に持ち運ぶか)
レコーディングの時に信号を増幅させるための「プリアンプ」という機材を使うことがありますが、このプリアンプにもダイレクトボックスとしての機能が備わっていることが多いです。
そのためプリアンプを買う予定がある場合には敢えてダイレクトボックスを用意しなくても良い場合があります。
ただダイレクトボック単体に比べるとプリアンプは大きいものが多いのでライブハウスや練習用のスタジオに持ち運ぶのは不便です。
そのためダイレクトボックス機能の付いたプリアンプは基本的にはレコーディング用途で使うことが多いです。
◆おすすめのダイレクトボックス(DI)
◇パッシブタイプのダイレクトボックス
●RADIAL (ラジアル) / JDI
ダイレクトボックスと言えば最近は「RADIAL」と言っても過言ではないくらい多くのライブハウスやレコーディングスタジオにはRADIALのダイレクトボックスが置いてあります。
定番のダイレクトボックスが良いという人にはRADIAL の「JDI」が無難な選択肢だと思います。
多くの場所で使われているということもあり耐久性や信頼性も高く音の変化も少ない素直な印象です。
●WARM AUDIO ( ウォームオーディオ ) / DIRECT BOX PASSIVE
「RADIALは他の人が使っているから嫌だ」という人や「ちょっと変わった特色のある音が良い」というような独立志向の高い人にはWARM AUDIOのダイレクトボックスもおすすめです。
●SAMSON ( サムソン ) / MD1
「予算があまりないので安いダイレクトボックスを探している」という人にはSAMSON の「MD1」も選択肢に入れて良いと思います。
SAMSONの機材は見たことがないという人も多いと思いますが、コスパが良くて品質も悪くない機材です。
◇アクティブタイプのダイレクトボックス
●RUPERT NEVE DESIGNS ( ルパート・ニーブ・デザイン ) / RNDI
アクティブタイプで特にベーシストにおすすめなのがRUPERT NEVE DESIGNSの「RNDI」です。
NEVEと言えば1073などの機材が有名で高額なものが多いのですが、そのNEVEのトランスフォーマーが入った機材が僅か数万円で買えるというのはお買い得感があります。
NEVEの機材ということもあり倍音が強調されるのでベースのダイレクトボックスとして使うと良い感じになることが多いです。
ギターに使う場合にはアンプなどとの相性にもよりますが倍音が強調されることで音が痛くなったり細くなったと感じる場合もあるので万能型ではないです。
●RADIAL ( ラジアル ) / J48
RADIAL「J48」は定番のダイレクトボックスでライブハウスに置いてあることも多いです。
行きつけのライブハウスに置いてあるのであれば敢えて自分で買う必要がないとも言えますが、これを1つ持っていればどこでも同じような音が出せるという安心感はあります。
●COUNTRYMAN ( カントリーマン ) / TYPE85
RADIALと並んで定番なのがCOUNTRYMANのダイレクトボックスです。
RADIALの音が好きになれないという場合にはCOUNTRYMANを試してみるのが良いと思います。
●IK Multimedia / Z-TONE DI
ギタリストにおすすめなのがIK Multimediaの「Z-TONE DI」です。
使い勝手が良く個人的に気に入っているダイレクトボックスです。
「Z-TONE DI」の最大の特徴は、入力のインピーダンスを変えることで積極的に音作りができたり、倍音を付加するかどうかを選べたりするところで、レコーディングやDTMにおいて「ギターの音作りが上手くいかない」という場合に「Z-TONE DI」を使うことで解決することもあります。
最近のオーディオインターフェイスやミキサーの入力端子はインピーダンスが高いものが増えてきていて、音がシャープで硬くなってしまい耳障りな倍音が残ってしまうことも多いのですが「Z-TONE DI」で入力のインピーダンスを下げることでヴィンテージ風の柔らかい音色を作ることが出来るようになります。
しかもMac・PC 用の AmpliTube SE というアンプシミュレーター用のプラグインが付属するので、MacやPCを持っている人であれば数十種類のアンプモデルを使うことができるようになります。
デメリットを挙げるとすればサイズが若干大きめです(BOSSのコンパクトエフェクター2個分くらい)。
●BOSS ( ボス ) / DI-1
BOSSの「DI-1」もライブハウスに良く置いてあるダイレクトボックスです。
昔からある製品で信頼性が高く頑丈なのが長所で中古でも安く売られていることが多いです。
◇ダイレクトボックスとしても使えるエフェクター
「ダイレクトボックスとしても使えるエフェクター」は基本的にベース用のものがほとんどです。
●MXR ( エムエックスアール ) / M80 Bass D.I. +
ダイレクトボックス機能の付いたエフェクターとして定番なのがMXRの「M80 Bass D.I.」です。
ベーシストが3人いたら2人は持っているんじゃないかと思うくらい良く見かけます。
プリアンプとして音を簡単に太くできるだけでなく、EQで細かい音作りもできて、さらにディストーション(歪み)も付いていたりと幅広いジャンルに対応できるのが人気の要因だと思います。
●TECH21 ( テック21 ) / Sansamp サンズアンプ/Bass Driver DI V2
Sansampも昔から多くのベーシストが使っている超定番のエフェクターです。
これを使うと「いかにもサンズアンプ」というような特色のある音になるので好きな人のとっては代わりの効かない機材ですね。
◇ダイレクトボックスとして使えるプリアンプ
●FOCUSRITE ( フォーカスライト ) / ISA One
宅録用のプリアンプとして昔から人気なのがFOCUSRITEの「ISA One」です。
ギターだけでなくボーカル用のプリアンプとしても使えますしFOCUSRITEというメーカーの信頼感もあります。
ただこの「ISA One」は昔は5万円以下で購入できたのですが今では円安の影響もあって価格が高騰してるんですよね・・・。
中古で安く買えればお買い得かなと思いますが現時点で新品で買うのはコスパはあまり良くないかも知れません。
●RUPERT NEVE DESIGNS ( ルパート・ニーブ・デザイン ) / Portico 5017
「せっかくだから良い機材が欲しい」という場合には、NEVE の「Portico 5017」も選択肢に入れて良いと思います。
値段は高めですがこれでも「NEVE」の名前を冠したプリアンプの中では最安クラスで、NEVE のブランド力と信頼性の高さが窺えます。
ダイレクトボックス、プリアンプとしての機能だけでなく、コンプレッサーも付いていてサイズもコンパクトなのでレコーディングの時に持ち歩くのも楽ですし、1台3役と考えればお買い得感はあるかも知れません。
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