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「Waves」おすすめのプラグインと購入時の注意点

Waves(Waves Audio)と言えばDTMer全員が知っていると言って過言ではない有名プラグインメーカーです。

Wavesのマキシマイザー「L1」が1994年発売、「L2」が2000年発売、「L3」が2005年発売開始で、かなり歴史が古い老舗的な存在です。

「L1」~「L3」が発売された頃のWavesプラグインの価格は高額でバンドル製品は数十万円のコストがかかったため、プロのエンジニアさんや一部の裕福なDTMerが使う憧れのプラグイン的な印象もありましたが、現在のWavesは1年中セールをやっていて初心者でも手の出しやすい「ユニクロ」的なフレンドリーなメーカーになっています。

Wavesのプラグインは革新的・斬新な技術が盛り込まれた製品が多いだけでなく、操作もシンプルで、音の変化などが視覚的に分かりやすく、初心者でも扱いやすいものが多いです。

他方でWavesは歴史が長いこともあり最近の音楽の傾向からすると「古い」プラグインも多数販売されており、特に初心者の方にとっては種類の豊富さも相まって「どのプラグインを使えば良いのか分かりにくいというデメリットもあります。

20年以上前からWavesに多額のお布施をして数々のプラグインを試してきた経験を踏まえて、現時点で「おすすめできるプラグイン」と「購入に注意が必要なプラグイン」「あまりおすすめしないプラグイン」などを忖度せずに説明していきたいと思います。


◆Wavesのプラグインを買う時の注意点


◇設計が古いものがある

Wavesは歴史が長いこともあり、設計の古いプラグインが今でも数多く販売されています。

昔ながらの古いプラグインは動作が軽いというメリットがありますし、最新のプラグインでは出せない味のある雰囲気を出せるものもありますが、最近の他社のプラグインに比べると性能が微妙なものもあったりするため、「安い!」と思って飛びつくのではなく「今でも十分に戦える性能をもったプラグインか?」を調べてから購入したほうが後悔が少ないです。

「どれが古いプラグインか」は最近DTMを始めたばかりの方には分かりにくいと思いますが、「L2」や「C1 Compressor」のような銀色をバックにした立体感の少ない平面的なノブが付いたユーザーインターフェイスのものや、「Silver」というバンドルに含まれているプラグインは昔からあるプラグインであることが多いです。


◇DAWに同様のプラグインが入っていないか

Wavesは一時期圧倒的な人気を誇っていたモンスター的なメーカーであったこともあり、現在ではDAWの中にもWavesと似たような性能や使い勝手の良さを持ったプラグインがデフォルトで入っていることもあります。

DAWのプラグインと、Wavesのプラグインの違いを比較するのも楽しみの1つではありますが予算が限られている場合にはプラグインを買う前にDAWの中のプラグインを一通り試してみて「今手元にあるプラグインでやりたいことが出来ないか?」ということは考えたほうが良いと思います。

そう言う自分自身もプラグインが1000個近くあるため、間違って同じようなプラグインを買ってしまったり、全く同じプラグインのバージョン違いを買ってしまうという事故を起こしてしまうことも良くあります。

◇バンドル製品を買うべきか

昔はWavesのバンドルは非常に高額でDTMerの憧れでした。

しかし今ではWavesのバンドルはお財布に優しい価格になっており、セールの度についつい買ってしまいたくなります。

しかし最近ではWavesの以外のメーカーもお得なバンドル製品を出しているので、バンドル製品を買う時はご自身のやりたい事にあったメーカーのバンドルから優先的に購入したほうが後悔は少ないと思います。

以下、Wavesの主要なバンドル製品について独断と偏見で購入するメリットの有無について説明したいと思います。

Silver

Silverに含まれている製品は古いプラグインが多いので敢えて購入するメリットはあまりないと思います。


Gold

GOLDには古いプラグインも多いですが

ドラムの編集に便利な「Eddie Kramer Drum Channel」

一発でキー(調)が分かる「Key Detector」

といった比較的新しく便利なプラグインも入っており、人気の「V-Comp」「V-EQ3」ピアノ音源なども入っています。

私は20年くらう前に結構な金額で1度買いましたが、10年くらい前にライセンスを新しくするために「Gold」を買い直した時はセールやクーポンなどを駆使して6000円くらいでした。

ただ6000円で購入した時よりもプラグインの数が増えているので、1万円前後で入手できるタイミングであればコスパは悪くないと思います。


Platinum

Platinumの中で特に便利なのは

アコースティックな響きを整える「CLA Unplugged」

2つのパラメーターだけで音を整える「MV2」

便利なディエッサー「Sibilance」

サブベース・キックを簡単に追加できる「Submarine」

1つのノブで操作できる「OneKnob Driver」

過激なフィルター効果を再現できる「MetaFilter」

名器を再現した「PuigTec EQs」

あたりだと思います。

1万5000円前後で入手できる時であればコスパは良いと思います。

Diamond・Horizon

Diamondは「ノイズ除去系のプラグインなど15種類」、Horizonは「アナログ系のプラグインなど22種類」が追加されたバンドルですが、Platinumとの価格差の割には追加されるプラグインが特別多いという訳でもなく、他社のメーカーのバンドルと比較しても現在ではコスパ的には微妙な立ち位置かなと思います。

「欲しいと思っていたプラグイン」がドンピシャでDiamondやHorizonに揃っているのであれば別ですが、そうでない場合にはGoldやPlatinumを買った上で、セールなどの時に足りないプラグインを個別に買い足していくほうがお財布には優しいかなと思います。

また個人的にはでDiamondやHorizonを買う予算があるのであれば、IK Multimediaの「Total Studio Max」やUADの「Signature Edition」などをセールの時期に買ったほうがコスパが良いと思います。

「Total Studio Max」にはエフェクトだけでなく音源も大量に付いてくるので、「DAWに付属しているプラグインだけで物足りない」という場合に最初に買うバンドルとしてはコスパ的に非常に優れています。

ただ「Total Studio Max」に入っているエフェクトプラグインの「T-RackS」やUADのプラグインは「実機のアウトボードを再現する系」が多いので初心者の方にとっては取っつきづらいと感じることがあると思います。


◇セールに騙されるな・・・

DTMを始めたばかりの人はWavesの「90%オフ」のようなセールに飛びついてしまうことがありますが、Wavesのプラグインは古いものも多いため「セールをしている状態がデフォルト」です。

この点について作曲家の「こおろぎさん」が以前にXで名言を残されていましたが、まさにこんな感じのこともあります。

問題は「常にセールをしている」という状況の中で「いつが一番お買い得か」ということです。

Wavesのセールには、いくつかのパターンがあります。

① 個別のプラグインが安くなっている。

② プラグインを1個買うと、別のプラグインが1個もらえる。
②’ プラグインを2個買うと、別のプラグインが2個もらえる。

③ ○ドル以上買うと、プラグインが1個 or 2個もらえる。

④ バンドル製品が安くなっている。

⑤ プラグインが無料でもらえる。

以下順番に説明したいと思います。


① 個別のプラグインが安くなっている。

シンプルなのが個別のプラグインが安くなっているパターンです。

プラグインの定価や、その時の為替レートにもよりますが、1個4000円未満で購入できる時は比較的安いといえると思います。


② プラグインを1個 or 2個買うと、別のプラグインが1個 or 2個もらえる。


こちらも良くあるセールですが、「プラグインを○個買うと、別のプラグインがオマケで○個もらえる」というパターンです。

欲しいWavesのプラグインが複数ある場合には、単体で買うよりもこちらのセールほうがお得な場合があります。

注意が必要なのが「オマケでもらえるプラグイン」は古いものや、定価が安いものの中から選ぶ必要があるという場合が多いという点です。

そのため、最もコスパ良く買うためには工夫が必要だったりします。

例えば「プラグインを2個買うと、別のプラグインが2個もらえる」という場合で例を挙げてみます。

プラグインA → 3000円、オマケでもらえるリストに入っている

プラグインB → 4000円、オマケでもらえるリストに入っている

プラグインC → 5000円、オマケでもらえるリストに入っている

プラグインD → 5000円、オマケでもらえるリストに入って「いない」

上記の場合、「プラグインD」はオマケでもらえるリストに入って「いない」ので、これはお金を出して買う必要があります。

そして、残りのうちどれを買えば良いかというと、残りのA・B・Cはいずれもオマケでもらえるリストに入って「いる」ので、安いものから順番に買っていけば良いということになります。

そのため、価格が最も安い3000円のAと、オマケでもらえるリストに入って「いない」Dを購入し、残りのBとCをオマケでもらうのが一番安く買えるということになります。

このように「プラグインを○個買うと、別のプラグインがオマケで○個もらえる」というパターンの時には、欲しいプラグインを紙やエクセルで整理しないと何が最適解かが分からない場合があって少し面倒だったりします。

ちなみに「プラグインを○個買うと、別のプラグインがオマケで○個もらえる」というセールは、公式サイト以外から買った場合でも期間内にWavesのサイトで製品登録をすればオマケがもらえることが多いです。

ただ、ライセンスが郵送で送られてくるような場合には、ライセンスが書かれた紙が届くまでにセール期間が過ぎてしまう場合もあるので注意が必要です。

③ ○ドル以上買うと、プラグインが1個 or 2個もらえる。

これは前記②の「1個 or 2個買うと、別のプラグインが1個 or 2個もらえる」と同じようなパターンです。

「○ドル以上買う」という条件の部分は、②でプラグインを1個又は2個買う金額よりも高い場合が多いですが、オマケでもらえる少し新しいプラグインをもらえることもあるので、②と③のどちらがお得かは欲しいプラグインのの種類にもよると思います。


④ バンドル製品が安くなっている。

Wavesのプラグインはバンドル(プラグインの詰め合わせパック)が安くなっていることも多いです。

バンドルは公式サイト以外のほうが安くなっていることも多いので欲しいバンドル製品がある場合には検索をして最も安いショップを探したほうが良いです。

ちなみにセールの時期以外でもAmazonでWavesのバンドルが安くなっていることがあります。

例えば、「Chris Lord-Alge Signature Series」というバンドルは以前に8000円以下で販売されていたことがありました。

またWAVES Goldも過去に1万円以下で販売されていたこともあります。

時期や為替によって価格は大きく変動するので欲しい製品がある場合には安くなっていないか定期的にチェックしてみるのが良いと思います。


⑤ プラグインが無料でもらえる。

セールとは別の話になりますが、たまにWavesのプラグインは無料で配布されることがあります。

例年ブラックフライデーの時期にWavesが公式サイトで配布数限定で無料でプラグインを配布していることが多いです。

またWaves以外のサイトでもプロモーションの一環としてWavesのプラグインライセンスが無料で配布されることがあります。

X(Twitter)などでWavesの無料配布情報を発信しているアカウントを登録しておいて、無料配布の情報が来たらすぐにもらえるように準備しておくと良いかも知れません。


◇サブスクに一本化?

現在、Wavesのプラグインには「買い切り型」と「サブスク」の2種類がありますが、個人のDTMerはセールなどで「買い切り型」のプラグインを安く買って使っている人のほうが多いように思います。

しかし、2023年3月頃にWavesがプラグインをサブスクに一本化するという発表をしてDTM界隈が一時期大騒ぎになりました。

サブスクに一本化された後も既に購入している「買い切り型」のプラグインは使い続けられるということにはなっていたのですが、新しく「買い切り型」で購入することができなくなるという話で、既に購入したプラグインもいつまで使い続けられるのかが分からないということもあり「脱Waves」を進めるDTMerも少なからずいました。

その後、サブスクに一本化するという話は撤回されましたが、このような騒動があったことから今後もサブスク一本化という方針がいつ復活するか分からないという不安が広がり、現在でもWavesは出来るだけ使わないようにしているというDTMerもいたりします。

個人的にはWavesのプラグインは安いため将来的に使えなくなったとしてもダメージはあまり大きくないと思っていますし、今後またサブスク一本化の話が出てきたとしても、「買い切り型」のプラグインはしばらく使い続けられるのではないかと予想しています。

また「買い切り型」が使えなくなるくらいの未来の時点では別のメーカーの新しいプラグインを使っていると思うので、あまり気にしていません。

ただ、最近DTMを始めたばかりの方は上記のような騒動があったということを頭の片隅に入れておくと、同じような騒動が起きた時に慌てなくて済むのかなと思います。


以下、上記のような注意点も踏まえても買っておいて損はないと思われるWavesのおすすめのプラグインをいくつか紹介したいと思います。

◆Wavesのおすすめのプラグイン


◇Submarine

Submarineはサブベース、サブキックを簡単に作れるプラグインです。

「サブベース、サブキックって何?」という人もいると思いますが、ベースやキックの「超低音域」を追加するという10年くらい前から流行り始めたテクニックです。

ラジカセやラジオで音楽を聴く人が多かった時代は「超低音域」はカットすることも多く、昔のCD音源を聴くと超低音域はスカスカなものも多かったです。

しかし、最近は超低域まで再現できるカナル型イヤホンで音楽を聴く人が増えていますし、自宅や車にウーハーを設置する人もいるため、最近の楽曲制作では「超低音域」をどのように有効利用して処理するかが大事な問題になっています。

「超低音域」を有効利用する方法としては、ベースやキック(バスドラム)に超低域の音を追加する方法が使われることが多いです。

この場合シンセサイザーなどでサイン波を作って一緒に鳴らすという方法もありますし、ピッチシフターを使うといういう方法もありますが、これらの方法は設定が面倒だったりします。

そんな時に「Submarine」を使うと、2つのツマミを操作するだけで1オクターブ下の音と2オクターブの音を簡単に追加することができます

また「MIX」というツマミで原音とサブペース・サブキックの割合を変更できたり、「RANGE」というツマミでサブペース・サブキックの余分な音をカットすることもできるので処理が速くなり便利です。

「サブベース、サブキックが大事なのは分かっているが、作り方が分からない」という人には「Submarine」は便利なプラグインだと思います。

なお、最近は「Submarine」が「Platinum」以上のバンドルに収録されているのでバンドルを購入する予定がある場合には重複して買わないように注意が必要です。


◇Magma Tube Channel Strip / PuigChild Compressor

紹介されることが少ないプラグインですが個人的に初心者の方に便利だと思うのが「Magma Tube Channel Strip」です。

デジタルの音源で曲を作っていると「音が冷たい」「硬い」「他の楽器と混ざってくれない」みたいな悩みを抱えることが良くあります。

そんな時に「Magma Tube Channel Strip」を挿すと、音が良い感じに「暖かく」「柔らかく」なって他の音源とも混ざりやすくなります

操作も簡単でDRIVEで歪み具合を調整して、EQで高音域・中音域・低音域を調整して、Composerでコンプレッサーのかかり具合を調整するくらいなので、操作するノブが少ない分、初心者の人であっても悩むことなく使えると思います。


もう1つ音を「暖かく」「柔らかく」したい時に使えるのが「PuigChild Compressor」です。

PuigChild Compressorは「Fairchild 670」という高額で巨大な伝説的コンプレッサーをプラグインにしたものです。

「Fairchild 670」系のプラグインは各社メーカーから販売されていて、私はIK Multimediaの T-RackS 5に入っている「Vintage Compressor Model 670」を使うことも多いですが、Wavesの「PuigChild Compressor」も音の傾向は同じで扱いやすいので、どちらを使っても良いと思います。


◇CLA Vocals / Silk Vocal

「歌ってみた」や「ボカロ系」の音源を作る時に「ボーカルの処理の仕方が全く分からない」という人もいると思います。

そんな時に便利なのが「CLA Vocals」「Silk Vocal」というお手軽系プラグインです。

「CLA Vocals」は結構前からあるプラグインですが、「歌ってみた」や「ボカロ」のミックス用として使っている人も多く、今でも人気のあるプラグインです。

操作も簡単で、

・「BASS」と「TREBLE」で高音域・低音域の調整をして良い感じにする

・「COMPRESS」で音のバラツキを抑えてオケに馴染みやすくする

・「REVERB」と「DELAY」で反響音・透明感を加える

・特殊効果を出したい時は「PITCH」で何やかんやしてみる(使わなくても良い)

という感じです。

それぞれのフェーダウの上に設定を変えるボタンがあるので「何かしっくりこない」という場合には設定をポチポチと変えてみること上手くいったりします。

「CLA Vocals」はどちらかというと初心者に優しいお手軽系プラグインという感じなので、ボーカルのミックス作業に慣れてくると使わなくなる人もいると思いますが、「CLA Vocals」の機能入っている特殊効果を出すための「PITCH」という機能はミックス中級者になっても単体で使える便利な機能だと思います。

「この部分だけボーカルに特殊効果を加えてインパクトを出したい」という場面がありますが、そんな時に「CLA Vocals」の「PITCH」をオンにしてボタン設定を変えながらフェーダーを動かしていったり、フェーダーにオートメーションを割り当てて動きのある特殊効果を加えたりするとインパクトのあるボーカルを作ることができたりします。


もう1つ、ボーカル処理に便利なWavesのプラグインが「Silk Vocal」です。

「Silk Vocal」は比較的最近出てきたプラグインということもあり、性能はかなり良いです。

公式サイトには以下のような説明があります。

最大2000のバンドでボーカル素材をリアルタイムで分析し、必要なタイミングで必要な処理を実行します。ミキシングにおける「当てずっぽう」な作業がなくなり、モニタリング環境を問わず信頼できる結果を得られます。
Silkは、最速でミックスのゴールを目指すことが可能です。スピーディでスムーズに技術的な問題を取り除くことで、クリエイティブなミックスを決定する際の疲労も軽減できます。

https://wavesjapan.jp/plugins/silk-vocal

内部でどのような処理がなされているのかが良く分からないのですが、ユーザーがシンプルな操作をするだけで、内部で勝手に複雑な処理をしてくれているようで「良い感じ」にボーカルを仕上げてくれます

声質にあったプリセットを選んでから微調整をしていくという方法が使いやすいです。

「Silk Vocal」という名前だけあって、Neve系のアウトボードを通した時のように少しザラついたようなシルキーなボーカルにすることもできるので「ボーカルのEQの処理が苦手」という人にとっては便利なツールです。


ちなみに、ボーカル処理系のプラグインとしてはiZotopeの「Nectar」という強力なライバルがあって、人によっては「Nectar」のほうが簡単で好きという人もいると思います。

ただ個人的には「Nectar」で作る音は優等生過ぎるという印象があってあまり使っていないので、「CLA Vocals」「Silk Vocal」と「Nectar」のどちらが良いかは人よって変わってくるかなと思います。


◇Key Detector

「Key Detector」はオーディオファイル(曲やサンプル)のキー(調)を検出するだけの地味でシンプルなプラグインですが、あると便利です。

私はギターなどで耳コピをする時にDAWに原曲を入れて分析することも多いのですが、「Key Detector」を挿すと数秒で曲のキー(調)を表示してくれます。

マスタートラックに「Key Detector」を挿しておけば、またキーが不明なサンプルを使う時にも、ソロで鳴らすことでサンプルのキーがすぐに把握できます。

キーは鍵盤やギターを弾けば手作業でも確認はできますが、勘が外れるとキーを特定するまでに時間がかかって面倒だったりするんですよね。

そんな面倒な作業を数秒でやってくるので、今までありそうでなかった便利なツールです。

「Key Detector」で検出したキーはWaves Tune Real-Time, Waves Tune, OVox, Waves Harmonyなど他のプラグインと連携して送ることもできます。

(できれば、Waves Tuneとかにデフォルトでキー検出機能を入れてくれればもっと楽なのですが・・・)

「Key Detector」は「Gold」以上のバンドルに入っているので間違って重複して買うことがないよう注意が必要です。


◇CLA Epic

「CLA Epicha」は、ディレイとリバーブを簡単にかけることができるプラグインです。

昔ながらの方法だと、ディレイやリバーブのプラグインをセンド用のトラックに入れて、楽器などの音が入ったトラックからディレイやリバーブの入ったトラックに送って(センド)、ディレイやリバーブをかけた音を戻す(リターン)・・・という方法で処理をしますが、DTMを始めたばかりだと「センドとかリターンとかよく分からない」という人も多いと思います。

そんな時には楽器が入ったトラックに「CLA Epicha」を挿して、良い感じのプリセットを選んで微調整をすれば簡単にディレイやリバーブをかけることができます

「CLA Epicha」のデメリットは各設定項目が専門的な英語で書かれていて、何を設定する項目なのか初めてだと分かりにくい点です。

以下、「CLA Epicha」に入っているディレイ・リバーブの種類と各設定項目の意味を整理しておきます。

▽ディレイ

・TAPE
→アナログテープを使ったディレイマシンのような厚みのあるディレイ。

・THROW
→テープディレイに似ているディレイ。説明書には「特定の音符、単語、またはサウンドにディレイを適用する場合は、このコントロールを使用します」とあるがよく分からない。

・SLAP
→ショートリバーブに似たディレイ。

・TAP
→ディレイタイムを手動で設定する。

・SYNC
→ディレイタイムをDAW上のBPMに合わせて設定する。

・Crowd
→時間の経過とともに徐々に長くなるディレイ。Tight⇔Wideのノブしかないシンプルな操作で、Wideに寄せるとディレイタイムが長くなる。

・MOD
→モジュレーション。数値を大きくするとディレイ音が目立つようになるがかけ過ぎると不自然になるので注意が必要。

・FEEDBACK 
→ディレイ音の出力量。上げるとディレイ音が大きくなる。

・VSO
→テープディレイのテープを回す速度。この数値を変えることでディレイ音のタイミングが変わり、周波数特性も変わる。



▽リバーブ

・PLATE
→大昔に使われていた鉄板を使ったリバーブ。金属的な響きがある。

・ROOM
→狭い部屋の残響を再現したリバーブ。

・HALL
→ホールのような広い空間で得られる残響感を再現したリバーブ。

・SPACE
→リバーブテールをトリミングできる  Depth  コントロールが追加されたリバーブ。

・PRE DELAY
→原音が鳴った後に、どれぐらい早くリバーブ音を鳴らし始めるかを決める。長くすると原音が聞き取りやすくなるが、長すぎると不自然になるので注意が必要。

・REVERB TIME
→リバーブ(残響音)の長さ。

・RT  Low
→リバーブ音の低音域の減衰時間をコントロールする。数値を大きくすると暖かくより広々した空間のイメージになり、小さくすると明瞭な響きになる。

・RT  Low
→リバーブ音の高音域の減衰時間をコントロールする。数値を大きくするとリバーブテールの音が明るくなる。


◇Waves Harmony

ボーカルを録音した後に、録音した声のピッチを変えてコーラス(ハモリ)を作ることはないですか?

私はしょっちゅうあります。

録音した声のピッチを変えてコーラスを作る方法としてはMelodyneでピッチを1音ずつ直していくという方法があるのですが、この方法は結構面倒です。

そんな時に「Waves Harmony」があると比較的簡単にハモリパートを作ることができます

方法はMIDIでハモリパートを入力しておいてMIDIデータを「Waves Harmony」に流すのですが、メインパートのMIDIデータをコピーして3度ズラしたMIDIデータを作ればすぐにハモリパートが出来上がりますし、後から「ハモリの音程を変えたいな」という時にもMIDIデータを修正すれば反映されるので楽です。

Studio Oneの場合には「似顔絵島の村長」さんの解説が分かりやすいと思いますが、「スケールアシスタント」という機能を使うと簡単にハモリパートが作れます。


「Waves Harmony」のデメリットはハモリパートを作るまでの設定が少し分かりにくい点です。

私はニワトリと同じくらいの記憶力しかないため「Waves Harmony」を使うたびにGoogleで「Waves Harmony ハモリ 作り方」などと検索して「あぁ・・・こうやって設定するんだった」と思い出すという儀式を繰り返しています。

でも、Waves公式の↓の説明なども分かりやすいので初心者の人でも解説を見ながら1つずつやっていけば比較的簡単にハモリを作れるようになると思います。


◇OVox Vocal ReSynthesis

「OVox Vocal ReSynthesis」は声を変化させるボコーダー的なプラグインです。

ボコーダーのように激しく音を変化させることもできますし、ボーカルに少しだけ色付けを加えて華やかにするというような使い方もできるため、使い所の範囲は広いです。

またボーカル以外の楽器に使うとインパクトのある効果音を作れたりもするので曲中にアクセントを加えたい時や、Youtubeなどの動画で個性のある効果音を入れたい時にも便利だったりします。

「OVox Vocal ReSynthesis」は出来ることが多すぎて正直全ての機能を使い切れていないですが、プリセットも膨大なのでプリセットを試してみるだけでも色々と遊べると思います。

◇MV2

複数の楽器や音声が混ざった音源を処理している時に「小さい音を大きくしたい」という場合に便利なのが「MV2」です。

・複数人の会話を録音した音源でそれぞれの人の声のバランスを整えたい

・Youtubeにアップするトーク動画でBGMと会話のバランスをとりたい

・ライブを録音した音源で、各パートのバランスを整えたい

・ドラムループの中で小さい音を大きくしたい

といった場合に「MV2」を使うと上手くいくことがあります。

操作も基本的に「LOW LEVEL」と「HIGH LEVEL」という2つのツマミを良い感じに調整するだけなので簡単です。

デメリットを挙げるとすれば「MV2」も万能ではないので、音源によっては上手く処理がいかないことがあります。

「MV2」を使わなくても

・複数人の会話を録音した音源でそれぞれの人の声のバランスを整えたい
 →最初1人ごとにマイクを立てて複数トラックで録音したほうが良い

・Youtubeにアップするトーク動画でBGMと会話のバランスをとりたい
 →BGMと会話を別トラックにしたほうが良い

・ライブを録音した音源で、各パートのバランスを整えたい
 →マイクを複数立てたほうが良い

・ドラムループの中で小さい音を大きくしたい
 →別のループを探せ

といった根本的な解決方法もあるので、「MV2」はお手軽系プラグインとして使うか、マイクを複数立てられなかった場合の最終手段として使うケースも多く、人によっては「MV2」を持っているけど結局使わない、ということもあるかも知れません。


◇CLA-76 Compressor/Limiter

レコーディングスタジオにはUniversal Audioの「1176」というコンプレッサーが置いてあることが多いです。

多くの楽曲で「1176」が使われていて、これを通すと聞き慣れた音になりやすく、「ミックス作業ではいつも1176を使っている」というDTMerは多いです。

「1176」のプラグインは本家のUniversal Audio(UAD)やIK MultimediaのT-RackSなど、様々なメーカーから販売されていますが、頻繁に使うプラグインということもあり各メーカーの「1176」を持っていると、曲や環境に合わせて使い分けることができます。

私は最初に本家UADの1176のプラグインを挿すことが多いですが「ちょっと別の雰囲気にしたい」と感じた場合には、Wavesの「CLA-76 Compressor/Limiter」やT-RackSの76系プラグインを使うこともあります。


◇CLA-2A /  CLA-3A

ボーカルのミックスをする際に、アタックが早めのコンプレッサーとは別に、アタックが遅めの「オプトコンプ」のプラグインを挿すとオケに馴染みやすくなり作業が楽になることが多いです。

実機のオプトコンプとしては「LA-2A」という機材が使われることが多いので、同じような挙動を再現した「CLA-2A」や「CLA-3A」が手元にあると便利だと思います。

「CLA-2A」はどちらかというと暖かい雰囲気があり、「CLA-3A」のほうがスッキリした印象です。

他のメーカーのオプトコンプ系プラグインがある場合には無理をして購入する必要はないかなと思います。


◇NS1 Noise Suppressor

「NS1 Noise Suppressor」はマイクで声などを録音した時に入ってしまった「サーッ」というノイズを小さくしてくれるお手軽プラグインです。

ノイズ除去系のプラグインとしては 他社のiZotopeから「RX」という定番のプラグインは販売されていて私も「RX」の最上位版を持っているのですが、録音した会話をすぐにアップしたいなとか、打ち合わせ・会議録のノイズを除去してから送りたいなという時には、ツマミ1つで操作できる「NS1 Noise Suppressor」のほうが楽だったりします。

ただ、iZotopeの「RX」は時々「Elements」という機能制限版が無料で配布されることがあるので「RX」が手元にあれば「NS1 Noise Suppressor」はいらないという人もいると思います。

Wavesでは「プラグインを1個買うと1個オマケでもらえる」セールをやっているので、「欲しいプラグインが1個しか思いつかない」という場合に「NS1 Noise Suppressor」を選択肢の1つとして考えてみるという感じでも良いかなと思います。


◇MetaFilter

フィルターを使って効果音的な激しいサウンドが作りたい」という人に便利なのが「MetaFilter」です。

Cubaseにはデフォルトで激し目のサウンドを作れるフィルター系プラグインが入っているのですが、Studio OneなどのDAWにはフィルターは尖ったフィルターが入っていないので不便だと感じてました。

そのためStudio Oneをメインで使うようになって購入したのが「MetaFilter」ですが、比較的簡単な操作でインパクトのある効果音的なサウンドが作れますし、プリセットも面白いです。

効果音を複数作る時や、曲の途中でインパクトのある演出をしたいという場合にも便利だと思います。


◇Grand Rhapsody Piano

「ピアノ音源が欲しいけど、どれも高いな」という場合におすすめなのが「Grand Rhapsody Piano」です。

「ファツィオリ」という超有名な高級メーカーのピアノを再現した音源です。

ファツィオリのピアノは「暖かい音色」「ふくよか」「透明感がある」などと評されることもありますが、Wavesの「Grand Rhapsody Piano」は明るく音抜けが良いので他の楽器の音と混ぜて使っても埋もれにくく、楽曲制作では扱いやすいです。

8種類の異なるマイクで録音した音が収録されており、画面上でマイクの設定を変えると雰囲気ががらっと変わりますが、プリセットの中から好みの音色を選んだ上で微調整していく方法が楽だと思います。

プリセットの中にはペダルの「ゴトッ」というノイズが目立つものも多いので、「Pedal」の目盛りを下げるとノイズが無くなります。

価格に比べて品質が高いプラグインで、経営的に余裕があるWaveだからこそ実現できるコスパの良い製品だなと感じます。

ただ、「Grand Rhapsody Piano」はどちらかというと中級者向けの製品という印象なので、初心者の方で予算に余裕がある人はお手軽機能が豊富な「TOONTRACK EZ KEYS 2」なども使いやすいかなと思います。


◇CLA Nx

「自分のミックスが他の環境で聴いた時に破綻していないか不安だ」「集合住宅でスピーカーで大きい音が出せなくてヘッドホンで作業することが多い」という人に便利なのが「CLA Nx」です。

「CLA Nx」は有名エンジニアのレコーディングスタジオのコントロールルームをモデリングしてヘッドホン環境で再現するというプラグインです。

ヘッドホンで音楽を聴くと音は「頭の中」と「左右の耳を繋ぐ直線上」で鳴っています。

これに対し、スピーカーで音楽を聴く時には音が「前」から聞こえます。

これはスピーカーの場合には右耳と左耳に音が届く微妙な時間差を脳が処理して「前から音が飛んできている」と理解できるのに対し、ヘッドホンの場合には左右の耳に届く音に時間差がないためです。

「ミックス作業をする時はヘッドホンではなくスピーカーを使え」と言う人が多いですが、これは上記のような聞こえ方の違いによりヘッドホンで完璧なミックスをしたと思っていても、スピーカーで聴くとミックスが失敗しているというケースが良くあるからです。

しかし、「CLA Nx」を使うとヘッドホンで作業をしていても音が「前」から聞こえます。

おそらく右耳と左耳に届く音のタイミングを微妙にズラすことでスピーカーで聴いた時の音を再現しているのではないかと思いますが、これによってヘッドホンで作業をしていても「スピーカーで聴いた時に、どう聞こえるか?」を確認することができるようになります。

また「CLA Nx」では「ラージモニター」「ニアフィールドモニター」「ラジカセ」で聴いた時の音を再現できるようになっています。

ミックスが完成したとしても他の環境で聴いた時にバランスが破綻しているという事故はありがちなので、様々な環境で音を確認するのが失敗を防ぐコツだったりしますが、ミックスした音をわざわざ「大きいスピーカーで鳴らして、小さいスピーカーで鳴らして、ラジカセで鳴らして・・・」という作業をするのは面倒です。

そんなときに「CLA Nx」があるとボタンをポチポチ押すだけで様々な環境での音を再現できるので楽です。

注意点としては、「CLA Nx」はあくまで「スピーカーで聴いたらどう聞こえるかを確認するためのプラグイン」なのでミックスダウンする時は「CLA Nx」をオフにしておく必要があるということです。

また「CLA Nx」を通すと明らかに音質は劣化します。

これは音のタイミングをズラしたり、EQで補正をしているから仕方ないことだと思いますが、常に「CLA Nx」を通しながら作業するのは厳しいと思うので、「CLA Nx」はあくまでも確認用のプラグインとして割り切ったほうが良いと思います。

ちなみに他のスタジオを再現するプラグインとして「Nx Germano Studios New York」「Nx Ocean Way Nashville」などがあるほか、スタジオ再現系のプラグインを複数詰め合わせた「Nx Virtual Studio Collection」というバンドルもあります。

「自分の作った音源が有名なスタジオではどのように聴こえるのか試してみたい」という場合には色々と試してみると面白いと思います。



◆おすすめしない or 買う前に注意が必要なWavesのプラグイン

「おすすめのWavesのプラグイン」としてネット上で良く見かけるものの、個人的に「これをおすすめするのはどうなのかな?」「これを買ったら後悔する人もいそうだな」と感じることがあるプラグインをいくつかピックアップしていきたいと思います。


◇Vocal Rider / Bass Rider

「Vocal Rider」と「Bass Rider」は、フェーダーを上下に細かく操作するような形で録音したボーカルやベースの音量を整えることができる便利なプラグインです。

コンプレッサーと違って音質の変化が少ないため、コンプレッサーをかける前に「Vocal Rider」や「Bass Rider」を通しておくと、より原音の良さ活かしたサウンドを作ることができます。

そのため多くのサイトで「Vocal Rider」や「Bass Rider」が「おすすめのプラグイン」として紹介されています。

しかし、「Vocal Rider」「Bass Rider」と似たようなプラグインとしてMeldaProductionから「MAutoVolume」というプラグインが販売されています。

「MAutoVolume」のほうが細かい調整が可能で、ディエッサー的な使い方もできて、しかもボーカル・ベース以外のトラックにも対応できるので、機能的には「Vocal Rider」「Bass Rider」よりも「MAutoVolume」のほうが上位互換的な立ち位置にあります。

しかも(時期にもよりますが)「Vocal Rider」「Bass Rider」の両方を買うよりも、「MAutoVolume」を買ったほうが安く済むことが多いです。

そのため「Vocal Rider」「Bass Rider」を買った後に、「MAutoVolumeを買っておけば良かった・・・」と後悔する人がいるかも知れません。

ただ「MAutoVolume」よりも「Vocal Rider」「Bass Rider」のほうがユーザーインターフェイスが分かりやすく操作が簡単というメリットもありますし、MeldaProductionのプラグインはインストール・アクティベートの方法が少し複雑なので、初心者の方は「Vocal Rider」「Bass Rider」のほうが使いやすいと思います。

どちらが絶対に良いという訳ではありませんが、両方の機能や使い勝手を比較してみて、ご自身の経験や用途に合ったほうを選ぶのが良いと思います。


◇「L1」「L2」「L3」

Wavessの「L1」「L2」「L3」といえばDTM界のみならず、音楽業界全体の革命的なインパクトを与えたといっても過言ではないくらい革新的なマキシマイザーでした。

「L1」が1994年、「L2」が2000年、「L3」が2005年発売ですが、当時はまだCDが売れていたり、ラジオなどで音楽を聴く人も多かったため、「いかにして音圧を上げるか」ということが課題になっていました。

というのも、人は「大きい音のほうが良い音」と感じる傾向があるため、CDやラジオで音楽を聞いてもらう時には、同じ音量設定であっても少しも大きく聴こえるように「音圧」を上げたほうが有利だと思われていたからです。

そのため当時のアーティストの音源を聴くと音源が歪んだり割れたりするくらいまで音圧を上げている原盤もあったりしました。

そのような激しい音圧競争の中で革命的だったのがWavessの「L1」「L2」「L3」で、ノブを操作するだけで簡単に音圧を爆上げすることができるということで、多くのDTMerやエンジニアさんにとって「L1」「L2」「L3」は無くてはならないプラグインとなっていました。

しかし、音楽を聴く環境がCD・ラジオからYoutubeやストリーミングになった現在では、極端に音圧を上げる必要は無くなっています。

というのも頑張って音圧を上げてもプラットフォーム側のラウドネスノーマライゼーション(自動的に音量を基準値に揃える)という機能により音圧を一定まで下げられてしまうからです。

そのため現在では「L1」「L2」「L3」の役目はかなり小さくなってきました。

また「L1」は音圧を上げると若干音が歪んだような印象があり、「L3」を通すと薄い膜がかかったような特徴のある音に変化することがあります。

そのため人によっては「この音源はL3通してるっぽいな。懐かしいな。」と分かってしまうこともあります。

そして、今ではマスタリング用のプラグインとしてはiZotopeの「Ozone」が非常に優秀なので、「L1」「L2」「L3」の王者的な地位は「Ozone」に奪われてしまったような印象があります。

現時点で敢えて「L1」「L2」「L3」をわざわざ買ってまで使う必要性がある人は多くないような気がします。

ただ「L1」「L2」「L3」にもメリットがあります。

「L1」「L2」「L3」は古いプラグインということもあり最新のPCなどでは動作が比較的軽いです。

そのため各トラックに「L1」「L2」「L3」を入れてコンプレッサー、トランジェントシェイパーの代わりに使うという方法もあったりします。

また「L1」「L2」「L3」で音圧を上げると音が特徴的に変化するので、敢えて音を変化させる狙いで各トラックに挿してみるのも面白いと思います。

さらに「L1」「L2」「L3」はいずれも簡単な操作で音圧を上げる(音量のバランスを整える)ことができるので、Youtubeなどに会話などの音源をアップする前に「L1」を使って調整をすることで時間を短縮することができたりします。

「L1」と「L2」は「Gold」や「Platinum」などのバンドルに入っているので「知らない間に持っていた」という人もいると思います。
(L3は現時点では「Gold」や「Platinum」には入っていません)

手元にある人は上記のような活用を検討してみるものも良いと思います。


◇ H-Delay Hybrid Delay

「おすすめのプラグイン」で紹介されていることが多い「H-Delay Hybrid Delay」ですが、敢えて「現在もこれに拘る必要があるか?」ということは慎重に考えたほうが良いプラグインなのでは、と思っています。

「H-Delay Hybrid Delay」はかなり昔からある定番のプラグインなので私も大変お世話になってきました。

ただ最近では他のメーカーからも数多くの使い勝手の良いディレイ系プラグインが出てきていますし、DAWに標準で入っているディレイ系のプラグインの品質も上がってきています。

「H-Delay Hybrid Delay」とは音の傾向は違いますが「ValhallaSupermassive」「Deelay」などの無料で配布されているプラグインも優秀です。


Wavesのプラグインは「操作が簡単」「初心者にも分かりやすい」ものが多いのも魅力の1つですが、「H-Delay Hybrid Delay」はどちらかというと初心者にとっては分かりにくいほうの部類だと思います。



◇C1 Compressor  /  C4 Multiband Compressor

Wavesの「C1」や「C4」などのコンプレッサーは発売された当初は先進的なプラグインで人気の高い製品でした。

今でも使い勝手の良いプラグインだと思いますし、自分も昔から使い慣れているため、たまに使うことがあります。

ただWavesの「C1」や「C4」は優れたプラグインだったということもあり、現在では現在では他のメーカーが「C1」や「C4」を真似して改良したようなプラグインを多数作っています。

また初心者にとってはiZotopeの「Neutron」のようにコンプやEQが全部入っていてAIで自動で処理してくれるプラグインのほうが最初のうちは挫折しにくいということもあると思います。

そのため、「C1」や「C4」の購入を検討している場合には、ご自身のDAWの中に似たようなコンプレッサーがないか確認してから購入の是非を判断したほうが良いと思います。

また「C1」や「C4」は「Gold」や「Platinum」などのバンドルに入っているので、単体で買うよりもバンドルで買ってしまったほうがコスパは良いと思います。




◇Renaissance Bass /  MaxxBass

「Renaissance Bass」と「MaxxBass」は、人間の脳の錯覚を利用することで、ベースなどの低音楽器に倍音を足して「低音域が増えた」ような印象を与えることができるプラグインです。

「Renaissance Bass」が発売された当時は画期的なプラグインで使っていた人が多かったと思いますし私も良く使っていました。

「Renaissance Bass」が良く使われていた時代は、低音域を出すことができないイヤホン、ラジカセ、ラジオで音楽を聴く人も多かったので、「聴こえにくくなるベースが鳴っているように聴かせる」ことができる「Renaissance Bass」などは非常に便利でした。

しかし、最近は超低域まで再現できるカナル型イヤホンで音楽を聴く人が増えていますし、車にもデフォルトで低域が再現できるスピーカーが付いていることも増えてきたため、現在の楽曲制作でベースの倍音を増やす必要があるのかは慎重に考えたほうが良いと思っています。

「Renaissance Bass」を使ってダメということではなく、現在でもベースの倍音を増やすことが有効なケースもありまうが、ミックス作業は楽器同士の「椅子取り合戦」みたいな要素があって、ベースの倍音を増やすと、中域のギター、ボーカル、鍵盤楽器などの音を邪魔してしまうこともあります。

そのため、「味の素」や「めんつゆ」みたいな感覚で何でもかんでも「Renaissance Bass」を挿すというのは避けたほうが良いです。

先ほど紹介した「Submarine」を使って倍音ではなくオクターブ下のサブベースを追加するという手法もありますし、倍音を加えるにしてもサチュレーターなどで歪みを足したりアンプシミュレーターの設定を変えるなどの方法もありますので、色々試した上で「Renaissance Bass」を使うのが本当に最善なのかを考えながら作業するのも良いと思います。

ベースを強化する手法する時の考え方はWavesの公式サイトでも紹介されていますので「ベースを強化したいけど、何を使えば良いのか分からない」という場合にはこちらも参照してみていただければです。


◇S1 Stereo Imager

「S1 Stereo Imager」は音を左右に広げたり、逆に中心に音を寄せたりできる便利なプラグインです。

Platinum以上のバンドルに入っています。

古いプラグインですが便利なので今でも愛用している人も多いと思いますし、私も使っています。

ではなぜ「注意が必要なプラグイン」として挙げているかというと、iZotopeが無料で「Ozone Imager」という似たようなプラグインを配布しているからです。

私は「Ozone Imager」が出る前から「S1 Stereo Imager」を持っていたので今でも「S1 Stereo Imager」を使うことが多いですが、今からDTMを始める人は「無料のプラグインがあるなら、そっちが良い」という人も多いと思います。

「S1 Stereo Imager」の購入を検討している人は先に「Ozone Imager」を使ってみて、無料のプラグインだと不満があるなとか、やっぱり1 Stereo Imager」を使ってみたいなと思ってから購入するのが良いかなと思います。


◇IR-L Convolution Reverb

「IR-L Convolution Reverb」はIR(インパルス・レスポンス)という技術を使って、実際に存在する有名なホールやオペラハウスの空間を再現することができるという夢のようなリバーブで、昔は私も興奮して鼻血を出しながら使っていたような記憶がありますが、最近使ってみると「何か昔のような感動がないな・・・」という印象があります。

IR(インパルス・レスポンス)という技術はかなり昔からある技術ですし、最近はWavesに限らず他社からもクオリティの高いリバーブプラグインが多数出ています。

また楽曲制作をする上ではホールなどの空間が多数収録されているプラグインよりも、有名なレコーディングスタジオの録音環境を再現したリバーブのほうが使い勝手が良かったりもします。

そのため敢えて「IR-L Convolution Reverb」を買ってまで使う必要がある場面は多くないかも知れませんが、「Gold」以上のバンドルに入っているので「IR-L Convolution Reverbを使ってみたいな」という場合には他のプラグインもセットになったバンドルで買ってしまったほうが後悔は少ないと思います。

ちなみに個人的にスタジオ再現系のリバーブはIK MultimediaのT-RackSに入っている「 FAME Studio Reverb」「SUNSET SOUND STUDIO REVERB」「The Farm Stone Room」などを使うことが多いです。


◇Waves Tune

「Waves Tune」はボーカルのピッチを補正するプラグインです。

簡単に言うと多少音痴に歌っても「Waves Tune」を使うことで正確な音程で歌っているように「お化粧」できるという便利ツールです。

ピッチ補正系のプラグインとしては最近では「Melodyne」が頭一つ抜けているという印象ですが、「Melodyne」は音程を自由にラインで書く機能がないため、歌が得意でない方の乱れまくった音程を細かく修正したい時は「音を切って直して、切って直して、切って直して・・・」という面倒作業が必要になることがあります。

一方で「Waves Tune」はペンみたいなツールで音程を自由に書き込める機能があるので、音程が乱れまくっている箇所についてはペンで「えいっ!」と音程を書き込んでしまうという荒技が使えて便利です。(いわゆるケロケロボイスになってしまうこともありますが。)

ただ「Waves Tune」は発売当初から作業画面が小さく非常に使いづらいです。

「何でこんなに使いづらいのか・・・」って作業中に何度もキレそうになるくらい見えづらいです。

また作業した部分を元に戻す時は画面上の矢印マークをクリックする必要があるのですが、うっかり「Ctrl+Z」を押してしまうと作業内容が一気に飛んでしまったりして発狂しそうになることもあります。

そのため私は基本的にピッチ補正は「Melodyne」を使い、Melodyneでは何とも出来ない強敵に出会った時にだけ「Waves Tune」を使ってみる、というようにしています。

作業画面がもっと大きくなって作業しやすくなれば、もっと売れると思うのですが・・・。


◇DeEsser

「DeEsser」はボーカルの「サ行」の耳障りな音(歯擦音)を軽減してくれるプラグインです。

昔からあるプラグインで操作がシンプルで使いやすいので、私はごくたまにギターやシンセなどの高音域の痛い部分を削るために使ったりすることがあります。

ただ古いプラグインということもあり、DAWに標準で入っているディエッサーのほうが性能が良いかも知れません。

またWavesからは「Sibilance」という新しいディエッサープラグインが出ており、他社からも性能の良いディエッサーが多数出ています。

私は歯擦音を処理する時はディエッサーではなくピーク部分を視認しやすいダイナミックEQを使うことも多いですし、またTechivationから「T-De-Esser」という高性能なディエッサーが無料で配布されていたりします。

なので敢えて古い「DeEsser」を購入する必要はないかなと思います。

ちなみに「DeEsser」は「Gold」や「Platinum」などのバンドルに入っているので「やっぱり使ってみたい」という場合にはバンドルで買ってしまったほうがコスパは良いと思います。


◇Bass Fingers / Bass Slapper

「Bass Fingers」は指弾きのベースで、「Bass Slapper」はスラップベースの音源です。

どちらも便利な音源ですが、ベース音源としてはIK Multimediaの「MODO BASS 2」や「Toontrack EZ Bass」という強力なライバルがいて、セールの時期で比較すると「Bass Fingers」「Bass Slapper」を2つ買う価格と、「MODO BASS 2」の価格はあまり変わりません。

しかも「MODO BASS 2」はピック弾きの設定もあったり、ベースの種類も多数入っていたり、演奏パターンが大量に入っていたりと、機能で比べると「MODO BASS 2」のほうが有利な点が多いです。

「Bass Fingers」「Bass Slapper」も使いやすくて便利な音源なので持っていて損はないと思いますが、予算が限られている場合には「MODO BASS 2のほうを買っておけば良かった・・・」と後悔しないように慎重に判断するのが良いと思います。

また初心者の方はあれこれプラグインを買うよりも、多少奮発して便利機能が豊富なToontrackの「EZ BASS」を買ったほうが満足度が高いかも知れません。


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