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初心者におすすめのボーカル録音用のマイク


初心者の方がボーカルを初めて録音しようとする時に、最初に悩む問題の1つが「どのマイクを選ぶべきか?」という問題だと思います。

「マイク」と言っても様々な種類があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。

またボーカルを録音する時にはマイク以外にも必要な機材があったりします。

そこで、できるだけ簡単に分かりやすく、お勧めのマイクや必要な機材などについて説明していきたいと思います。

◆マイクをパソコンに繋ぐ方法の違い(フォンプラグ、USB、XLR)

お店やネットショップでマイクを探す時に最初に注意する必要があるのがマイクを繋ぐ時の「端子」の違いです。

販売されているマイクを機器(オーディオインターフェイスなど)に繋ぐ方法は、以下の3つのどれかであることがほとんどです。

① フォンプラグ
② USB
③ XLR(キャノン)


① フォンプラグで接続するタイプのマイク

「フォンプラグ」というのはイヤホンやヘッドホンなどの端子と同じような形をしているタイプです。


パソコンのイヤホンを繋ぐ穴の近くにマイクを繋ぐための小さな穴(端子)が用意されているものも多いため、初めてマイクを買う場合に、簡単に接続できるこの「フォンプラグ」のマイクを買ってしまう人も多いです(私も最初はそうでした)

しかし、この「フォンプラグ」で繋ぐタイプのマイクはお勧めしません。

理由は単純で「音が良くないから」です。

パソコンに付いているマイクを接続する端子はそれなりの部品しか使われていないことが多く、パソコンの「フォンプラグ」用の端子に繋いで録音をしても「あれ・・・思っていたのと違うな・・・」というような残念な音になることが多いのです。

またプロでも「フォンプラグ」で繋ぐタイプのマイクを使うことはほとんどないため、このタイプのマイクは性能が低いものが多いです。

② USBで接続するタイプのマイク

次に買って失敗することが多いのがUSBで接続するタイプのマイクです。

パソコンの多くにはUSBの端子が付いているので確かにUSBで接続するタイプのマイクは便利ですし、Zoomでちょっとした会議をする場合などには手軽で良いこともあります。

しかし、このボーカルの録音をすることを考えるとUSBで接続するタイプのマイクも音質がいまいちだったり、小さい音量でしか録音できないものが多いです。

USBタイプのマイクの音質が良くないことが多い理由はいくつかありますが、通常のマイクに比べて部品の数が多くなるためコスト削減のために音を拾う部分に安い部品が使われていたり、そもそもUSBタイプのマイクでボーカルを録音する人が少ないため、ボーカルの録音に適したマイクの数が少ない、という事情があります。

そのため、USBで接続するタイプのマイクはおすすめしません。

ただし、ボーカルの録音用ではなく、ウェブ会議や簡単な配信などに使う分にはUSBタイプのマイクでも十分という場合もあります。

③ XLR(キャノン)で接続するタイプのマイク

ボーカルを録音する時におすすめなのが「XLR(キャノン)」と呼ばれる端子で接続するタイプのマイクです。

スタジオなどに置いてあるマイクは、ほぼこのXLR(キャノン)で接続するタイプになっていますが、音楽の経験が少ない人にとっては「見たことがない」という場合もあるかも知れません。


音質が良いマイクは基本的にXLR(キャノン)で接続するタイプになっているので、ボーカル録音用のマイクを探す時はXLR(キャノン)で接続できるタイプか確認したほうが良いです。

ただXLR(キャノン)にもデメリットがあります。

パソコンを見ると分かると思いますが、パソコンにはXLR(キャノン)を接続する端子が付いていないんですよね。

そのためXLR(キャノン)で接続するタイプのマイクで録音をする際には「オーディオインターフェイス」という機械を別に購入する必要があります。

オーディオインターフェイスは安い物で1万円、高い物だと100万円以上します。

できるだけお金を節約したいという人もいるとは思いますが、オーディオインターフェイスを使った場合と使わない場合では録音できる音質に大きな差が出てくるため、最初は安いものでも結構ですのでXLRタイプのマイクとオーディオインターフェースを検討することをお勧めします。

おすすめのオーディオインターフェイスは後ほど紹介します。

◆ダイナミックマイクとコンデンサーマイク

次に気をつける必要があるのが、「ダイナミックマイク」か「コンデンサーマイク」かという点です。

マイクを勧める記事の中には「ダイナミックマイクよりもコンデンサーマイクのほうが音質が良いので、コンデンサーマイクを選ぶべき」というように言い切っている説明もあります。

しかし、ダイナミックマイクとコンデンサーマイクには、それぞれメリットとデメリットがあるため、自分の好みや声の質にあったものを選ぶのが良いです。

プロがレコーディングする際にも敢えてダイナミックマイクを使うこともたまにありますし、初心者の方にとってはコンデンサーマイクは扱いにくいためダイナミックマイクを使ったほうが良い感じに録音できるという場合もあります。

ここでは、ダイナミックマイクとコンデンサーマイクのメリットとデメリットについて説明した上で、どのように使い分けるのが良いのかということも説明します。

◇ダイナミックマイクのメリット


・ダイナミックマイクは頑丈なものが多く、保管や持ち運びに気を遣う必要がなく、適当に保管をしていても劣化するということがあまりない

・手で持って歌ってもノイズが入りにくく、大きな声を出しても音が割れにくい

・ポップノイズ(マイクに息がかかった時の「ボフッ」という音)が入りにくいものが多い

・余計なノイズ(エアコンの音、パソコンのファンの音、足音)などを拾いにくい

・比較的安いものが多い(プロが使っているような機種であっても)

・スタジオを借りる時に追加料金無しで借りれることが多い


◇ダイナミックマイクのデメリット

・コンデンサーマイクよりも感度が低く声の微妙なニュアンスや吐息の表現を拾いにくい


◇コンデンサーマイクのメリット

・感度の高いマイクが多く高域から低域まで広い範囲の音を録音することができ、細かいニュアンスまで録音できる


◇コンデンサーマイクのデメリット

・壊れやすく湿気に弱いため、保管する時には基本的の防湿庫などの専用の機器やジップロックなどに入れておく必要があり、持ち運びにも気を遣う

・手で持って歌えない機種が多く顔の位置を固定しながら歌う必要があるため初心者にとっては歌いづらい

・ポップノイズ(マイクに息がかかった時の「ボフッ」という音)を防ぐためにポップガードが基本的に必要

・感度が良すぎるので余計なノイズ(エアコンの音、パソコンのファンの音、足音)まで拾ってしまう

・プロが使っているような機種を買おうとすると数十万円単位のお金が必要になる場合もある

・ファンタム電源に対応したオーディオインターフェイスが必要になる


以上がコンデンサーマイクとダイナミックマイクの主なメリット・デメリットですが、簡単に言うとコンデンサーマイクの特徴は「扱いにくい」「手間がかかる」「壊れやすい」です

コンデンサーマイクは湿気に弱いため基本的に防湿庫(デシケーター)という保管庫に入れて保管したりする必要があります。

シリカゲルと一緒に密閉できる容器(ジップロックなど)に保管するという方法もありますが、定期的にシリカゲルを交換しなければならないためそれはどれで面倒だったりします。

しかもコンデンサーマイクは感度が良いので余計な音を拾ってしまいます。

自宅や一般的なスタジオで録音をする時にボーカルのいる場所にパソコンを置くことが多いですが、パソコンのファンの音や、マウスの「カチッ」という音、同席者の咳払いや貧乏揺すりの音まで拾ってしまいます。

さらにボイストレーニングをあまりしていない初心者のボーカルの歌をコンデンサーマイクで録音すると、息が安定しないためポップガードを付けていても「ボフッ」というノイズが入ってしまったり、口や喉を閉じて音を区切ってしまった時の「くちゃっ」「にちゃっ」というような拾いたくない音まで拾ってしまうことが多いです。

そのため、歌い方の訓練を受けていない人のボーカルを録音する時にはダイナミックマイクのほうが扱い易く、良い感じで録音できることも少なくないです。

またボーカルの人がコンデンサーマイクを買ってもライブでは基本的に使いづらいですが、ダイナミックマイクであればライブでも録音でも両方で使うことができます。

そのため初心者のボーカルの方は最初に自分の声に合ったダイナミックマイクを使ってみて、ボイストレーニングなどをして声を安定して出せるようになった後にコンデンサーマイクにチャレンジするという考え方もアリだと思います。

ただ「プロがコンデンサーマイクを使っているんだから、自分もコンデンサーマイクを使ってみたい」という人もいると思いますので、ダイナミックマイクだけでなくコンデンサーマイクもいくつか紹介したいと思います。

◆初心者におすすめのボーカル録音用のマイク

最初におすすめのダイナミックマイクを紹介した上で、その後に扱いやすいコンデンサーマイクを紹介したいと思います。

ダイナミックマイク(初心者におすすめのボーカル録音用のマイク)

SHURE「BETA 58A」

SHURE「BETA 58A」は「おすすめのダイナミックマイク」でアンケートを採ったならば、おそらく上位3本の中には入るだろうというくらいメジャーなマイクです。

スタジオに良く置いてある「SM58」というマイクの上位互換的な立ち位置のマイクで、「SM58」よりも感度が高く、高音域に透明感があるような綺麗な音が特徴的です。

特に声が「こもり」がちな男性ボーカルだけでなく女性ボーカルにも相性が良かったりします。

感度が高いといっても指向性(音を拾う範囲)が狭いため、レコーディングで使っても余計な音を拾わないので初心者にも扱いやすいと思います。

プロもライブやレコーディングで使われることもあるマイクで「凛として時雨」のボーカルのTKさんが「THE FIRST TAKE」の録音で使っています。

価格は2万円前後とプロレベルのマイクの中では安い方です。

このマイクを使って綺麗に録音をできないとすれば歌い方か録音環境を見直したほうが良いと断言できるレベルなので、何を買うか迷ったらとりあえず「BETA 58A」を買っておけば末永く使えると思います。

ちなみに「BETA 58A」は人気のある機種であるため偽物が多く出回っているようです。

そのため新品で買ったほうが安全ですし、中古で買う場合には販売元を確認できる物のほうが良いと思います。

SENNHEISER 「E835」「E935」


「E835」は、「歌ってみた」を録音用として人気のマイクです。

録音をした後に細かい調整をせずにそのままオケ音源とミックスできるような「出来上がった」音が簡単に録音できるのが特徴的で初心者には扱いやすいと思います。

ボーカルを録音した後にオケ音源に馴染ませるミックス作業をする時に、ボーカルの低域をカットする作業をすることが多いのですが、この「E835」は既に低域がカットされたような「さっぱりとした」音が録音できるので「ミックスのことはよく分からないし、他の人にミックスを頼むつもりもないけど、簡単にオケ音源と混ぜたい」という人にとっては良いと思います。

価格も新品で1万円以下とかなり安いです。

「E935」は録音できる音のレンジ(範囲)が広く、低域から高い音まで拾ってくれる印象で、音質的には「E835」よりも良いですが、広い範囲の音を拾うため録音後に調整が必要です。

「録音されていない音域」を後から足すことはできませんが、「録音されている音域」はイコライザーなどで後からカットすることができますので、自分でミックスができる人や、他の人にミックスを頼む予定があるという人は「E835」よりも「E935」のほうが無難かも知れません。

オケ音源と馴染ませるミックス作業に手間をかけたくない、最初は安いマイクがいい 
⇒ E835

ミックス作業に時間、手間、費用をかける余裕がある、お金にも余裕がある  
⇒ E935

というイメージです。

AUDIX「OM」シリーズ

クリアーな音質と音抜けの良さで人気なのがAUDIXの「OM」シリーズです。

一番安い価格帯の「OM2」が1万円前後、代表的なモデルの「OM5」が1万5000円程度、女性ボーカルに相性の良い「OM6」が2万円程度と、曲のジャンル、自分の声質、予算などに応じて好きなモデルを選べるのも魅力です。

録音用に購入する場合には、男性であれば「OM5」が、女性であれば「OM6」あたりが価格と性能のバランスが取れていて扱い易いと思います。

素直に声を拾ってくれるところがメリットですが、声質によっては「色付けの少ないつまらない音」と感じる場合もあると思います。

オーディオテクニカ「AE6100」

あまり有名な機種ではありませんが個人的にコストパフォーマンスが優れていると思うのがオーディオテクニカの「AE6100」というダイナミックマイクです。

新品で買うと2万円弱するマイクで、前記の「BETA 58A」や「E935」と同じくらいの高い性能を持っています。

しかし知名度が低いということもあり中古市場では1万円以下、場合によっては6000円程度とリーズナブルな価格で出回っています。

イコライザーで調整したような完成された音が出るためミックス作業に手間をかけたくないという人にとっても便利なマイクだと思います。


コンデンサーマイク(初心者におすすめのボーカル録音用のマイク)

コンデンサーマイクは1万円以下のものから100万円を超えるものまで様々なものがありますが、ここでは「初心者でも扱いやすいマイク」という観点で、おすすめのマイクを紹介したいと思います。

オーディオテクニカ「AT2035」

初心者がコンデンサーマイクを使う上で鬼門になるのが

① せっかく高いマイクを買っても保管方法や運び方が不適切だと壊してしまう可能性がある

② ショックマウント(足音などが混入を防止するためのホルダー)は何を使えば良いのか分からない

③ ポップガード(「ボフッ」というノイズを防止するためのフィルター)が邪魔で無くしてしまう

④ パソコンのファンやエアコンなど余計なノイズまで録音してしまう

というあたりだと思います。

初心者が直面するこの問題を解決してくれるのがaudio technica(オーディオテクニカ)の「AT2035」です。

①の「コンデンサーマイクは壊れやすい」という問題ですが、「AT2035」は「バックエレクトレット」というスマホやICレコーダーなどでも使われることのあるタイプのコンデンサーマイクで、「湿気に強く、壊れにくい」です。

防湿庫を用意する必要はありませんし配信で使っている人なんかは保管せずに出しっぱなしにしている人もいたりします。

振動にも比較的強いので頻繁にスタジオに持っていっても衝撃で壊れるというリスクも小さいと思います。

もちろん湿気の少ない場所で保管するようにしたり移動の際にも衝撃を与えないように注意したほうが長持ちするのは間違いないのですが、一般的なコンデンサーマイクに比べると頑丈で価格も安いので、ある程度「雑に」扱えるとうのは初心者にとってはメリットです。

「スマホやICレコーダーと同じ原理で音を拾う」というと「音が悪いのでは?」と心配する人もいると思いますが、audio technicaだけあって録音される音はしっかりしています。

Youtubeなどで上位機種と音質を比較した動画などが多数ありますので、どの程度の違いがあるか自分の耳で確認してみると良いと思います。

②の「ショックマウント」についても、「AT2035」には付属していますし、万が一ショックマウントが壊れても別売りで専用のショックマウントが購入できるので、ショックマウントで頭を悩ませることはないです。

他のマイクだと適合するショックマウントを探すのが手間だったり、ショックマウントにマイクを設置するのにコツが必要だったりするものもあるのですが、「AT20」シリーズについてはショックマウントにマイクを「すぽっ」と入れるだけなので初心者でも設置で悩むことはないと思います。

ちなみに同じaudio technicaの「AT2020」というマイクも人気ですが「AT2020」にはショックマウントが付属されておらず「AT2035」よりも性能がやや落ちます。

そして、「AT2020」とショックマウントの両方を買うと1万6000円くらいかかるのですが、「AT2035」(ショックマウント付属)も同じくらいの価格で買えるので、「AT2020」を買うくらいであれば、「AT2035」を買ったほうがお得です。

次に③のポップガードの問題ですが、「AT2035」は専用のポップガードが2種類販売されていてスマートにポップガードを装着できるようになっています。

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ボーカルの録音をしてみると分かると思うのですが、初心者にとってはコンデンサーマイクを使う時「ポップガード」の設置は面倒だったり、持ち運びする時も邪魔だったりします。


市販のポップガードはマイクのスタンドにアームのような部品を取り付けるタイプになっていることが多いのですが、このタイプはマイクスタンドの角度を変えるたびにポップガードの角度も調整する必要があって、「丁度良い感じ」のセッティングにするのの時間がかかります。

他方で「AT2035」は専用のポップガードは、マイクやショックマウントに装着するタイプなので、マイクスタンドの角度を変えても、ポップガードを再調整する必要がないんです。

非常に細かいことのようですが初心者や私のような面倒臭いことが嫌いな人にとっては専用のポップガードがお手頃な価格で用意されているというのは有り難いことです。

また「AT2035」は専用のポップガードはアームが無くて小さいのでカバンやケースの中にコンパクトに収納できるのが便利です。

④の「パソコンのファンやエアコンなど余計なノイズまで録音してしまう」という問題については、「AT2035」には騒音などを低減する「ローカットフィルタースイッチ」と不要な雑音をカットする「パッドスイッチ」が付いています。

もちろんローカットやパッドスイッチを使わないに超したことはないのですが、録音する環境によってエアコンを切れないとか、パソコンと十分な距離が取れないというような場合には、こういった騒音や雑音をカットするスイッチが付いているのは便利です。

以上のように「AT2035」は初心者が遭遇する様々な問題に対処できる使いやすいコンデンサーマイクなので、最初の1本としてはおすすめです。

オーディオテクニカ「AT4040」「AT4050」

「AT2035」よりもより上位の機種を使いたいという場合には同じオーディオテクニカの「AT4040」や「AT4050」といった機種もおすすめです。

オーディオテクニカの「AT4050」というマイクはプロの録音現場で使われることもある定番のマイクですが、8万円前後とプロユースのマイクとしては安い方です。

「8万円も出せないよ・・・」という人は4万円以下で買える「AT4040」という機種もおすすめです。

「AT4040」と「AT4050」は音に違いはありますが、オケに混ぜてしまえば両者の違いは微々たるものですし、価格差を考えると音の違いは小さいので、コスパ面では「AT4040」のほうが圧倒的だと思います。

オーディオテクニカの「AT4040」や「AT4050」は色付けが少なく癖もないため最初に購入する1本としては扱いやすいですし、2本目以降のマイクを選ぶ時の「基準」として使うこともできます。

「AT40」シリーズはプロユースになってくるので保管や使い方には気を遣う必要が出てきますが、ノイマンなどの海外製の重いマイクに比べると扱いやすい部類だと思います。

また、ノイマンなどの海外製のマイクは上位機種に100万円クラスのものもあるため、1本マイクを買っても「もっと高い機種にアップグレードしたほうが良いのではないか・・・」という無限ループに陥る人も多いです。

それに対しオーディオテクニカは(一応30万円くらいの上位機種もあるのですが)事実上「AT4050」が最上位機種だと認識されることも多いため、8万円くらいで「AT4050」を買えば、それ以上のマイクを買う必要はないという安心感もあり、精神衛生上も良いと思います。

敢えて「AT4040」「AT4050」のデメリットを挙げるとすれば味付けが少ないため個性の尖った音にするためには録音の後に編集で手間をかける必要があるところだと思います。


AKG ( アーカーゲー ) / 「C214」「C414」

AKGというメーカーはマイクやヘッドホンなどの製品で有名で、マイクの分野では「C414」という世界的に有名なマイクを作っています。

C414はレコーディングスタジオでボーカルやギターの録音に使われることも多く、普段聴いている音楽の中にもC414で録音されたサウンドは多いです。

C414には現在は「XL II」と「XLS」というマイクがあり、以下のような違いがあります。

「XL II」 
 高域が強調されたようなサウンド、価格が少し高い

「XLS」
 比較的フラットなサウンド、価格が少し安い

「C414 XLS」は以前は初心者にも手が届きやすい価格で、これを買えば「一生物」として長く使える非常によいマイクでしたが、最近は円安の影響もあり、価格が高くなってきています。


「C414が高すぎて買えない」という人は「C212」や「C314」なども選択肢に入れても良いと思いますし、後述のAustrian Audioのマイクもお薦めです。


Austrian Audio ( オーストリアン・オーディオ ) / 「OC16」「OC18」

マイクの大御所的な立場にあったAKGのマイクの対抗馬となりつつある比較的新しいメーカーが「Austrian Audio」です。

Austrian AudioはAKGに在籍していたエンジニアが新しい製品を次々と作っており、AKGよりもAustrian Audioのほうが好きという人も増えてきています。

AKGとAustrian Audioは一方の製品の価格が下がると他方の価格も下がる、という状況になることもあり、お互いにライバル的な立場として意識をしているのかも知れません。

Austrian Audioのマイクは録音時の失敗が少なく、録音したサウンドも複雑な加工をしなくても他のサウンドと馴染みやすいと感じる人が多いようです。

初心者向けの価格帯の製品は「OC16」ですが、上位機種の「OC18」は最近はレコーディングスタジオでプロが使うことも少しずつ増えてきているようなので将来的に長く使えるマイクが良いという人は最初から「OC18」を奮発して買っておくのも良いと思います。



MXL「V67G-HE」

MXLは日本では知名度はそれほど高くないすが海外では安いわりには音も悪くないということで人気のメーカーです。

その中でも「V67G-HE」という機種は、専用ケースの中にショックマウントとポップガードが入っていて後はケーブルとオーディオインターフェイスを用意するだけですぐに録音をすることができるため、初心者にとっては悩むことが少なく、便利だと思います。

MXLの「V67G」は高価なノイマンをコピーしたもので、高域に「シャリシャリ」っとした癖があるため、声との相性や、好き嫌いが分かれるところだと思います。

またノイマンのコピーと言っても、本家のノイマンは40万円以上、「V67G」は1万円台と価格に大きな差があるので、本家のノイマンで録音した音にはどうしても敵わない部分があります。

ショックマウントとポップガードは入っていない「MXL-V67G」というマイクも人気ですが、こちらは色が派手なので見た目的にも好き嫌いが分かれると思います。

ASTON MICROPHONES(アストン・マイクロホンズ)/ Spirit

一般的にコンデンサーマイクには前記のように「ショックマウントとポップガードが必要」「壊れやすい」というデメリットがあります。

しかし、ASTON MICROPHONES(アストン・マイクロホンズ)というメーカーのマイクにはこれらのデメリットがほとんどありません。

ショック・マウント無しでマイクスタンドに直接セッティングすることができ、ポップフィルターが内蔵されており、しかも頑丈な作りになっているので、マイクの他に、ケーブルとオーディオインターフィエスがあれば難しいセッティングをすることなく録音できるのがメリットです。

ASTON MICROPHONESのマイクには3万円程度の「Origin」という機種と、5万円弱の「Spirit」という機種がありますが、個人的には「Spirit」のほうが確実に良いと思います。


UNIVERSAL AUDIO ( ユニバーサルオーディオ ) / SC-1

UNIVERSAL AUDIOの「SC-1」は少し変わった特徴のあるマイクですが

・色々な高級なマイクのサウンドを手軽に試してみたい

・ある程度DAWの操作に慣れている

という人にお薦めです。

簡単に言うと「SC-1」は「マイク1本で数種類のマイクのサウンドを作れる」というマイクです。

「意味がちょっと分からない」という人もいると思いますが、「SC-1」本体は癖の少ないサウンドを録音した上で、パソコン上のソフトで有名なマイクのモデリングを読み込み、様々なマイクに「化ける」「モノマネをしてくる」製品です。

UNIVERSAL AUDIOは様々なマイクプリアンプやギターアンプのモデリングができる「Apollo」というオーディオインターフェイスで絶大な人気を誇っていましたが、それと同じような製品だと考えると分かりやすいかも知れません。

「Apollo」と違って「SC-1」のマイクの中にDSPが搭載されている訳ではないのでモデリングはパソコン上のソフトウェアで行うことになります。

初心者の方は最初のうちは自分の声にどのようなマイクが合っているか分からないということも多いと思います。

そのため1本目もマイクを買った後に「もっと自分に合ったマイクがあるのではないか・・・」と考えてしまい、2本目のマイクを買い、さらに3本目のマイクを買い・・・というようにマイクを何本も買い換えるということを繰り返すことになるパターンも良くあります。

様々なマイクを買い集めるののも楽しいですが予算的に何本もマイクを買うのは大変という人も多いと思います。

そういう場合には「SC-1」を1本買って、様々な有名なマイクのモデリングを試してみて、自分の声に合ったマイクの傾向を掴んだ後に高いマイクに買い替える、という順番を踏んだほうが失敗する可能性は低くなると思います。



LEWITTなど


その他、最近ではLEWITT (ルウィット)という有名メーカーが低価格帯のマイクや革新的な技術を用いたコンデンサーマイクを販売して人気になっています。



初心者にはあまり「おすすめしない」マイク

次に初心者には、あまり「おすすめしない」マイクをいくつか挙げておきたいと思います。


SHURE「SM58」

SHUREの「SM58」というマイクは雑誌や楽器屋さんなどでも「最初の1本におすすめ」みたいな感じで紹介されていることが多いのです。

しかし、個人的には「SM58」を「使うこと」は良いと思いますが「買うこと」はあまりおすすめしていません。

おすすめしない主な理由としては

・ほとんどのスタジオに常備されており追加料金無し(or格安)で借りれることが多い(買わなくても使える)

・上級者でないと「こもった」音になりがちで初心者には少し扱いづらい

という点です。

ほとんどのスタジオやライブハウスは「SM58」は置いてありますので「SM58」を試してみたい場合には借りれば良いと思いますし、「SM58」を買うよりも別のマイクを買ってみて定番の「SM58」とどのような違いがあるか試してみるほうが勉強になると思います。

また「SM58」は歌が上手くてマイクの扱いに慣れたボーカリストが扱うと「良い感じ」の音を出せることがありますし、プロの録音の現場でも「57」という「SM58」の兄弟機種のようなマイクが使われることがあります。

しかし、「SM58」はボーカルの力量に左右されるマイクでもあり、初心者の人が使うと「抜けない音」と感じてしまうことも多いので、最初のうちは敢えて「SM58」を買う必要はないと思います。

なお「SM58」は定番マイクということもあり中古市場では偽物も出回っているので注意が必要です。


NEUMANN(ノイマン)


プロのレコーディングの現場ではノイマンの「U87」というマイクがファーストチョイスとして使われることが多く、「ボーカルのレコーディングと言えばノイマン」というくらい定番のマイクになっています。


憧れのアーティストがノイマンのマイクを使っているのを見たりすると「自分もノイマンのマイクが欲しい」と思う人も多いと思います。

しかし、初心者の人にはノイマンのマイクの購入はあまりおすすめしません。

おすすめしない主な理由としては

・きちんとした録音環境が無いとマイクの性能を活かしきれない

・一般的なマイクスタンドやショックマウントが使えない、重い等の理由で初心者には扱いにくい

・ほとんどのレコーディングスタジオにノイマンは置いてあるので自分で買わなくてもノイマンで録音はできる(買わなくても使える)

という点です。

ノイマンのマイクは安いマイクでも10万円程度、定番の「U87」は40万円以上します(以前は30万円くらいだったのに値上がりしています)。

しかも「U87」の専用のショックマウントだけでも6万円以上かかりますし、スタンドが倒れてマイクが壊れるという事態を防ぐためにもしっかりとしたマイクスタンドを購入する人が多いので、とにかくお金がかかります。

また高額なマイクの性能を活かすためには録音をする環境を用意する必要がありますが、専用の録音ブースを持っているというような恵まれた環境にある人もほとんどいないと思いますので、その辺のスタジオを借りてその都度セッティングをして・・・という感じで使ってもマイクの良さを活かしきることは難しいです。

他方で一般的なレコーディングスタジオにはノイマンの「U87」は置いてあることが多く、2万円程度払えばきちんとセッティングされた環境で、エンジニアの人が付いている状態で、良い感じに録音をしてくれます。

なので初心者のうちからノイマンの高額なマイクを個人で所有するメリットはあまりないと思います。

「どうしてもノイマンが欲しい」という人は10万円前後の比較的リーズナブルな機種もありますので、そのあたりから試してみるほうが無難だと思います。

以上、初心者におすすめのボーカル録音用のマイクなどについてお話をしてきました。

長くなりましたのでおすすめのオーディオインターフェイスについては別の記事で説明をしたいと思います。

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