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第4次静岡県地球温暖化対策実行計画(案)パブコメのポイント

静岡県に「気候変動対策強化」の声を届けよう
パブリックコメントのポイント


やんくみです。

静岡県2022年度から2030年度の9年間を計画期間とする「第4次静岡県地球温暖化対策実行計画(案)」を1月17日に公表し、静岡県の2030年温室効果ガス削減目標を初めて明記したパブリックコメント(通称:パブコメ)の募集をスタートさせています。(2月7日まで)

 今回改訂される静岡県温暖化対策実行計画は、5年程度をめどに見直しが行われるとありますが、気候危機回避にとって最も重要な2030年までの県の方針を決める計画になります。

 地球温暖化は、人類にとって大きな問題です。ぜひ、ひとりでも多くの皆さんに、この計画案(特に課題・問題点)を知っていただき、静岡県に意見を届けてほしいです。

 このブログでは、次期静岡県地球温暖化対策実行計画のポイントを、段階的にレベル分けし、できるだけわかりやすく、コンパクトお伝えします。

■ はじめに What's パブコメ?

ところで、パブコメってなに?
効果があるの?という方へ


 パブコメは、計画案に対し私たちの意見を提出することが出来る制度で、行政に対して「あなた方がきちんと気候変動を止めるために頑張っているか、しっかり見ていますよ」ということを伝えるためにも、多くの人が意見を届けることが大切です。よく「パブコメ」なんて意味がないと言われますが、集まった意見を十分に考慮しなければならないと行政手続法で定められています。静岡県が募集しているパブコメの書式は自由です。

■ 「書くためのポイントを教えて」というあなたへ

    第4次静岡県地球温暖化対策実行計画(案)を読む際に意識しておきたいポイントを3つお伝えします。少しお時間のある方は計画案を読んで意見を書いてみましょう。

第4次静岡県地球温暖化対策実行計画  
意識して読みたい3つポイント

1.危機回避できる?
   地球の平均温度上昇を1.5℃に抑えられる

   2050年バックキャストで計画されてる?

2.対策は効果的?
      啓発だけでは不十分
      削減するための制度が導入されてる?
      暮らしをより豊かにするものになってる?

3.  市民参加の場はある?
        幅広い県民の声
反映できるがある?

パブコメを書く際に参考にしてください。

カーボンバジェットと2030年までに急ぐべきこと

ポテンシャルはREPOSより算出
参考 環境省地球温暖化対策の改訂について


■ 「問題点を手っ取り早く教えて」というあなたへ

あまり時間がないけど自身で書いてみたい!という方はこちら。
もう少し詳しく問題点を解説します。

第4次静岡県地球温暖化対策実行計画案の問題点
この計画案には大きく3つの問題があります。

(1)目標設定の問題について

◆ 温室効果ガス排出量の削減目標が低い!
排出量削減目標
2030年46.6%減(2013年度比)
2013年度 3,355万t-CO2 ⇒ 2030年度 1,792万t-CO2
➢日本が国際的な責任を果たすためには55〜62%の削減が必要です。
目標数値の引き上げを求めましょう。


◆ エネルギー消費量の削減目標が低い!
2013年度比 2030年3割減
産業+運輸+家庭+業務部門 削減率 
2013年度比28.6%
➢2030年目標数値の引き上げを求めましょう。
➢2050年の目標数値がありません。公表を求めましょう。*


◆ 家庭部門・運輸部門の削減目標が低い!
家庭部門(2030年47.8%減)
運輸部門(2030年26.9%減)
「地球温暖化対策推進法」2030年削減目標を大きく下回ります。
削減目標の引き上げを求めましょう。
➢ 2050年の目標数値がありません。公表を求めましょう。*


◆ 再生可能エネルギー導入目標が低い!
再生可能エネルギー導入量
2019年度 49.7万kl ⇒ 2030年度 84.7万kl (1.7倍)
再生可能エネルギー等の導入率 30.6%
➢「第6次エネルギー基本計画」2030年電源構成再エネ割合は36〜38%
国と同レベルに引き上げを求めましょう。
➢ 2050年の目標数値がありません。公表を求めましょう。*


◆ 2050年の目標数値がない!*
2050年カーボンゼロを達成するには2050年から逆算し目標設定する必要があり、2050年目標数値を公表し県民と共に取組んでいくことが大切です。繰り返しになりますが、計画案には2050年のエネルギー消費量削減目標、再生可能エネルギー導入目標の記載がありません。不確実性が高い技術革新に頼ることなく、脱炭素社会づくりに行政と県民が一体となって着実に取り組めるよう2050年の目標数値公表を求めましょう。

(2)政策の問題について



◆啓発だけでは不十分!削減制度が導入されている?
必要なのは、制度・支援策・事業
住宅の高断熱・高気密化
屋根太陽光発電等の設備導入の制度化
ノンフロン機器の普及、
フロン類の回収と漏洩防止を徹底する制度


◆ 技術革新の推進
「産学官の連携によるメタネーション技術の開発の推進」
は、天然ガスの 延命策。化石燃料依存を推進していいの?


◆ 市民参画
推進体制に、県民の意見が反映できる場がありません。
県民との協議の場の設定を求めましょう。

(3)パブリックコメントの問題点

◆ パブコメ募集期間が3週間しかない!
期間延期を求めよう!

静岡県第4次地球温暖化対策実行計画

パブコメ募集期間は、たった3週間。
少し短すぎませんか?

行政手続法の意見公募手続の規定には、

​​意見提出期間は、命令等の案の公示の日から起算して30日以上でなければならない。
【意見公募手続(第39条)】

行政手続法 意見公募手続

とあります。

ただし、やむを得ない理由があるときは、その理由を公表した上で、当該期間を短縮することができる。
と定める自治体もありますが、「第4次静岡県地球温暖化対策実行計画」の県民意見募集案内には短縮理由の公表がありません。


■ 「時間がないからコピペしたい」というあなたへ

忙しい中でもパブコメを出したい!という方向け
コピペしてご活用ください。

パブコメにはこう書こう!

◆ 温室効果ガス排出量の削減目標は引き上げを!
2030年 静岡県内の温室効果ガス排出量削減率(2013年度比46.6%削減)
2030年46.6%削減という目標は少ないので、積み増しをしてください。


 パリ協定の1.5℃目標を達成するためには、55〜62%削減が必要だと国際的な研究機関(クライメート・アクション・トラッカー)が算出しています。バックキャスティング型アプローチを行うなら最低でも長野県と鳥取県が掲げている60%削減目標が必要です。


 2021年11月からおこなわれたCOP26で、各国の現在の国別の温室効果ガスの目標値の見直しを次のCOPまでに行うことが決まりました。また、COPの直前に、現在の目標値では、すべてが実現したとしても、今世紀のうちの2.7度も上昇してしまうとの報告がありました。つまり、現在の日本の目標2030年46%、さらに50%の高みをめざす、という目標も、見直しが迫られています。このような危機的な状況に鑑み、少なくとも2030年の削減目標を60%以上にしていただきたいです。

 地球温暖化対策は、人類にとって解決しなければならない最大の課題であり、できるできない論は無意味です。市民の生命、財産、健康をまもり、持続可能な発展をめざすことが行政の使命であり、“やらなければならない“という決意と気概が成果を生みます。長野県や鳥取県のように、静岡県も60%の目標を掲げ取組んでください。


◆ エネルギー消費量、削減目標の引き上げを!
 エネルギー消費量(産業+運輸+家庭+業務部門)
 削減率(2013年度比 28.6%)


 長野県は、バックキャスティングに基づき最終エネルギー消費を2030年までに4割減、2050年までに7割減(2010年比)を打ち出しています。静岡県も、バックキャスティングに基づき、各分野毎のエネルギー消費量の目標値を設定してください。また、第4次静岡県地球温暖化対策に2050年のエネルギー消費量削減目標も示してください。


◆ 各部門の徹底したエネルギー対策の推進を!
 省エネに関する温室削減目標は、ほぼ自努力にかかるものであるため、目標達成に向かって個々の対策内容と数字目標の丁寧な設定と検証が大事です。特に脱炭素化が難しい熱利用分野、建築分野と運輸分野における静岡県の実態を反映している目的設定や対策は重要です。


 静岡県の分野別削減目標、家庭部門(2030年47.8%減)、運輸部門(2030年26.9%減)は、「地球温暖化対策推進法」の2030年削減目標を大きく下回ります。家庭部門では、照明・家電用品の高効率化、並びに住宅の高断熱・高気密化及び屋根太陽光発電等の再生可能エネルギー設備の導入を制度化させることが必要です。運輸部門では、燃費性能の高い自動車への乗り換え、並びに自動車から徒歩、自転車及び公共交通への転換、都市のコンパクト化やカーシェア普及の政策を立てて下さい。


 フランスでは温室効果ガス削減のため短距離航空路線が廃止されました。静岡県はアフターコロナ後の富士山静岡空港の利用促進に積極的に取組むとしていますが、空港を再エネ化したところで排出削減にどれほど効果があるのでしょう。


◆ 再生可能エネルギー導入の目標の引き上げを!
 日本政府の再エネ導入目標を見ると、2030年の電源構成に再エネの占める割合は36〜38%ですが、静岡県の導入目標は30%程度であり、低すぎます。せめて国と同じレベルに引き上げてください。同時に2050年への長期的促進政策を打出してください。


 環境省の「再生可能エネルギー情報提供システム REPOS(リーポス)」 によると、静岡県の導入ポテンシャルは太陽光(レベル1)だけで1250万kw、中小水力導入量30万kwと、2030年の太陽光導入目標の約3.7倍、中小水力発電の約21倍にも相当します。本気で取り組めばもっと増やせるはずです。


 ゼロカーボン基金、ポテンシャルマップで屋根ソーラー、営農型ソーラー、中小水力発電等を推進、地域事業者がゼロカーボンの先導役となり、再生可能エネルギー事業を支えられるよう地域事業者との連携拡大を事業化してください。


 地域の再生可能エネルギー普及を目的とし、持続可能な脱炭素社会づくりに資する取組の推進を目的とした「静岡県ゼロカーボン基金」を創設してください。


 市町村や地域のNPO、中小企業等が再生可能エネルギー発電事業を実施しやすいよう支援してください。小水力発電については、早期の事業化を推進するため、補助率、上限額の引き上げを実施してください。


 世界に流通する水素・アンモニアのほとんどが化石燃料から作られています。輸入の際にも温室効果ガスが発生します。ブルー水素(CCS付きの施設で生成された水素)はガスをそのまま発電に使うより温室効果ガスを少なくとも2割以上多く排出するという研究もあります。水素・アンモニアによる発電は過渡的な技術であり、再エネ由来のCO2フリー水素に限定してください。


 原子力発電は、リスクが高く出力が不安定な電源であり持続可能ではありません。太陽光や風力など、地域の再生可能エネルギーの推進を後押ししてください。

住宅性能
「太陽光発電設備設置義務化を進めてください」
「断熱等級6以上の義務化を進めてください」

◆ 技術革新の推進
「産学官の連携によるメタネーション技術の開発の推進」
について
 天然ガスを使用するメタネーションは、海外からの輸入に頼らざるを得ず、情勢次第で供給が不安定となり、気候の公平性にも反します。化石燃料に頼る産業への推進は行わず、地域の再生可能エネルギーの普及を推進してください。


◆ 必要なのは、制度・支援策・事業
 啓発はこれまでも長年取り組んできたことであり、啓発によってCO2削減に成功した事例は全国どこにもありません。長野県では制度化を図り計画を立てています。静岡県も制度化で脱炭素社会を牽引してください。


 脱炭素社会への変革に向けて、就労支援、職業訓練、新規産業育成等への支援をサポートする制度を策定してください。


 この計画は、県民の個人的な努力に頼りすぎています。啓発中心では温室効果ガスの排出量を半減するようなことはできません。CO2の多い行動をした人がはっきりと損をするような政策や、普通の人が深く考えずに合理的に行動すれば自動的に減るような政策のように、制度を整えることが必要だと思います。


◆ 市民参画
 この計画案の推進体制では県民の意見を反映できるものになっていません。幅広い県民との協議の場を設定してください。
 気候変動問題をはじめ、県民の環境に対する意識の向上と、実践的な行動を促すため、県民に向けて環境教育に関する情報を発信するとともに、環境教育に取り組む団体等の活動を支援する環境カレッジ事業に取組んでください。


 2050ゼロカーボンに向けて県民一丸となり取り組むため、気候変動を正しく理解するとともに県民が自ら行動できるよう、適切な情報発信・情報共有を図ってください。


  ゼロカーボン実現県民会議を設立し、次代を担う若者が気候変動に対する意見や情報を発信できるような施策を形成してください。


 パブコメ募集期間が3週間と短すぎます。多くの自治体のように1ヶ月間へと延期してください。

■ パブコメの提出方法

意見の提出期間
令和4年1月17日(月)〜令和4年2月7日(月)

意見の提出方法
持参、郵送、FAX、メールでも送れます。

書式は自由です。
意見書には氏名、住所、連絡先(電話番号等)を明記してください。

意見の提出先
【メールの場合】
kankyou_seisaku@pref.shizuoka.lg.jp

【持参又は郵送の場合】
 〒420-8601 静岡市葵区追手町9-6
 くらし・環境部環境局環境政策課(県庁西館6階)

【FAXの場合】
 054-221-2940(くらし・環境部環境局環境政策課)

ふじのくにエネルギー総合戦略(案)公表


パブコメ募集期間
令和4年1月27日(木) ~ 令和4年2月21日(月)

「第4次静岡県地球温暖化対策実行計画」と同様に、2050年カーボンニュートラル社会の実現に向け、改訂されるものです。

 内容は、「第4次地球温暖化対策実行計画」のエネルギーに関する項目と整合するものとなっています。こちらの計画もチェックしてみよう!


■ パブコメを書き終わったらSNSで拡散しよう!

パブコメが募集されていることを、
みんなに伝えるためにSNSで拡散しませんか?
どんなことを書いたかシェアするのもいいですね!

【2/7〆切】パブコメを出そう♪ 
静岡県が温暖化防止のための新しい計画案に意見を募集しています。
子どもたちの未来のために私は出しました。
あなたも一緒に出してください!
#静岡 #気候変動 #温暖化防止 #パブコメ


■ 最後に

Stubborn Optimism

数値目標はただ達成すればいいというわけではありません。
大事なことは、この変革によって、みんなの暮らしをより豊かにすること。

温暖化と脱炭素社会変革への途中で、
世界中の誰一人犠牲になることがないように。

気候変動に向き合うことは、
しんどいことも多いですが、
わたしたちは一人ではありません。

この記事をつくりにあたり、
気候アクション滋賀ネットワーク
ゼロエミッションを実現する会
のブログを参考にさせていただきました。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


地球の平均温度上昇を1.5℃に抑える施策*

クライメート・アクション・トラッカーは、1.5度目標達成のためには少なくとも日本の2030年削減は62%以上を要するとして大きな削減が必要としています。また同団体は2021年5月4日に「日本や米国などが新たに発表した2030年までの温室効果ガス排出削減目標を達成しても、世界の平均気温は産業革命前より2.4度上昇する」と発表しています。

Global update: Projected warming from Paris pledges drops to 2.4 degrees after US Summit: analysis | Climate Action Tracker
また、国連環境計画は2019年GAPレポートで1.5℃目標を達成するには2020年から排出削減レベルを5倍にする必要があると指摘しています。

Climate Action Tracker




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