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Poolリリースの狙い

「手元の資産形成に活用できるクレジットカード」というコンセプトでPoolという新しいプロダクトをリリースする予定です。本日、プレスリリースで発表した通り、事前登録を開始いたしました。

発表に合わせて、カンム社としてなぜPoolをリリースするのか?その狙いを書きたいと思います。このプロダクトで解決したい課題やユーザーニーズはプレスリリースに書いたので、ここでは事業としての狙いを中心に書きます。

■ソフトウェアで管理できるお金のインフラが整いつつある

世の中のデジタル化が進んで、新しい金融サービスが生まれています。例えば、ECやインターネット決済が進み、その売上を担保にして融資するトランザクションレンディングや、請求書をオンラインで買い取るファクタリングといった融資サービスが思い当たります。

お金のインフラが進化すると、この流れがさらに加速すると考えています。具体的には、銀行の預金データや振込にアクセスできるようになるBank APIや、銀行間の送金インフラである全銀ネットへ銀行以外の事業者が接続するという議論、また中央銀行がデジタル通貨を発行する(CBDC)というお話まで、明確にお金の管理・移動がより安価に、簡単に、しかもソフトウェアで自動的に行えるインフラ整備が進んでいます。

お金の移動をソフトウェアで管理できると、、、例えば、賃貸で家を借りる時に敷金を払います。それは退去する時に何か費用が発生したらその資金を抑えるための前払い型の担保なわけですが、お金の移動をソフトウェア管理できると、借り主の預金が必要資金以上であることをモニタリングし続けられれば敷金を納付しなくて良くなるかもしれません。もし預金額が敷金分の必要費用を下回りそうであれば、出金にロックをかけるなり、次の支払い予定の給料を抑えるといったことも可能となります。(ここまでして敷金を前納したくない人がどれだけいるかはわかりませんが笑。ただ、納めなくて良くなる分投資に回したりできるのでその人単体では資本効率が上がります。法人テナントの敷金10ヶ月等にはニーズあるか)

他に思いついた事例はこちらの記事に書いているのでご興味ある人はご覧ください。

■もっと自由な投資市場が広がる

新しい融資サービスが生まれると、それは新しい投資先が生まれる、ということでもあります。資金を提供するとその対価として金利が得られるため、それは投資の選択肢が増えるということです。今までの方法だと中々お金が借りられなかった人・会社が、新しい手法・データにより借りられるようになります。

そういう投資機会に対して、銀行を介さず直接投資・融資するインフラも整いつつあります。例えば、株式投資型のクラウドファンディングは、未上場企業の株を買うことができますし、購入型のクラウドファンディングも広い意味(物がリターン)で人・会社へ投資していると考えることができます。ソフトウェア化による投資機会と投資手法の進化で、様々なタイプの投資機会が増えていっています。

また、投資機会は人・会社向けに限りません。例えば、富裕層の投資先の1/4は、株式・債権だけでなく、不動産やアートといったオルタナティブ資産に投資されているという記事があります。アートやワインは、ここ数十年で見るとS&P(米国の株価インデックス)よりも多くのリターンを生んでいるという記載もあります。そもそもこの領域は投資ニーズがあるわけで、センサーの進化で物理情報のデジタル化や、ブロックチェーンといった技術で所有者の保証をしやすくなると、物への投資も活発化してくると考えています。

■BS(Balance Sheet)の勝負

では、このような環境下で勝負しようとした場合、重要となってくるのは資金提供力、資金調達力だと考えています。結局、魅力的な投資商品を発掘できたとして、事業として大きくしようとすると、投資するための十分な資金が必要となります。可能な限りたくさん、かつ安く資金を集められる力が、事業の規模を大きくする鍵となります。FinTechはBS(Balance Sheet)の勝負と言われたりします。もちろん売上/利益(PL)も大事ですが、資産額(現金や負債)が事業の成長に直接影響する点で、他の領域と違ってくるのかなぁと。

例えば、学生ローンからはじまったSoFiは、最近地銀を買収しました。また、スウェーデンの後払い決済事業者のKlarnaも、ドイツで銀行をはじめました。これらが狙うところは一つで、安価な調達手段である預金を、事業のパーツとして取り込むという意図だと推察します。既に、資金を個人なり企業なりに提供するビジネスが成立している2社で、次のステップとして資金調達手段の最適化を図ろうとしています。

この戦略は古くからあり、例えば楽天における楽天カードも、楽天銀行というパーツでそのような仕組みを既に実現しています(「裏の楽天経済圏」とこちらの本で書いてありました)。

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弊社においても、バンドルカードを活用した、資金が必要な事業が立ち上がってきておりまして、これをテコに、投資事業、新しい事業を展開していこうと考えています。例えばこういうことも考えています。

(2018年頃からこのような構想を描いていたのですが、今日までに3年かかってしまいました。とにかく許認可が必要なFinTech事業は、リリースまでに時間がかかる!!)

■それは小規模な銀行のようなもの

そして、それらの事業が成立し、資金が流れ始めると、それはある種銀行のようなものになると考えています。もちろん、法的には銀行ではありませんし、信用創造をするわけではないのですが、銀行の役割である、世の中からお金を集めて新しい産業に資金を提供して経済を成長させていく、という部分は同じと考えています。

もちろん、兆単位で大きく資金が必要な産業ではなく、個人単位の挑戦(起業が想起しやすいですが、留学する/プログラミングを勉強するといった何かを学ぶ行為や、旅行するという経済活動に直結しない挑戦も含めて)に資金を提供する、という領域です。そのような小さな挑戦に資金を提供するのは、既存の枠組みだとビジネスが成立しにくかったわけですが、ソフトウェアの浸透により、新しい仕組みや劇的なコスト削減で、成立する土壌が整ってきました。つまり事業として大きなチャンスがあるという部分と、さらには世の中を大きく変化させる可能性のあるお金の流れを作ることができると考えており、その初手として今回poolをリリースしようとしています。

なお、基本は直接金融(そこにお金を預けても保証されない)となるため、リスクは銀行=仲介事業者=弊社ではなく、資金を提供する人、預金者ならぬ投資家が負うことになります。そのため、リスクをどう評価するか?どう分かりやすくできるか?という挑戦でもあります。大手金融機関のリスクマネジメントを個人でも扱えるようにする。要は、お金さえ集まればよいという話ではなく、資金提供者の目的と、資金調達者の目的をうまくバランスさせることが重要で、両軸で考えていきます。今月お金がピンチという状態を解消することも、挑戦を増やせる一手だと考えています。

■それが実現できると世界はどう変わるのか?

一言で言うと「挑戦する機会・人が増える」だと考えます。2つの意味があって、まず単純に個人でも小さい会社でも資金を調達することが簡単になる点。もう一つは、経済的な自立を実現しやすくなることで、心に余裕ができて、挑戦する気持ちになれることです。今月お金がピンチという状態を解消することも、挑戦を増やせる一手だと考えています。

なお、じゃあ資金を提供するので挑戦してください、というアプローチも挑戦を促すのに最適ではないと思っていて、何か具体的に欲しい物、やりたいことに寄り添う形での資金提供が、挑戦のハードルを下げると考えています。例えば、行ったことのない場所に旅行に行くというレベルでも、そこで出会った人と何かする、出会った物で何かする、という次の行動が生まれればその人にとっての挑戦かもしれません。自分ごとだと、子供が小さいうちに飛行機で旅行をする、ということでもすごい挑戦になります笑。

そこで弊社は、決済=何かに支払いをするという機能に、資金提供の機能を組み合わせることで、そのような挑戦を促しやすくできると考え、ただ資金を提供するのではなく、「決済」を軸にして事業を展開していきたいと考えています。

挑戦に資金提供する、と書くと起業支援をイメージしがちですが、すぐに経済活動に直結せずとも、何か新しいことをはじめる機会が沢山の人に生まれるとすれば、それはより良い社会だと考えます。

(それは挑戦なのか浪費なのか?という視点もあります。例えば、借金をしてパチンコをするケースを挑戦と捉えるのは中々難しいかもしれません。実際問題そういうケースへ資金を提供するのは難しい。こういう点でも、うまくバランスをとる仕組み作りをしないといけないなと感じます。)

■最後に

もちろん、バンドルカードも弊社の基幹事業として、成長させるために投資を続けます。poolのリリースでできることの幅が広がり、いよいよやりたいことも増えてきました。さらには、複数の事業を経営していく会社となり、次のステージに一歩足を踏み入れたという実感があります。

このようなまだまだ成長の過渡期で、課題が無限に表出して、挑戦しがいのある領域で勝負したい人、エンジニア、BizDevはじめ全方位で募集しております。

もちろん、Poolのエンジニア/BizDev枠も募集しています。

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