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なぜ、個が金融にアクセスしやすく、したいのか?

先日、最近流行りの求職者向け会社紹介資料を作った。
その中で、改めて会社の目指すことを記載させてもらったのだけど、今日はそれについて書く。

早速だけど、自分は「個が金融にアクセスしやすくなると革命が起きる」と思っている。その理由について、この本を追って説明したい。皆大好き群像本である。

アメリカの1970年代頃の金融革命について述べている本。弊社のバイブル。
主に決済と投資について書いていて、決済はVisa(クレジットカード)の、投資は投資銀行や投資信託会社の歴史を中心に書いている。

決済

クレジットカードは、元はカリフォルニア州地銀のバンクオブアメリカのハウスカードとして生まれた。銀行の中でリテール金融は格下だと思われていた時代、バンクオブアメリカの創業者、アマデオ・ジアニーニは、ザ・リトル・フェロー(普通の人)向けに銀行サービスを提供することに普請していた。
当時のクレジットカードは、バンクオブアメリカ預金者とカリフォルニア州加盟店のみで使えるカードであった。その後、バンクオブアメリカはその仕組みをフランチャイズ契約で色々な銀行に提供しはじめたが、各行がばら撒いて、収集がつかなくなった。そこにディー・ホックというバンクオブアメリカの担当者が現れ、フランチャイズ銀行と新しい組織を作り(それが後のVisa)、バンクオブアメリカから独立させてしまった。
この仕組により、銀行がクレジットカードを安定的に運用できるようになり、消費者は簡単にお金を借りられるようになった。
当時は、超絶インフレで、クレジットカードで先に物を買ったほうがお得な時代だった。なぜなら数カ月単位で給料が上がるから。それは賢い行為だったと書かれている。これにより消費が活性化され、経済成長を促した。実際、1978年には、クレジットカードを6,000万人が利用しており、カードを持てるのに敢えて持たない人は1,150万人しかいなかった。
なお、現在アメリカは、クレジットカードではなく即時払いのデビットカードが主流となっている。

投資

当時、投資は機関投資家や一部の金持ちのツールだった。そこに、メリルリンチ創業者のチャールズ・メリルが「Wall street to Main street」という標語の下、中流階級の人向けにサービスを提供しはじめた。はじめて、投資領域で個人向けにマーケティングを行ったのである。ウォール街の広宣費のうち1/4はメリルリンチが出していたそうだ。
あと、メリルの好きな話として、証券ブローカーには、売買の手数料インセンティブではなく、固定給与を支払うことで、顧客に無駄な売買をさせない構造を作ったこと、とか。
さらに、プロに投資をお任せできるミューチュアルファンド(投資信託)が誕生し、これで一気に中流階級が投資に向かった。当時、強気相場が続いていて、投資せずに預金に預けておくと損する構造があった。
一気にミューチュアルファンドを普及させたのが、フィデリティ創業者の息子のネッド・ジョンソン。ミューチュアルファンドに小切手を付けて、いつでも引き出せるようにした。これが爆発的に普及。今では当たり前になっている(MMF)。彼はこんな言葉を残している。「お金を引出しやすくすれば、人はもっと買いたくなる」。当時のミューチュアルファンドは、引出しにくくすることが当たり前だった。
これで、投資と預金の垣根が曖昧になり、アメリカは一大投資国家となった。ちなみにこれも名言。エドワード・フーラッシュ「優れた金融手段が人気を得るには、それが単純に見えなくてはならない


どちらも、インフレ/強気相場起因の事象ではあるが、それとは別の共通点は、中流階級の人に新しい金融サービスが提供されている点、である。革命のスタートである、バンクオブアメリカのジアニーニも、メリルリンチのメリルも、普通の人を第一の顧客と考えていた。
ここから、時代の転換点に、今まで金融にアクセスできなかった人がアクセスできるようになると、大きなムーブメントとなる、と思うようになった。

今、カンムがしようとしていることは、今までクレジットカードを持てなかった / 持とうとしなかった / 日常的に使おうとしなかった人たちに、ハードルの低いキャッシュレス決済を提供することである。
ECやC2C、サブスクリプションサービスといった、キャッシュレス決済機会が増えているのにもかかわらず、その恩恵が受けられていない人、恩恵を受けてはいるが十分に使いこなせていない人が、かなりの数存在していることは大きな課題だ。
1970年代のアメリカのように、インフレという要素はコピーできないが、支払い機会の多様化や、デバイスの進化、データの爆増といった時代の変化は今まさに起きていて、そこに合わせて大きなムーブメントを起こせるのでは?と思っている。

ただ、キャッシュレスそのものがゴールではなく、キャッシュレスが当たり前となったその後の世界にも、自分は興味がある。
具体的には、資金移動がリアルタイムに行われるようになり、結果
①無駄遣いが減る
②理不尽な与信無し判断がなくなる
③資金繰りの問題がなくなる
ような世界だ。詳細はこちらに書いている。

そして、実はこっそり次にチャレンジしようとしている領域を会社紹介資料には入れていて、決済×投資、という分野で新しいムーブメントを起こしたいと思っている。

詳細はまだ書けないが、一貫して、今まで金融にアクセスしてこなかった個に扱いやすい金融サービスを提供していきたい、というコンセプトのプロダクトだ。技術とデザインの力で、ハードルを超えていく。

最後に「経済を進化させる」ことが、カンムの最終ゴールだと考えている。ただのFinTechスタートアップではなく、もちろんテックカンパニーであり続けるが、これからは金融機関として、持続的な経済成長を促せる仕組みを考えていきたい。
その上で、攻めの開発だけではなく、守りのバックオフィスも含めて、あらゆるポジションを募集しているのでご興味ある方は是非!

(上記に加え、AML/CFTオフィサー、リスク管理のポジションも募集中。Cクラスのポジションもあるよ!)

次回、なぜ決済(イシュア)なのか?、なぜ技術とデザインなのか?も書こうと思う。

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