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船の安全と小型船舶入門

 いつもご覧いただきありがとうございます!エイトノットの奥田です。
 今年も暑い夏が近づいてきました。熱中症などにお気をつけてお過ごしください!
 夏といえば、小型船舶に乗ってのんびり釣りを楽しんだり、友達や家族とクルージングを楽しんだりするのも夏の醍醐味の1つではないでしょうか。
 多くの人に安全に船釣りやクルージングを楽しんでいただけるよう、今回は基本に立ち返って船についてお話ししたいと思います。

 最初は船舶全体についての話から。
 当たり前のことだと思いますが、船舶は水上に浮いて航行しています。
 水には摩擦が発生しないので、風や潮流などの外力の影響を大きく受けます。「まっすぐ航行しているつもりでも実際は予定したルートから大きく外れている」なんてことも多々あります。
 また、船には車のようなブレーキが存在しません。
 なので車のように、「危ない!ぶつかる!」となった際に急ブレーキで事故をギリギリ回避することができないのです。
 ここで、「でも、船も後進できるから全速力で後進させれば回避できるんじゃないか?」という疑問がきっと出てきたと思います。
 実際に、緊急回避の操船方法として、エンジンを前進状態から後進状態にする「クラッシュアスターン」と呼ばれる方法があります。
 しかし、クラッシュアスターンはエンジンやプロペラに負荷がかかるため故障や寿命減の原因になるためあまり推奨されません。
 さらに前述したように船に摩擦力がないため、一気に後進させたとしても船は直ぐには止まりません。停止するまで進む距離は船のサイズや形にもよりますが、小型船舶でも十数m~数百m、大型船舶になると数㎞を要します。
 つまり、水上では「危ない!ぶつかる!」となってしまったら手遅れなケースがほとんどです。船を操船するときは周囲の状況の把握=見張りが非常に重要になります。
 見張りの重要度は、船の事故の統計からもわかります。
 内閣府の調査でも、船舶の事故原因別割合で「見張り不十分」が不可抗力等とほぼ同数の事故原因となっていました。

事故原因種別  
※令和4年交通安全白書(全文)をもとにエイトノット作成

 他にも、機器取扱不良、機器整備不良や操船不適切なども事故原因とされています。これらの事故原因は、人間のミスが起因となって発生する事故(ヒューマンエラー)であり、事故のうち7割以上がヒューマンエラーによるものだとされています。
 摩擦やブレーキの無い船の世界では、見落としやちょっとした操船ミスが事故に直結するので安全意識を高く持って航行しなければいけませんね。
 さらに、視点を事故の原因から船舶の種類に変えて見てみましょう。
 船舶種類別の事故割合を見てみると、なんと小型船舶の事故割合は7割以上もあるのです。

小型船舶の事故割合 
※海上保安庁統計資料「海難の現況と対策について」をもとにエイトノット作成

 我々エイトノットは、こうしたヒューマンエラーによる小型船舶の事故を少しでも多く減らすための手段として、自律航行技術の開発に取り組んでいます。

 さてここからはそんな小型船舶についてのお話です。
 実は、小型船舶は国内船舶隻数のうちのほとんどを占めるとされています。

国内船舶隻数 
※JCIの在籍船情報と日本海事広報協会「日本の海運 SHIPPING NOW」をもとにエイトノット作成

 では実際のところ、小型船舶とはどういった船なのでしょうか?
 小型船舶には「総トン数20トン未満の船」という定義があります。
 「総トン数」と聞くと船の重さを想像するかもしれませんが、実際は「重さ」ではなく「容積」を表す指標なのです。(トン数については、種類もいくつかあってお話しすると長くなるので今回は割愛します。またどこかの機会で船のトン数についてもお話ししたいと思います!)
 言い換えると、小型船舶とは「総容積が20トン未満の船」になります。
 この定義は、原則の定義であって、20トン以上の船舶も小型船舶に扱われることもあります。
その条件として、
 1. 一人で操縦を行う構造であるもの
 2. 長さが24メートル未満であるもの
 3. スポーツ又はレクリエーションのみに用いられるもの(漁船や旅客船等の業務に用いられないもの)
上記の3つの要素をすべて満たす必要があります。
 
 さて、小型船舶の定義に少し触れたところで次はエンジンに注目しましょう。
 小型船舶を動かすためには、エンジンが不可欠です。エンジンの種類によって特徴や主な使用船舶も変わります。

 小型船舶のエンジンの種類は、大きく分けて以下の種類があります。
1.船外機
 
船外機は、船の外側にエンジンを取り付ける形式のものです。主に小型のボートで一般的に使用されており、弊社の過去のnote記事に登場した「Eight Knot Ⅰ」や「WAKKA」も船外機を搭載しています!
 船外機は、エンジン自体が動きプロペラの向きを変えることで操船します。エンジンが外側に露出されているのでメンテナンスがしやすい、船内にスペースを確保する必要がないので空間を有効活用できるといった利点があります。

2.船内機
 
船内機は、船内の中央辺りにエンジンが搭載され、そこからシャフトと呼ばれる軸が船外に出されたプロペラに回転を伝えます。船内にエンジンを置くスペースを確保する必要があるため、主に小型船舶の中でも大きい船舶に搭載されています。
 船内機は、プロペラの先に舵板を取り付け、舵板の向きによって操船します。エンジンは船内にあるため、海水などの外部要素からの保護ができるのでエンジンの寿命も長いです。また、船内中央付近にエンジンが搭載されるため、停止安定性など船の操作性能が高いという利点もあります。

3.船内外機
 
船内外機は、船内の最後尾にエンジン部分が格納され、船外にはプロペラや駆動部分が露出されます。エンジンの大きさは船内機よりやや小さめですが、船内機と同様に船内にエンジンを置くスペースの確保が必要です。
 船内外機の操向は、船外機と同様にプロペラの向きによるため、舵板は不要です。船の後方に重心が来るため、航行時の安定性が高いことや船上からのメンテナンスがしやすいといった利点があり、船外機と船内機の中間的な存在です。

 最後に、小型船舶の主な用途のお話をしたいと思います。
 隻数の多い小型船舶には船型もさまざまであり、それによって使用用途の種類も豊富です。
 小型船舶の代表的な使用例をいかに挙げていきます。
1.プレジャーボート
 
小型船舶の代名詞といえば、やはりプレジャーボートではないでしょうか。
 プレジャーボートにはスポーツやレクリエーションに用いられるヨットやモーターボートが該当します。
 世界中で親しまれており、4m程度のものから20mを超えるものまで、サイズもさまざまで、定員数もサイズによって変わりますがだいたいが10名くらいです。友人や家族と楽しむにはちょうど良いサイズではないでしょうか。
 プレジャーボートをレンタルして利用できるサービスもあるので、ぜひご体験してみてください!

2.旅客船
 
旅客船では19トンクラスのものが一般的に使用されています。
 港から港へ、観光客や住民の方を運ぶ交通インフラの1つです。多くの人を載せることができるように客室部分が広く確保されており、数十名もの定員数を確保した船もあります。
 旅客船はお客様の安全を何よりも重視されます。高い安全性を確保するために、船の運航や、船長に求める条件等を厳しく定めています。近年では、こうした資格・技術を持った船員の方が減少傾向にあり、それによって航路の減便や廃止などが課題視され、一刻も早い解決が必要となっています。

3.漁船
 
漁船は、その名の通り漁を行うことを目的とした船です。
 漁のために用いられるので、船体には網を引き揚げるクレーンや巻き取るためのウィンチと呼ばれる機械が搭載されています。漁獲を狙う魚の種類や地域によって、漁の方法・使用する機械もさまざまで、それによって船の形も豊富にあります。
 漁業に関連して、養殖業や遊漁においても小型船舶は使用されています。小型船舶は、水産業全体で欠かせない存在となっているのです。

4.作業船
 
最後は作業船です。
 作業船は特に港湾内で多く見られる船で、タグボートやプッシャーバージと呼ばれる船などが存在します。
 タグボートは、大型船の入出港時に押し/引きによって着岸の補助、港湾内のエスコートや警戒等を行っています。港町で、タイヤをたくさんつけた船を見かけたことはありませんか?
 プッシャーバージは、艀(はしけ)のような台船(バージ)を押して航行します。バージと連結して押しているときは大型船舶くらいのサイズに見られますが、プッシャーボート自体は小型船舶範囲内の19tに収まっている船もあります。
 作業船は港の中で多く見られますが、港から出て沖合での作業に向かうこともある船業界の万事屋のような存在です。

 
 今回は、基本に立ち返り船についてと小型船舶についてのお話でした。
 今後さらに弊社の導入事例が増え、新たな船種への導入が成った際に導入した船がどんなものなのか等の参考にしていただければと思います!
 
 次回更新もお楽しみに!

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