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毎日、一番いい服を着るということ

母が教えてくれたこと。
いい服、好きな服は大事にお出かけに取っておかずに
毎日一番好きな服を着なさいね、ということだった。
今日が最後の日になるかも知れないから、と
少し切ない話しでもあるのだが。

今から26年くらい前、阪神淡路大震災があった。
毎朝何度も近くの川に水を汲みに行った。
そんな時でも、母は「一番いい服を着なさい」と言った。
母は大正10年生まれで、戦争経験者だ。
戦火の中、赤ちゃんを守りながら逃げたという話を何度も聞いた。
「戦争は絶対にあかん」と何度も何度も聞いた。

余震の中、少し陽の光が出てきた頃、家じゅう物が飛び散っている片づけの前
倒れた冷蔵庫から昨晩に食べた「キャベツ畑」というケーキの残りを
両親と三人でガラクタの中で食べた。
「次、いつ食べれるか分からへんから。何でも口に入れておかなあかん。」

少し食べてから、パジャマから洋服に着替える時、
「一番いい服着なさい、逃げなあかんかも知れへんからね」
ちょうど、数日前に購入したばかりのセーターを着た。
持ち出し袋を作りながら、よそ行きのいで立ちだった。

戦争経験者は肝が据わっていて、強い。
言われるように従った。

その母も特養に入所した今、
10年間の自宅介護で生活が終わり、生活の仕方を忘れてしまそうになっていた。
まず、食事が貧相になって、作る気も失せてしまった。
食材を買っても、最後まで使うまでに腐ってしまいそうだし。
洋服は部屋着で、YouTubeで音楽を聴いたり、旅行の案内を見たり・・・
他はゲームで悩む時間を紛らしていた。

そんなこんなで、最近母の言葉を思い出した。
「一番いい服着なさい」
そうだ、部屋で寒かったからシルクのスカーフを首に巻いた。
驚きなんだけど、これこれ!と気持ちが明るくなった。
最近は部屋着ばかりで、ポストに行くのもこのままだった。

お金に余裕が無くて、お手軽値段の洋服ばかり
おまけに体重が15㎏以上太ったから、合う服が無い。
なので、洋服というより
手編みソックスとシルクのスカーフで、心地いい今日の洋服にした。

洋服が似合う体形になりた~い!(^^)!
少し心が前向きになった。





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