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人の間にあるもの

 人類の歴史には、いつの世でも『環境保護、動物愛護』がサイドラインを走っている。表向きは、それらにも気を遣いつつ、より良い生活の謳歌を目的に進歩発展してきた。そうした状況の中、昨今ニュージーランドのワンガヌイ川には法的な人格が認められたり、インドのガンジス川にも『人権』が認められたりしている。エクアドルは憲法で、自然には「完全に尊重される権利」があると定めてまでいる。相変わらず人は“万物の霊長”のような振る舞いをしているが、これらのニュースはファクトフルネス的に言わせれば「世界は少しずつ良くなってきている」ということなのだと感じる。
 万物の霊長……人を表す言葉としてこれほど“おこがましい”表現を私は他に知らない。 人は、地球の陸地に生きる哺乳類の1種であり、他の動物たちと同様、食事をすることによって栄養を摂取し、排泄をし、日々を生きている。動物の霊長でもなければ、植物の霊長でもない。鉱物の霊長でもなければ 万物の霊鳥でもないはずだ。それを『人権』というものが問題をややこしくさせている。人権は人にとってなくてはならないもので守らなくてはならない。侵害されれば、なるべく感情的にならずに話し合い対処したいものだ。しかし人ではないものには人権がない。おかげでこの有様である。早くから人権のような権利を得た稀有な例は会社である。『法人格』を得たおかげもあってか、日本人は会社という箱に“さん”を付けたがる。「この度は〇〇さん(相手の会社名)にお力添えいただきありがとうございます。うちの〇〇(自社の担当者名)も感謝しておりました」といった具合だ(驚くべきことに、なんと他社の人に自社の人を呼ぶ際は呼び捨てにする伝統が常識として受け継がれている)。それはともかく、何を言いたかったかというと、人と法人以外にも人権のような権利・格が与えられたらいいのになということであり、成し遂げられれば人類は進歩どころか、大きな飛躍を遂げることができるのだ。
『生物権革新』
 これが必要である。ただ、これまでは難しかった。人は肉を食べるし娯楽も追求する。それらを満たして豊かな生活を送り続けるには、どうしても多少の犠牲が必要不可欠だったからだ。そのために牛や鶏に代表される産業動物は、家畜になったおかげで地球上稀に見ぬ「種の増加」を果たせているが、地球上類を見ないほど無惨な生き方と死に方を繰り返している。また犬や猫に代表される愛玩動物は、ある意味では行き届いた暮らしをしているが、ある意味ではとても残酷な暮らしを強いられている。他にもマウスをはじめとする実験動物は、万物の霊長のために権利もへったくれもない世界で生きている、いや活かされている。あとは動物園などにいる展示動物で、彼らは災害時に置いてけぼりにされる運命にある。レオやシンバ、アレックスやペンギンズであれば自力でなんとかしてのけられそうだが、他は中々うまく運びそうにない。最後に野生動物も忘れてはならない。流行りの言葉で「みなさん、害獣もジビエにすれば美味しいんです!」と叫ぶ、6次産業化を目指す1次産業従事者と魅力を感じる都会の方々が多く、それはそれでいいのだが、彼らを害呼ばわりするきっかけになったのは乱開発などの人の影響によるところが大きいわけだから、もっと負のエコシステムが形成されていることに目を向けてもいいのかなと思う。もちろん、何事にも例外はあるので一概には言えない(ここは念を押しておきたい)。だがこれからは違う。いぬ権やねこ権、ねずみ権、うし権並びにサーモン権などが認可されていっても、人が満たされた生活を送れるようになりつつあるのだ、高度に発達したテクノロジーのおかげで。
食肉は認知機能の備わった動物から培養肉に代わっていく。ペットはその権利が守られることにより、真に人との共存関係を構築していけるだろう。実験に使用される命は量子コンピュータがあっさりと実験を終えてくれるし、動物園に行かずとも8Kが、かつてのアナログ放送並みに低画質に感じるほどのXR技術が役割を担ってくれるはずだ。これらの技術によって負のエコシステム、負のサークル・オブ・ライフからの脱却から、ようやくおさらばできる日が近づいて来ている。
 実はこの思想にとっくにたどり着いた人がいた、仏教の開祖、お釈迦さまだ。今、世界で仏教が見直されてきているのも良い潮流なのかもしれない。また、世界各地で淘汰されてきた神道(されてないものもある。代表的なのは日本神道)も自然に神が宿っているケースがほとんどだから先んじていたといえる。経済と強欲の名の下に、ある意味で退化してしまった人類は、経済か〇〇かの二元論からの脱却をそろそろはかり、第3の目か何かわからないがパッチリと開いて見てほしい。数十年後はそうなっていると思う。でも今の人類の多くはこう言うと思う。
「だって儲からないよ」
 かくして世界は。

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