虹と雫
窓に張り付いた水滴がキラキラと輝き出したお昼頃、ふと、外を見ると、双子の虹が出ていた。
外に走り出したい気持ちをぐっと堪えて、私は窓辺に寄り添う。
今日は朝から熱が出ていて、学校を休んでしまった。
今頃、クラスのみんなが窓側に集まって、綺麗な虹を共有しているんだろうな。
そう思うと何だか寂しくなってきた。
私は雫。病弱なのか、すぐ熱が出る体質で、気持ちは元気だけど、高熱だからと学校を休むことが多い。
友だちはそれなりにいるし、家で退屈しているよりは学校に行った方が楽しいに決まってる。
今日の給食は何だろう?と考えたところで、お腹が鳴った。そっか、まだお昼ご飯食べてないや。
リビングに行くと母がお昼ご飯の支度をしていた。
「調子はどう?熱、測ってみなさい」
体温計を渡されて素直に計るけど、心の中では呆れてる。熱があってもなくても、私は元気なの!
ピピピ...と体温計が鳴った。
「まだ38.0℃あるじゃない...。ご飯食べたらお薬飲んで、ちゃんと寝ておくのよ」
ご飯を食べ終わるとまた退屈な時間が始まるのか~と、やや憂うつになる。
「お母さん。私、ちょっとだけ外に出て、虹が見たい」
怒られるのを覚悟して聞いてみた。
「あら?虹が出ているのね。でも、まだ雨はパラついてるから、ちゃんと傘して、家の前までよ」
虹のワードに母が、窓の外を見る。
「あら珍しい。虹がふたつ。明日は雫も熱が下がるかしらね」
そんなにお目にかかれない虹となると、母もいい歳してテンションがあがる。
しかも、今出ている虹は2本だ。
それだけで、特別な日になった気がするから不思議だ。
淡い水色の傘を差して、淡い水色の長靴を履いて外に出る。
春だけど、まだ寒い。
また熱が上がるのは嫌なので、少しだけ、雨の中の虹を見てから家に入ると、母が暖かいココアを入れてくれていた。
ベッドに入る前にカーテンを全開にして、窓に滴る雨の雫と遠くに見える虹を確認した。
布団にくるまって、少し冷えたからだが温まるとフワフワと眠気が襲ってきた。「ココア効果かな」なんて呟いてみる。応えるように、母のドヤ顔を想像してふふと笑い、眠りについた。
Fin
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