アポイントメント魔王
「なんだこれは……一体何なんだ……」
大国「マルレイオス」の王であるイルマ王は頭を悩ませていた。
立派な羊皮紙の手紙の封蝋には王冠に羽帽子めいてコウモリの片羽がついたメダリオンがあしらわれている。
「王よ……これは……」
「大臣、読め。今一度だ。」
大臣がしどろもどろになりながら手紙の内容を再度読み上げる
「し、親愛なるイルマ王へ……」
親愛なるイルマ王へ。
私はあなたを存じております。
だが全てではない。
あなたも私を存じているでしょう。
だが全てではない。
そこでお互いの理解を深めるため、来年の春に会談をお願いしたい。
詳しい内容を伝えるために私は少しの供を連れ、
あなたの国へと旅に出る。人類に害することはしないが抵抗はするのでそのつもりで。
何もしないが、何かをすれば抵抗はする。
大事なことであるから二度伝える。
魔王 アンリミット
PS アンミツと呼んでくれてもいい。
「魔王アンリミット……!!」
数多くのモンスターを率いる魔王アンリミット。その力は強大であるという。あくまでも仮定なのはその実力が全くわかっていないのだ。
調査に送り出した者たちが誰一人帰ってこなかったのもある。
「大臣よ、魔王暗殺のための勇者を募るぞ」
「会談をふいにするつもりですか?後が恐ろしくなるのでは……」
「魔王はおそらくアレのことを言及してくるはずだ。」
イルマ王は冷静かつ無感情な声で伝える。
「この世界は人類のものだ。軍備が整うまでの時間稼ぎだ。」
大臣は頭を下げ部屋をあとにする。
廊下まで出た彼は憂鬱な表情で数十分前の光景を思い出す。手紙の差出人のことだ。
小型の飛竜に乗った、農夫のような格好の青年、
屈託のない笑みで玉座めがけ投げ渡していった。
「どうぞよろしく!王様!」
その者の指には金細工の指輪に王冠とコウモリの片羽のメダリオンがあった。
「ふむ……脱帽ですな」
大臣は気を取り直し歩を早めた。
【続く】
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