映画「ユージュアル・サスペクツ」が良かった

YouTubeの「映画のアドリブシーンまとめ」みたいな動画で出てきたので、観てみようと思った。

舞台はアメリカ。埠頭で船が一隻炎上し、多数の死者を出した事件が発生。どうやらギャングの抗争らしい。そして凄腕詐欺師が、その事件で死んでいるかもしれない。その詐欺師を長年追ってきた刑事としては、奴が死んでいたとしたら重大ニュースだ。
真相を突き止めるために、オドオドした気弱な詐欺師「ヴァーバル」が取り調べを受けることに。
「ヴァーバル」の証言として語られる物語は6日前、強盗事件の容疑者として前科者5人が集められた日に遡る……。


こういうサスペンス映画のツラいところは、リアタイがかなり重要になるところ。
犯罪や叙述トリック、脚本の構成など、特にサスペンスものは「この作品に影響を受けて、次世代の作品が作られる」ということが多い。ほんの10年前の作品であっても、今観てしまうと「ああ、この仕掛け、最近のテレビドラマでやってたよ」と推理できてしまう。「仕掛け」を開発したのは確かに旧世代のコンテンツなのだが、しかし視聴者のこちらはその後の進化系まで観ているので、過去の作品に100%度肝を抜かれることができない。

30年前に作られた「ユージュアル・サスペクツ」も、その意味では、わりと序盤に「こういうことなんじゃないの?」という犯人予想はできてしまう。

しかしこの映画はそれだけで良さを奪われる作品ではない。ただただ結末の予想を楽しむだけの映画ではない。

ラスト15分の展開、演出、俳優の演技力、画面から溢れ出てくるそのパワー。一つひとつの思わせぶりなセリフがここで収斂し、全てが結びつき、観客の観ている世界をガラリと変えてしまう。

…と言うと未観の方に予想を立てやすくしてしまうのかもしれないが、例え「予想通り」の結末だったとしても、それでも美しいこのラストシーンへの流れに身を任せる快感はぜひ味わってほしい。
まるで音楽のようであり、川下りのようであり、風に吹かれる紙切れのようでもある。

最後はまるでオペラのラストシーンだった。

こんな終わり方をする映画は今どきなかなか観られないので、なんというか、この時代の「骨太」な感じにグッときてしまう。
スカしたり逆張りしたり冷笑したりする必要がなく、ストレートに「芸術」を見せつけることのできたこの時代の強さとでも言おうか。

話がよく分からなくてもいいから、ラスト15分のためにこの映画を観てほしい。
いや、いっそ観なくていい。あなたが観ようが観まいが私には一一才関係ないので、ぜんぜん観なくていい。私があと5回観るから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?