孔雀

よく眠る大学生です

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最近の記事

嘘日記 9月17日(神輿とhip hop)

1人暮らしを始めてはや8ヵ月である。ところで我が家は少し特殊な形をしていて、私はとある戸建ての一階部分に住んでいるのだが、大家さんの車が停めてあるガレージの奥にインターホン付きの扉がある。これはつまり、行ってきますと言って自宅を出ると、目の前に大家さんの自家用車が現れ、その脇をぶつからないように気を付けて通り抜けることで、はじめて家の前の通りに出られるということである。 その日は三連休の中日で、何も予定が無かった私は11時ごろに起きて、今日は何をしようかと考え始めていた。「

    • 嘘日記 3月12日 (ホットケーキ)

      基本的に池袋という街は嫌いなのだが、4年も暮らしているとそれなりに好きな場所も見つかる。その一つが池袋タカセコーヒーラウンジである。東口にあるタカセセントラルビルは大正9年から池袋を見つめる歴史あるビルで、現在はフロアによってメニューが異なっている。1階がパン・洋菓子コーナー、2階が喫茶室、3階がレストランとなっており、その上には眼科やコンタクトショップ、献血ルームなどが続くのだが、そんなビルの9階にひっそりと佇むのがタカセコーヒーラウンジだ。 古いエレベーターを降りると、

      • 嘘日記 8月7日(蜘蛛の生存戦略)

        二匹の蜘蛛と暮らしている。名前はまだない。なんせ入れ替わりが激しいし、昨日いないと思ったら今日は三匹だったりするものだから、ちゃんとメンバーを把握できていない。しかし最近は二匹で落ち着いている。自分の部屋が「とっておきの場所があるんだよ」とでも紹介されていたらいいなと思う反面、蜘蛛にとっての良い場所の定義が”天敵から身を隠せる”ならまだしも、”エサに事欠かない”だった場合自分の部屋の衛生状態は最悪な気がするが、そこはまぁ一旦目を瞑ろう。蜘蛛と一緒に暮らす中で自然と彼らについて

        • 嘘日記 6月3日 (雨宿りとアイス)

          母校に用事があって、久しぶりに地元に帰った。最寄駅から母校まで歩くと30分ほどかかる。長すぎるその一本道はとても平凡で退屈で、そんな道を歩くのが僕は好きだった。思い出は道に焼き付くというが、本当にその通りで、僕の場合幼稚園から高校までずっと自転車圏内だったこともあって、ほとんどの思い出がこの道に集約されていると言っても過言ではなかった。初めてのおつかいをしたパン屋さんから好きな人と通った中華屋まで、すべての店がこの道にはあった。懐かしい思い出に浸っていると不意に風が冷たくなっ

        嘘日記 9月17日(神輿とhip hop)

          噓日記 4月25日 (月曜日の黒猫)

          今日が月曜日だという信じ難い事実から目を背け、昼過ぎまですやすや眠っていた僕はコツコツと窓をたたく音で目を覚ます。時計を見ると14時を少しばかり過ぎたところだった。コツコツがゴンゴンという鈍い音に変わったためカーテンを開けると、窓の外には真っ黒な猫が一匹、つぶらな瞳をこれでもかというほど見開いてこちらを見ていた。『これだから人間は』とでも言いたげな表情の猫を前に、僕が人間代表では世の人間の皆様に失礼だなと思いながら窓を開ける。ずかずかと入ってきた猫は部屋の中でも何かぶつくさ言

          噓日記 4月25日 (月曜日の黒猫)

          嘘日記 1月19日 (コインランドリー)

          午前10時。久しぶりに布団を洗濯するため、近くのコインランドリーへ向かう。乾燥までしてくれる洗濯機に敬意を表しながら重い扉を開くと、ドラム式の丸い洗濯槽の中に一匹の猫。こんにちは、と挨拶すると彼はこちらを気にする様子もなく、眠たそうな表情で身体全体をむぎゅっと伸ばした。僕としては早く洗濯を開始したかった訳だが、無視して洗濯物を投げ入れるわけにもいかないのでもう少し話しを続ける。ここで生活されているんですか?彼はこちらを一瞥し、そうだよと答える。狭くないんですか?十分だよ。お前

          嘘日記 1月19日 (コインランドリー)

          「あなたの特技を教えて下さい」

          「では次に、あなたの特技について1分間で教えて下さい」面接官は言った。 彼は答えた。 「はい、私の特技は嘘をつくことです。私は嘘のプロフェッショナルと言っても過言ではありません。嘘に必要なもの、それは演技力です。本当のことを言っていると思わせる表情や声の調子はもちろんのこと、熱量に付随する顔の赤らみや手の震え、さらには程よいエピソードや具体例など話の内容に至るまで全て、その場に応じて一瞬で作り込みます。大学院では脳科学と言語学の分野から、脳と言葉のつながりを踏まえて人間の

          「あなたの特技を教えて下さい」

          寿命

          「計画的陳腐化」という言葉をご存知だろうか。「意図的な老朽化」とも呼ばれている。拡大し続ける資本主義社会の中で戦争や恐慌を避けながら、膨大な雇用を確保し市場を動かし続けるために採られている考え方だ。このシステムは私たちのごく身近にひっそりと、しかしはっきりとした影響力を持って存在している。例えばあなたの家の電球について考えてみてほしい。点滅したり切れたりすると私たちは「あぁ、もう寿命か」と思って新しいものを電気屋さんに買いに行く。しかしその電球の寿命は本当の「寿命」なのだろう