景山八十八 (かげやま やそはち)

書き物始めました。SF、ファンタジーあたりが好物。逆噴射小説大賞2024参加中。

景山八十八 (かげやま やそはち)

書き物始めました。SF、ファンタジーあたりが好物。逆噴射小説大賞2024参加中。

最近の記事

逆噴射小説大賞2024ライナーノーツ

 世界が HALLOWEEN に浮かれる中、MEXICO の荒野では CORONA を巡る過酷な戦い、逆噴射小説大賞2024 が開催されました。  今回はなんと、330 を超える弾丸が油断ならぬパルプスリンガーたちから放たれました。  本記事では、景山の撃った 2 発についてのライナーノーツを記します。 1. グレート・ウォール興亡記 IV: ヴォイドの渚 蛮族 × スペースオペラ。生贄ヒャッハー系の BANZOKU が宇宙戦艦でワープしてカチコミをかける。ワープは科学だけ

    • 時計台の猟犬

       一呼吸の間に、三人斃れた。金にがめついが腕は確かな傭兵が、である。  襲撃者は二人。  若い方は早撃ち。ありふれた旅装の下から抜き放った巨大な拳銃は、明らかに異邦の拵えであった。それを、ほとんど一発にしか聞こえない速さで二連発した。  歳の行った方は、銃弾に劣らぬ速度で踏み込んだ。かつては星空の濃紺であったことを偲ばせる、夜明け前のように色褪せた外套を翻す。腰に佩くのは、未知の様式の緩く反った片刃剣。銀より暗く、鉄より明るい刀身が傭兵の一人を切り裂いたのは、二発の弾丸が残る

      • グレート・ウォール興亡記 IV: ヴォイドの渚

         生贄を満載した小型艇が、星間空間を先行する。  艦隊は、その後方半光秒ほどで慣性航行を続けている。私は、艦橋に投影される念写像としてこの光景を見ていた。  艦橋の祭壇で、司祭たちが呪文を唱える。私は顔をしかめずにいられただろうか。  小型艇が、内側から燃えた。燔祭である。  生贄にされた***人 (発音不能) の悲鳴が、宇宙空間を渡って伝わる。悲鳴とは本来、音ではないのだ。蛮族たちの儀式は、呪術の基礎に忠実だった。  空気もなく燃える炎を見るうちに、わたしは己の立場に皮肉を

        • 怪奇・雲中艦現る

           一隻の貨物船が、シイワ諸島を航行している。  上下左右に散らばる無数の小島の合間をおっかなびっくり進むさまは、群れからはぐれた老齢のクモヰアシゲクジラのようだった。  事実、その船、エスペランザ号は老いていた。船体には錆が浮き、四基の浮遊機関のうち二基は故障している。  老骨に鞭打つように、甲板にはコンテナが満載されている。眼下の雲海に落ちた影は、奇妙にねじくれた魔の城のようだった。  ――急げ、急げ!  船長を焦らしめるのは、予定より伸びない船足ばかりではない。  空賊で

          天不動説

           太古の昔、昼と夜とは巡るものであった――  旅人は、古い伝承を思い起こした。そんなおとぎ話に心を躍らせたころが、己にも確かにあった。なんと平和な時代だったことか。  不意に感傷に囚われ、旅人は足を止めた。〈昼〉の国、小高い丘でのことだった。  天頂には、巨大な太陽。この空で唯一の天体だ。故郷の影は、〈夜〉の姿はどこにもない。  感傷、哀愁、そうしたものを、旅人は抱かぬようにしてきたはずだった。しかし、抑えきれぬものがある。  長い旅路が、ついに果てるのだ。  地平線上に目を