一隻の貨物船が、シイワ諸島を航行している。 上下左右に散らばる無数の小島の合間をおっかなびっくり進むさまは、群れからはぐれた老齢のクモヰアシゲクジラのようだった。 事実、その船、エスペランザ号は老いていた。船体には錆が浮き、四基の浮遊機関のうち二基は故障している。 老骨に鞭打つように、甲板にはコンテナが満載されている。眼下の雲海に落ちた影は、奇妙にねじくれた魔の城のようだった。 ――急げ、急げ! 船長を焦らしめるのは、予定より伸びない船足ばかりではない。 空賊で
太古の昔、昼と夜とは巡るものであった―― 旅人は、古い伝承を思い起こした。そんなおとぎ話に心を躍らせたころが、己にも確かにあった。なんと平和な時代だったことか。 不意に感傷に囚われ、旅人は足を止めた。〈昼〉の国、小高い丘でのことだった。 天頂には、巨大な太陽。この空で唯一の天体だ。故郷の影は、〈夜〉の姿はどこにもない。 感傷、哀愁、そうしたものを、旅人は抱かぬようにしてきたはずだった。しかし、抑えきれぬものがある。 長い旅路が、ついに果てるのだ。 地平線上に目を