シティポップまだ流行ってる?

昨日のNHKの番組、町田啓太と橋本マナミが持ち込み漫画家と編集者というテイで、新しい事象について説明する番組を見たのだが、その内容が「今流行りのシティポップとは」だった。
シティポップってまだ流行ってるの?とまず思った。数年前からじわーっと話題になってたし、数ヶ月前にもアサイチでやってたし、NHKが取り上げるってことはもう古くね?と反射してしまったんだけど、番組のないようなさすがにそうでもなかった。
少し前に興味あって(ネットでだけなんですけど)調べてたらシティポップについては大体同じようなことが書かれてて、それは松原みきがとか、プラスティック・ラブがとか、そんなとこなんだけど、批判的というか距離を取って書いてる人は少なくて、むしろ愛着があるような賞賛したそうな書きぶりで、これでは真に受けることはできんなあと思って読んでいたが、NHKのはだいぶ距離を取っていた。シティポップ現象の起源と更にその前が取り上げられていた。それはネットの記事には書かれてなかった類のことで、勉強になるなあと思いながら見ていた。
2000年代くらいの日本のDJが日本の少し古い曲をディグって、それがアメリカのDJにもウケて、アメリカで似たような音楽性の流行があって、You Tubeのアルゴリズムで竹内まりやがおすすめされて、という流れだった。なんと松原みきは名前が出なかった。
演者で名前が出たのは竹内まりや、山下達郎、はっぴいえんど、くらいだったかな。シュガー・ベイブもあったけども。番組の趣旨が「いまどう流行ってるか」ではなく、「流行ったものの源流は何か」となればまああれでおかしくないが。
説明してるサイトでも大体がどうしてもはっぴいえんどを始祖にしてて、それは事実と史觀が混ざってるのではないかと思った。はっぴいえんどのメンバーがその後どう活躍したかではなく、その音楽を語れよと。ロンバケとYMOが有名だからってその二つは海外のシティポップ現象からは外されてますから。高評価したい気持ちは一緒だが、日本語のロックははっぴいえんどからいきなり始まったわけじゃないだろうと。ロカビリーとGSとジャックスがあるだろうと。
という話は置いといて、音楽性としてはシュガー・ベイブに始まる山下達郎の音楽がシティポップなんだろうと思う(はっぴいえんど史觀では)。ソングスはナイアガラレーベルから出てるけどその他はシティポップじゃないし、細野晴臣はフォークロックからトロピカルを経てテクノに行くし、ロンバケもイーチタイムもシティポップ扱いされてないし。
意外にもCharとか寺尾聰がシティポップ扱いで、あれって歌謠曲だったんじゃないんですか?と思ってしまうが、その反射的疑問がどれだけ元の疑問に対して正しい答えを導ける疑問であるかを検証するのが必要ではなかろうか。歌謠曲って何、シティポップという言葉のの初出はどこ、ジャンルとは何、シティポップの特徴は何、などなど。
ネットで読んでたときに面白かったのは、①ロカビリーもGSも歌謠曲に吸収されたが、はっぴいえんどは吸収されなかったというようなこと。歌謠曲に吸収されるということは、売れるレコードを作らされたということで、購買層とか配給会社とかがあったんでしょうね。で、はっぴいえんどとシュガー・ベイブは売れなかったから吸収されなかった(そのあとはっぴいえんどは松田聖子のプロデュースで協力するわけだけど)。②細野晴臣がシティポップの曲を書いていないこと。細野晴臣は70年代終わりから80年代にかけてはYMOの人兼アイドルソングの作曲家先生だったわけで、シティポップらしい曲は関わってない。テクノ歌謡とかはあるけど。今ウケてるシティポップは林哲司関連が多そうな気がする。
となると、今と当時、日本と海外という4事象でみると、けっこう違うシティポップ像が現れてくるんではないかと思う。はっぴいえんど史觀のためにいの一番に「君は天然色」を挙げる日本と(アップルミュージックのプレイリスト)、それまで日本であまり話題にのぼってなかった「真夜中のドア」を挙げるアメリカとでは、見え方が違つてくるだろう。昨日の番組でも字幕の字数制限で切られてしまったがシティポップについて「ディスコ的な曲」みたいなことを海外の人が言っていた。ディスコというと思い当たるのは、そういえば「恋するフォーチュンクッキー」もディスコティックだし、80年代リバイバルだし、だいぶ前に80年代風イラストの「水星」なんて曲もありましたよね、ドラムとベース大きめなところにストリングスが入ってコードがセブンスとかになるとシティ感なんかな。なんて思ったあたりでわからなくなった。
ちなみになんですが、シティポップという名前にも関わらずリゾート感がついてくるのは大滝詠一のロンバケのせいで、それは永井博のイラストの強さでしょうね。あとシティポップのシティで言及される「風街ろまん」ももとは松本隆は「風都市」って言葉をつかいたかったのに事務所の名前に使われたからあとから考えた言葉であることと、「ゆでめん」のときに録音された「風をあつめて」の初期バージョンの「手紙」の歌詞では「風をあつめて/おふくろの手紙を読む」って書かれてるんですよ。おふくろってシティ感ないよね。
といったわけで興味のあるシティポップは、もう少し流行ってもうちょっと學問的にしっかりした解説が出ることを希求します。カヌレはだらだらと流行ったふうで消えていくでしょうが、シティポップは歴史でもあるので現象を捕まえたらおもしろいものになりそうですね。

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