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能力者

俺の能力はテレポート。半径100メートル以内の場所であればどこでも瞬間移動することができる。

こんな能力を持っているがゆえ、俺は孤独だ。
仲間を求めてこの町に来たはいいが、なんだかこの町………能力者の匂いがプンプンするぜ!

そんな中出会ったのが、町でフルーツを売っていたとある青年。
コイツは特に怪しくて、目の奥に「何か」が眠っているような気がした。

そこで僕は、町の喫茶店で青年と落ち合うことにしたんだ。






あの男、やけに遅いな…もう集合時間を5分過ぎているじゃないか。
まさか悪い能力者に…いやそんなはずはない。
小説でも読んで待つとするか…

なんだ?電話か?

もしもし、私だ。え?あと10分位でつく?

そ、そうか…わかった。


それだけのことなら、LINEで伝えてくれればいいじゃないか。

わざわざ電話で伝えてくるなんて、妙だな…

しかしもうすぐコーヒーもなくなってしまいそうだ。

次は何を頼もうか…

何っ!?また電話だ…

もしもし、私だ…ええっ!?私の容姿を忘れてしまったから服装を教えて欲しい!?

今の私は…茶色いジャケットを羽織っているが…

なぜそれを遅刻することがわかってから聞くのだ!?



おかしい…何かがおかしいぞ、コイツ…



あっ、到着したか、おーい!私はここだ。

っておい、どこに行くんだお前!?

ああ、向こうの席に知り合いがいたのか…



そうか…

これで疑いが確信に変わったぜ…

お前は紛れもなく能力者だ。

お前の能力を高らかに叫んでやるぜ!



お前は!人から!時間を奪う能力者だ!!!!!



ギリ怒れないくらいの時間遅刻して、事前に聞いておけばいいことを直前に聞いてきやがる。しかもその全ての連絡は電話!!

知ってるか!?電話って言うのはな、”それまでの人の行動を強制的に中断させる”ツールなんだぜ!

テメーが遅刻したせいで俺の時間は無駄になった。

しかし俺はその時間を小説を読むことで有効に使おうとした。

そこでお前は電話を使い、俺の行動を”遮断”させた!!

おかげでおれは1ページも小説を読み進められなかった!

コーヒーのおかわりを頼むことすらできなかったぜ!

トドメはお前がなんかよくわからない知り合いと話し始めたこと!

人間にとって「知り合いが"知り合いの知り合い"と話し終わるのを待っている時間」ほど意味不明な時間はないのさ!



最高だ…最高の能力じゃないか!

金を奪うのは犯罪だが、時間ならいくら奪っても罪に問われない!

お前と出会えたお祝いに、好きなコーヒーをごちそうしてやるぜ!店員さーん!



っと…つい熱くなってしまったが、今日お前を呼び出したのには理由があるんだ。

なあお前、俺の仲間にならないか?

言い忘れていた。俺は”テレポート”ができるんだ。お前と同じ能力者なんだ。

俺とお前なら、世界を変えることだってできるんじゃないのか?
そうやってフルーツを売りさばいて暮らすだけのしがない毎日から脱出できるんじゃないのか?

まあ、そんなに返事を焦らなくてもいい…


さ、店員が来たぜ。好きなコーヒーを頼むがいい。

……

………

…………

さすが時間を奪う能力者だ…

なぜ遅刻をしてきたくせに注文で迷うことができるんだ…

というか、わざわざ俺が「好きなコーヒーをおごってやる」って言ったんだからその時点で何を頼むかくらい決めておけばいいのに…!

いやそれ以前に、自分の金で買うコーヒーじゃないんだからそんなに選り好む必要だってないのに…!!

俺だけでなく…店員の時間まで奪う気かこいつは…!!

まさかこいつ…奪った時間を養分にして、自分を成長させてるんじゃないか!?!?

危険だ…こいつは仲間にするにはあまりにも危険だ…!!
前言撤回だ!とにかく今は逃げなければ…!

とりあえず、テレポーテーションだーっ!!!!






〜次回予告〜

何!?あのフルーツ売りの青年がついてきたァ!?

厄介ごとに巻き込みやがって、俺はあんたほど暇じゃねえんだよ!
逃げる態度見せてるんだから、もう色々察してついてくんな!

いくらテレポートで逃げ回っても、あいつを相手にしている以上、俺は時間を無駄にし続けてしまうんだ!!

くっそう、あいつの成長が、止まらねェ!!

次回!「大地獄!その質問、ギュッてしたら2秒で言えるだろ!」

来週も、絶対見テレポート!












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