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【CDレビュー】高昌帥 陽が昇るとき(現田茂夫/Osaka Shion Wind Orchestra)

 数ヶ月前から発売を心待ちにしていた高昌帥作曲の『陽が昇るとき』のCDがついに発売されたので、紹介も兼ねてnoteでCDレビューを書こうと思います!

CD基本情報

◆タイトル
陽が昇るとき

◆発売日
2024年7月31日

◆収録曲
1-4.吹奏楽のための風景詩「陽が昇るとき」/高昌帥
 Ⅰ.衝動
 Ⅱ.情緒
 Ⅲ.祈り
 Ⅳ.陽光

5-8.交響曲第1番「アークエンジェルズ」/フランコ・チェザリーニ
 Ⅰ.ガブリエル~神の意志を伝える天使
 Ⅱ.ラファエル~魂を導く天使
 Ⅲ.ミカエル~神の御前のプリンス
 Ⅳ.ウリエル~時を司る天使

◆演奏
指揮:現田茂夫
演奏:Osaka Shion Wind Orchestra
(2020年1月23日 ザ・シンフォニーホールにてライブ録音)

CDレビュー

 こちらのCDはOsaka Shion Wind Orchestraの第128回定期演奏会のプログラムをアンコール含め丸々CD化したものになります。

 以下、収録曲について楽章を一部ピックアップして感想などを書いていきます。

吹奏楽のための風景詩「陽が昇るとき」/高昌帥

 正直この曲のためにこのCDを購入したと言っても過言ではないです。笑

 以前、『陽が昇るとき』の楽曲解説のnoteで言及した通り、この作品はアマチュアの楽団による全曲版収録CDは数多くあれど、このCDが出るまではプロによる全曲版収録CDは存在していませんでした。

 第1楽章冒頭の印象的なトランペットの音型は圧力で押し切るような演奏が多いですが、シオンの演奏はそれとは対照的にややトランペットを引かせるような(大袈裟に言うとフォルテピアノとも捉えられるような)他ではあまり聴かないアーティキュレーションで印象的。
 トランペットの後に追って演奏されるトロンボーン、ホルンなどとのバランスを考えての表現でしょうか。個人的にはこんな表現もあるのか、と目から鱗でした。

 リズムが不安定な第2楽章も危なげない演奏で流石です。時間をかけてたっぷりと歌われる第3楽章、クライマックスへ向けて少しつづテンションが高まっていく第4楽章なども圧巻の出来。

 演奏会の前半(そして1曲目)にあたる楽曲だからか、全体的には落ち着いておりまだまだ余力があるような余裕のある雰囲気でした。

 コンクールだとどうしてもこの楽曲は力押しの演奏になる印象なので、これくらい冷静にこの楽曲を演奏できるのは流石プロだなぁという感想。

交響曲第1番「アークエンジェルズ」/フランコ・チェザリーニ

 『陽が昇るとき』だけでも重量級の楽曲なのでお腹いっぱいになるのですが、続けて収録されているのは演奏会の後半に演奏されたチェザリーニ作曲の交響曲第1番「アークエンジェルズ」です。

 この楽曲も実は全曲版の音源に恵まれていない楽曲です。プロのプレイヤーによる全曲版の演奏だとタッド・ウィンド・シンフォニーによるCDがありますが、廃盤扱いとなったいまでは手に入りにくいのが実情です。

タッド・ウィンド・シンフォニーによる交響曲第1番「アークエンジェルズ」が収録されたCD

 第1楽章からバチバチに決まった金管楽器の演奏で素晴らしいです。冒頭の金管楽器による序奏からもの凄いテンションです…!
 演奏会当日は(休憩を挟んでいるとは言え)先ほどの『陽が昇るとき』にこれだけの演奏がされていると思うと驚きです。

 金管楽器の活躍が印象的な楽曲ですが、シオンの木管楽器の音色もここぞと言う所で光ります。第1楽章および第2楽章の中間部で演奏されるイングリッシュホルンや第2楽章冒頭のクラリネットの序奏などが特に印象的です。

 そして特に素晴らしいのはこの曲の第4楽章です。オルガンも加わり壮大な演奏となりますが、大音量でも決して破綻しない演奏でまさに圧巻のクオリティです。この演奏を当日会場で聴いていたら鳥肌ものだったと思います…。

アルピナ・ファンファーレ/フランコ・チェザリーニ

 CDにはアンコールで演奏されたチェザリーニの「アルピナ・ファンファーレ」まで収録されています。

 冒頭で銅羅が鳴り響いてそれに呼応するホルンの堂々としたファンファーレ、このプログラムの最後になぜこれだけ吹けるんだ…ともはや凄すぎて笑ってしまいます。
 スイスのアルプス山脈の風景を感じさせるような雄大な演奏です。

総評

 プロによる全曲版収録のCDが無かったor手に入りにくかった2曲を収録したCDで、コンクールカット版しか聴いたことが無い人やコンクールでこれらの曲をやる人にはマストで聴いてほしいCDだと思いました。

 特に『陽が昇るとき』は数ある全曲版の演奏の中でも抜群のクオリティでこの作品の決定盤ともいえる1枚です。

 コロナ禍でとにかく吹奏楽のCDが発売されない時期がここ数年続いていましたが、オオサカ・シオンは近年定期演奏会のCD販売が続いていて非常に嬉しいです。昨年末に購入したバーンズチクルスのCDも素晴らしいクオリティで何度も繰り返し聴いております。

 そして、この流れでぜひ10月に演奏される第7回京都定期演奏会の録音もCDとしていただきたいです…!天野正道作品も地味にプロによる音源が少ない作品だらけなので、発売されたら確実に買います。笑

 『陽が昇るとき』のCDの購入は冒頭で紹介したシオン公式サイトやタワーレコード、HMVなどのCD販売サイトからどうぞ!

 また、本noteの途中で触れた『陽が昇るとき』の楽曲解説記事も合わせて内容更新しましたので、良かったらこちらもご覧ください。

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