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豹変-④

 さてここから事件のことを書こう。
 2013年春。私は楽しく働いていたはずの会社と揉めに揉めていた。産休を取りたいと申し出たはずなのに、次のシフト後での退職を言い渡されたのである。頭をよぎったのは妊婦への理解の無さのみならず、結婚した社員は皆辞めていた事。「妊娠したら、子どもがいたら、家庭があったらもう使い物にならない」遠まわしに、でもダイレクトに、会社から言い渡されたのがこうだ。産休を取り、復帰したところでこの会社ではやっていけない…すっかり憔悴しきった私は、妊娠6ヶ月まで頑張った末に、退職した。
 最終日を終えた頃、結婚したばかりの旦那は、家に帰ってこなくなっていた。

 連日、何度電話しても出ない。何度も何度も何度もかけ、ようやく出たかと思い帰ってこない理由を問いただせば、その返事は思わぬ言葉だった。 
「仕事で忙しい!」
「なんで疑われなければならないのか」 
「お前なんか好きじゃない、もう別れる」 
 涙と、全身の震えと、混乱しかなかった。 
 翌日、久しぶりに帰宅した旦那は、離婚届を持ってきた。その場でさらさらと自分の欄を記入し、私に突きつけた。
 私が書くのを拒否すると、大声で怒鳴り、印鑑のケースを床に叩きつけた。
  殴られるかと思った。蹴られるかと思った。
 カバンを掴んでアパートを出て車に乗り込み近くのコンビニの駐車場で旦那の母に電話をし一部始終を話した。その後の事はあまり覚えていないが部屋に帰って離婚届にサインをし、旦那はそれを掴んでどこかへ行った。その後自分の母に連絡をしたのだけを記憶している。 

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