枯渇⑤

 最も許せない出来事。それが発覚したのは2月頃。きっかけは、「職業訓練の給付金が入っているかもしれないから、記帳してきて」と渡された夫の通帳を記帳したこと。
 給付金はまだのようだったが、日頃記帳する習慣のない通帳に記録された出入金が多くあり、その中で、目に入ったのは私の弟からの5回に渡る入金。
10万円を5回。合計50万円。
夫は、私の弟に直接連絡を取り、お金を振り込ませていた。
すぐさま夫を問いただすと、
返せと通帳を取り上げてこう言った。
「お前に言うとうるさいからよ!!!」
給付金が入るまでの生活費が必要だったらしい。

 どうして私の家族にこんなことをするのか。どうして?
自分の家族に借りたらいいのに?
悔しさと、切なさと、この上ない怒りで自分がどうにかなりそうだった。全神経が破裂しそうな感覚。
「お前に言うとうるさいって言ったら、弟も納得してたぞ」
耳から入ってきたそんな言葉もはじくほどに私は怒りに震え、夫がその後、私がうるさいからと家を出ていくのも気に留めずに、弟に連絡した。
声でうまく話せる精神状態ではなかったためLINEで、どう送ったかは記憶していない。既読はついたものの返答が無く、
タイミングを変えて電話をかけた。

「あんた、お金貸したの!?」
「……」
とても言いづらそうにしており、私が全て知っていると悟ると、徐々に口を開いていく弟。
「給付金が入ったら返すって言われたから…。 
最初は無理ですって断ったんだけど、そしたらお前にしか頼めないって…お前が無理ならお父さんに頼むって言われて…。
姉ちゃんに言うとうるさいから言わないでって…、納得とかはしてないけど、あーそうなんですね位は言ったかも。」
崩れ落ちそうになった。
姉想いで、優しくて、口が堅い弟。
このまま、私が知らなかったらどうなっていたのか。


許せない。


 2016年3月。
きっかけは忘れたが口喧嘩の果てに、この事を義母に電話して伝えた。
当然義母は怒り、夫に電話がかかってくる。
都合の悪い内容と知れば当然、出ない夫。
そしてなぜか私に怒る始末。

 その後、この借金は弟に返されないまま何年も時は過ぎていく事となる。
この後起こる沢山の衝突の中で何度も話には出すが、義家族は「悪いと思っている」とは言うものの口だけで、返そうとは一向にしない。
これ以降、夫に対しては憎悪しかなくなった。信頼?そんなもの。どっちが先に壊した?って話だ。
とにもかくにも、いつか離婚してやる。
ただそれだけだった。

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