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ロードレースは小さくても勝てるのか?

ほとんどのスポーツは、身長が高い方が有利に働くことが多いのは周知の事実です。特にバスケットやバレーなどは、ゴールやネットがあり物理的高さを必要としています。中には小さい選手がレギュラーにいますが、そこに入るには競争率も高くなります。

ロードレースではどうでしょうか?

ツール・ド・フランス2017の全選手平均身長は181cmです。この数字だけ見れば高い選手だけが活躍しているのでは?と思いますよね。しかし、公道を走る上では登りや平坦があり、必ずしもそうではありません。それぞれの選手が得意なコースプロフィールやレース展開が存在します。
そして重要なのはPower Weight Retio(体重/出力)になります。もちろんPWRだけではないですが、小さければ基本的に軽くなり、少ない出力でも進みます。

2022年ロード世界チャンピオンのレムコ・エヴェネプールは"171cm / 61kg"と海外選手の中では小柄な方に分類されます。彼が勝利できるのは圧倒的な高PWR × 長時間の走りによるものです。
さらに高速で走る際には空気抵抗という見えない壁が存在します。大きければ大きいほど抵抗は増え、小柄な選手はドラフティング時にかなり有利です。エヴェネプールはジュニア時代からタイムトライアルに長けており、小柄な身体をさらにコンパクトかつ滑らかなフォームに昇華させ、単独での走行能力を向上させています。そのフォームを維持する柔軟性と体幹は、あって損になりません。

レムコ・エヴェネプール
タイムトライアルもスペシャリスト

小さいことを受け入れ、それを武器に変えていく必要があります。私は165cmと日本人の成人男性の平均170.8cmよりも5cm以上小さいです。どうすれば強くなれるのか?脚質別に考えてみました。そして、ヒントを得るためにプロロードレーサーの小さな巨人たちを調べました。

海外選手

カレブ・ユアン 167cm 69kg (スプリンター)
ナイロ・キンタナ 167cm 59kg (クライマー)
セルジオ・イギータ 166cm 57kg (クライマー)
シモーネ・コンソンニ 165cm 60kg (スプリンター)
エステバン・チャベス 164cm 54kg (クライマー)
ミゲル・アンヘルロペス 164cm 59kg (クライマー)

国内選手

岡 篤志 165cm 58kg (スプリンター)
武山 晃輔 166cm 56kg (パンチャー)
山本 元喜 163cm 62kg (スプリンター)
黒枝 士揮 161cm 55kg (スプリンター)
黒枝 咲哉 164cm 57kg (スプリンター)

こう見ると意外とクライマーだけではなく、スプリンターがいる!と感じますよね?小さいからと言って諦める必要はありません。


スプリンターとして活躍するには?

海外で活躍する高出力スプリンターになるには60kg以上の体重→筋肉量は必要そうです。日本国内で多い『周回コースで行う登りスプリント』や『クリテリウムのコーナー立ち上がりのスプリント』ではなく、チームでリードアウトを行う集団スプリントが多いからではないでしょうか?逆に軽さを活かした俊敏なアタッカーが日本では活躍しているのだと思います。どちらにしても瞬発力を上げるトレーニングは欠かせません。

クライマーとして活躍するには?

ヒルクライムで小さい選手が活躍するのは、やはりPWRですよね。軽さを武器にして、絶対値が低くても体重比(PWR)で速く登ることができます。特に国内ホビーヒルクライムレースの上位にくる人は50kg以下まで絞っていて、登坂に特化させていることが多いです。クライマーなら瞬発力よりFTPを上げることが大事です。

番外編

ロードレース以外にも自転車には様々な競技があります。その中でひとつ、シクロクロスの世界選手権2023でマチュー、ワウトに次いで3位に入ったのが『イーライ・イザービット 165cm 56kg』です。彼はタイヤの空気圧や機材のセレクトに拘り、テクニックを磨き、悪路をとてつもなく速く走ります。

自転車は機材スポーツですから、そこで出力を抑えることはできます。小さい人は使えるサイズも限られてきますが、そこを探求するのも面白みのひとつとも言えます。
そしてロードレースには様々な戦略があり、チームで出場していればアシストの使い方も関係します。今回そこまでは割愛しますが、単純な力比べではないのが、このスポーツの良きところだと思っています。

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