![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50806181/rectangle_large_type_2_3443b18ed0f48efe067b644af2c85eb8.jpeg?width=1200)
コンビニ軍師
「すっごい美味しいよねー」
この店員さんは、完全におしゃべりに夢中だ。
彼女は僕のレジ打ちをしながら、もう1人の店員さんと、
カウンターの中で盛り上がる。
心の中で
「接客としてはマイナスだろうよー」
せめて、お客さんがいる時はやめたら‥
あまりにもこちらに意識が向いていなかったので、さすがにモヤモヤしてしまう。
全然おしゃべりが終わらない。
モヤモヤ、
モヤモヤ、モヤモヤ。
‥‥‥モヤモヤモ〜ん〜!
「何が、そんなに美味しいのですか?」
モヤモヤの僕は、思わず言ってしまった。
心の中の「ちょっと、こっち気にしてよ!」が、
気持ちを抑え込む口の隙間から、
にゅーっと、出てしまった結果、
自分も話に混ざるという、変な形に言葉が仕上がった。
「えっ?」
と、一瞬、間があったものの、
レジではなく、彼女のおしゃべりのスイッチは、すぐに入った。
「クロワッサンですよー!!」
「このコンビニのクロワッサン、朝に焼き上がるんですが、焼きたてがスッゴイ美味しいんです!
タイミングを知ってる人だけ味わえるんです!
そして、
それが‥
今あるんです。 」
マジか‥
無駄話するダメ接客!と油断していたら、
ジャパネットたかたばりに、
的確に言葉を刺してきやがる!
ほっ、欲しい。
欲しくてたまらない!
欲しくてたまらない!
うー、食べてみたい!‥‥
この緩急が、彼女の真の接客だったのか!?
そんなつもりで話しかけてんじゃないのにー、
コンビニという戦場を支配する策士!
実は全て、予定通りなのか!!
僕「それ下さい」
彼女「ありがとうございますー」
買ってしまった‥
美味かった‥ スッゴイ美味しかった。
周りにも教えた。
翌日、
なんなら彼女と少し仲良くなった気になっていた僕は、
感想を言いたくて、またコンビニに行った。
彼女はレジにいる。
今日の500mlのコーヒーをカウンターに置きながら、
僕、「昨日のクロワッサン、凄く美味しかったです!」
彼女「あっはい。」
‥‥
‥‥
えー!、全然仲良くなってねー!
というか、
逆に
無愛想がハンパない!!
「接客としてはマイナスだろうよー」
と思った。
でもね。知ってるからね。
ここから、欲望を刺激するのが
彼女のスタイル。
今日は
何を買わされるのだろうか。
ちょっとワクワクし‥
彼女「ありがとうございましたー」
‥‥
【コンビニ軍師】
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?