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コンビニ軍師

「すっごい美味しいよねー」

この店員さんは、完全におしゃべりに夢中だ。

彼女は僕のレジ打ちをしながら、もう1人の店員さんと、

カウンターの中で盛り上がる。


心の中で

「接客としてはマイナスだろうよー」


せめて、お客さんがいる時はやめたら‥


あまりにもこちらに意識が向いていなかったので、さすがにモヤモヤしてしまう。



全然おしゃべりが終わらない。


モヤモヤ、


モヤモヤ、モヤモヤ。


‥‥‥モヤモヤモ〜ん〜!

「何が、そんなに美味しいのですか?」




モヤモヤの僕は、思わず言ってしまった。




心の中の「ちょっと、こっち気にしてよ!」が、

気持ちを抑え込む口の隙間から、

にゅーっと、出てしまった結果、


自分も話に混ざるという、変な形に言葉が仕上がった。


「えっ?」



と、一瞬、間があったものの、

レジではなく、彼女のおしゃべりのスイッチは、すぐに入った。


「クロワッサンですよー!!」


「このコンビニのクロワッサン、朝に焼き上がるんですが、焼きたてがスッゴイ美味しいんです!

タイミングを知ってる人だけ味わえるんです!

そして、


それが‥

今あるんです。       」




マジか‥



無駄話するダメ接客!と油断していたら、

ジャパネットたかたばりに、

的確に言葉を刺してきやがる!


ほっ、欲しい。


欲しくてたまらない!


欲しくてたまらない!


うー、食べてみたい!‥‥



この緩急が、彼女の真の接客だったのか!?


そんなつもりで話しかけてんじゃないのにー、

コンビニという戦場を支配する策士!

実は全て、予定通りなのか!!



僕「それ下さい」

彼女「ありがとうございますー」


買ってしまった‥

美味かった‥   スッゴイ美味しかった。

周りにも教えた。




翌日、

なんなら彼女と少し仲良くなった気になっていた僕は、

感想を言いたくて、またコンビニに行った。


彼女はレジにいる。

今日の500mlのコーヒーをカウンターに置きながら、


僕、「昨日のクロワッサン、凄く美味しかったです!」


彼女「あっはい。」

‥‥

‥‥

えー!、全然仲良くなってねー!

というか、

逆に

無愛想がハンパない!!


「接客としてはマイナスだろうよー」

と思った。


でもね。知ってるからね。


ここから、欲望を刺激するのが

彼女のスタイル。


今日は


何を買わされるのだろうか。


ちょっとワクワクし‥

彼女「ありがとうございましたー」

‥‥


【コンビニ軍師】











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