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【読書記録】『パッとしない子』

辻村深月『パッとしない子』
Amazon Publishing 2017/7/14

辻村深月さんは『凍りのくじら』を読んで大ファンになりました。好きな作家と聞かれると、東野圭吾・池井戸潤と並んで出す名前です。しばらく本自体に手を出していなかったのですが、最近時間があるのでkindle unlimitedにあるものを読み漁ろうとし、「辻村深月あるじゃん!」と手に取りました。


最後まで読んだ瞬間、辻村深月の話って全部狂おしい青春のハッピーエンドじゃないの!? とショックを受けました(笑)
会話中心でテンポ良く話が進み、一体どんな話なんだろうと思いきや……まさかの、馬鹿で愚かな人が鮮烈に描かれていて唖然としました。最後の最後まで一貫した愚かなキャラクターに「もしかして小学校の先生キライ……?」とさえ思ってしまうほど。
ただ、「ああ、いるよねえ、こういう人……」と思う反面、自分が”こういう人”の側面を持ち合わせているかもしれないと考えると少し怖くなりました。軽率に、その場しのぎのプライドのために軽い言葉を吐き、どうでもいい他人を傷つけて忘れていること。いかんせん忘れているから気付くことはできない。せめて今からでもそうはなりたくないものです。

辻村深月さんの作品は、等身大の人間を、他人に覗かれたくない醜い部分まで目をそらさずに描ききっているところが好きです。そんなことを再確認しました。

これは物語からズレた感想というか、読んで思い出してしまったのですが、一瞬有名になった途端にすり寄ってきて、でも気に食わないことがあったら全部なかったことにして(まさしく記憶の改竄をして)散々呪って去る、そんなことをされたことがあったなあ、と(有名というほどではなくほんの一瞬界隈で盛り上がっただけなのですが。)。その言動を「恥ずかしい人間だなあ」と思ったのですが、でもあの人ってやっぱりすごく“普通”だったんだなあと今更実感しました。
素人なりに言葉を連ねて物語を書くのに、それを他人を傷つける道具として使う人間でいるなんて恥ずかしくないのだろうか。呪いの言葉をかけてやりたかったけれど、そうしなくてよかったな。恥ずかしいことをすると恥ずかしくて生きていけないから。
これからも自分に恥じない生き方をしていきたいな。


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