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【読書記録】『シャンデリア』

川上未映子『シャンデリア』
2017/1/11

掃いて捨てるほどお金があって、デパートでなんとなく浪費する「私」。以前は通帳の65万円に重みを感じていたのに、ある日、過去のちょっとしたバイトの関係で大金を得ることになった。以来、「私」は900万円が通帳から引き落とされることにさえ何も感じない。そのくらいの大金。

母子家庭でお金に苦労して、母はいつだって安物を身に着けていて、その安物さえくたびれていて、そんな母がお金のトラブルを抱えていて、そして死んだ。これから自分は、ずっと何もしないでも、大金を稼ぎ続ける。「慎ましい家族なら三百年は余裕で生きていけるぐらいの金」持ちの老婆は、昼間からデパートでブランド物を買いあさる。タクシーの運転手の女の子は、週休二日で1日20時間運転する(当然低賃金)。

母と老婆、「私」・母とタクシー運転手の女の子・その母の対比で、作品全体に漂っていた虚無感になんとなく輪郭が出てくる。

「私」と母親との関係は明確には書かれていないし、なんなら疎遠だったらしいけれど、きっと「私」は母親が大事だった。死ぬまでは大して考えもしなかったし現に15年近く会いもしなかったけれど大事な人だった。
「私」の手元にはずっとこうして大金が入り続けるのに、あの老婆はブランド物をお上品に買いあさるのに、なぜ母は、破れた安物を身に着け、死んでなおお金の問題を抱えなければならなかったのか。この大金に一体何の意味があるんだろう。そう呆然としながら、「私」はシャンデリアに突き刺し突き刺されることを想像してデパートに足を運んでいるのだろう。

それでも、タクシー運転手の女の子との会話で、「私」は前に進むことができたのかもしれない、と思う。

川上未映子、初めて聞く名前・初めて読む人だったけれど、この本は好きだった。全く次元の違う話だけれど、毎日毎日「誰にも迷惑かけずにぽっと死にたい」なんて虚無感に包まれながら勉強をしていた頃を思い出した。ああ、あのときに抱いてた虚無感に似た空気が作品全体にあるなあ、と思って。

ところで私はろくに本を読まないからろくに作家を知らない。よく考えたら読書感想文も小中学校で1・2回ずつ(?)「夏休みの宿題」とポンと出されて書き方も教えられたことがない(ような。授業態度の悪い子供だったから聞いてなかっただけかもしれない。)。レポートは大学に入るまで書いたことないし、お陰でレポートの書き方も習ったことないし(公立高校の弊害見たり!と私立出身者に言われてしまった。)、論文は書いたことがない(一応大学は出たけど卒論がなかった。)。お陰で読書記録をつけようにも感想の書き方が分からない。でもせっかく読んだら感想を書きたい気持ちはある。
……と下手くそな感想を書きながら思ってしまった。とりあえず小学生でも分かる読書感想文の書き方を調べようかな。


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