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だから花火にはいかない

彼女とは同世代、犬友という関係だった


実家に柴犬がいて
犬好きのわたしは帰省すると
必ず散歩について行っていた

最初は彼女のお父さんと犬友になった

けど、お父さんの相棒ワンコは
若くしてお空に旅立ってしまった


しばらくして彼女が
新たにワンコちゃんを飼い始め
犬友となった



主のいない
お布団、スロープ、水飲み

我が家のワンコがお空に旅立ったときは
駆けつけてくれて一緒に泣いてくれた


彼女のInstagramは
一緒に暮らすワンコちゃんとの日々
おっとり穏やかふんわり優しく
彼女そのものの投稿

ひとりでいるわたしの大きな慰めだった

彼女が帰宅すると
大喜びで持ってくるぬいぐるみ
今日はなんでしょう?クイズ

なかなか当たらない

そんなのも楽しかった



去年のGW明けくらいに帰省したとき
ワンコ(三代目)散歩をしてたら
彼女のお父さんにばったりお会いした

そして衝撃の事実を知った

「癌が再発してもう長くない」

目を真っ赤にして
言葉を詰まらせながら
お父さんは教えてくれた


彼女にはお嬢さんがいて
そろそろ出産と聞いていた

だから余計にびっくりした

けど、
わたしにできることなんてなにもなかった


そのころ
Instagramのストーリーズを
毎日あげるようにしていた

意味はなくその日の1枚
みたいなのを漠然とあげていた


Instagramのストーリーズは
誰が見たかがわかる

そしてある日気づいた

彼女が毎日見てくれていた


その日から
わたしはストーリーズを
丁寧に更新するようになった

なんてことない日常の景色

病院で白い壁だけ見ているであろう
彼女のために丁寧に丁寧に
今日の1枚を撮ってストーリーズへ


そして彼女のアイコンがあることを
確認して安心してた

「今日も生きて見てくれた」


メッセージのやり取りも何もなく
ただただ淡々と写真をあげ
アイコンを確認する日々


去年7月

岩手で生まれ育ち暮らしている
彼女のために関西の祭りってこんなだよ、と
天神祭りの写真をあげた


翌日の奉納花火は
船渡御と飛行機と花火という
天神祭りならではの
これぞ!という1枚を撮ろうと
必死で頑張った



けど
その写真に彼女のアイコンは
ついにつくことはなかった



それからちょっとして
彼女のお嬢さんから連絡がきた

こちらで天神祭りが行われているとき
彼女は旅立っていた


「ワンコちゃんはわたしが引き取ります」
とのこと


そして彼女のお嬢さんの
Instagramが始まった


以前から飼ってたワンコちゃん
引き取ったワンコちゃん
ウサギもいる🐰

そして出産

あるときお嬢さんのInstagramに

『初めての出産、育児
 母がいたらと何度も思う』とあった

胸が詰まった

わたしは遠い岩手の空を想い
祈ることしかできない



赤いトラックと赤い自動車

それでもわたしは
ストーリーズを毎日更新する

もういない人に
向かってなのか、なんなのか

なんてことない日常
今日の心が震えた1枚を
丁寧に撮って更新する


今年は天神祭りに行く気になれなかった

非日常に触れる気になれなかった

今年は花火に行かない


8月はヒロシマ、ナガサキの日もあるし
毎年はしゃぐ気になれない

じりじりと照りつける太陽を感じながら
ひっそり高校野球をテレビ観戦し
気になる本を読み
心静かに凪の時間を過ごしたい


8月が来る





🐰稽古は通常運転です🐰
いけばな教室 西宮市
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