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自衛隊は憲法違反/長沼判決50周年

10/17付「しんぶん赤旗/地方ページ」掲載記事

 日本国憲法が市民の、平和のうちに生きる権利(平和的生存権)を認め、「自衛隊は、憲法9条2項で禁じられている『陸海空軍』の『戦力』に該当する」と福島重雄裁判長が裁判史上初めて「自衛隊は憲法違反」と下した長沼ナイキ判決から50年。
「憲法を武器に住民の暮らしを守れ」と、北海道で重ねられてきた平和のたたかが今、ますますその重要性を増しています。

◆50周年記念集会に250人

 9月9日、「長沼判決50周年記念集会」が札幌市で開かれ、道内外から集まった250人がフロアを埋めました。   
 呼びかけ人で実行委員会の福原正和氏の開会あいさつに続き、北海道教育大学の前田輪音教員が「恵庭・長沼より平和的生存権を標榜する」と題し概説。

 両氏は長沼裁判の特別弁護人として、「平和的生存権」の理論を構築した北大法学部の故深瀬忠一教授の「世論・理論・弁論」の3論一体で勝ち取った成果であるとの言葉を紹介。前田氏は、「長沼判決の意義はたくさんの人達により継承されてきている」とし、『平和的生存権』の行使獲得の方法を一緒に考える機会にしようと呼びかけました。 

◆記念講演

 当時の長沼判決弁護団の内藤功弁護士が記念講演を行いました。

 内藤氏は、「『自衛隊違憲論』というのは憲法解釈論であり、福島裁判長が言うようにこれ以外の解釈はあり得ない」と述べ、憲法9条2項の条文に留まらず、安保3文書のもとで米軍と一体となっている現状は、尚違憲であると示しました。
 自衛隊の任務は自衛隊法第83条「武力行使を伴う」と記されていると明かし、自衛隊法の任務には災害救助の記載はなく、本来、消防・警察・国土交通省・海上保安庁がやるべきことで補っている状態であると解説。すぐには難しくとも災害救助隊などに改変するなどの柔軟な議論が求められると論じました。

 また、安保3文書のもとでの自衛隊任務の拡大、軍事拡大、敵基地攻撃能力の保有など戦争順備に突き進む、戦争国家づくりの議論を打ち砕くには、自衛隊違憲論こそが最強の武器だと述べました。

◆シンポジウム

右から
野崎健美氏(恵庭事件元被告)
佐藤博文氏(自衛官の人権弁護団北海道代表)
藪田享氏(長沼平和委員会・長議)
白谷秀一氏(北大平和委員会OB)

=佐藤博文弁護士=

「普通の企業や一般的なセクハラとは違う犯罪性、暴力性、組織的隠ぺい…こういう中で自衛隊員やその家族が今、深刻な事態におかれている」と自衛隊内で起きている問題や実態を告発。
 進む米軍との一体化や、海外での地上戦を前提とした訓練や装備など、この間にも多くの犠牲が出ていると示しました。
 イラクや南スーダンの海外派遣を例にあげ、帰ってきた隊員に自殺者が多く出た実態や、コンバットストレスで精神的に病んでしまった隊員、その隊員を抱える家族や地域がいる現実を告発。

 憲法9条2項が禁じる戦力には兵士も含まれると述べ、「殺したり殺されたり、軍人(兵士)や戦争によって悲しむ家族や苦しむ人たち。そのような人たちを抱える地域をつくらないというのが戦後、憲法9条2項の理念である」とし、「兵士の人権と戦力の不保持に焦点を当て、長沼判決50年にあたり発展させていきたい」と表明しました。

=藪田享(長沼)町議=

長沼町で町議(共産党)を13期務める薮田享氏は、長沼平和委員会を立ち上げ、「憲法9条を変えて、『戦争する自衛隊』にしていいのですか」と問いかける看板を町内数カ所に建立。町内では自衛官が制服を着て市民生活の場にいることはほとんどないと運動の一端を紹介。長沼ナイキ判決50年を記念して「9条の記念碑」を立てる計画中であることを明かしました。

 政府の干渉に屈することなく、住民の平和に生きる権利のため「自衛隊は憲法違反」の判断を下した福島裁判長本人が会場に来ていることが紹介され、来場者らを驚かせました。

◆談話・声明

 北海道弁護士会連合会は「長沼ナイキ基地訴訟札幌地裁判決50年にあたり、日本国憲法の恒久平和主義の今日的意義を確認し、司法が国民の権利擁護と法の支配に積極的な役割を果たすことを求める理事長談話」を発表。   

 青年法律家協会北海道支部、日本労働弁護団北海道ブロック、自由法曹団北海道支部の3団体で「長沼ナイキ基地訴訟第一審判決(長沼判決)から50年を迎え、憲法の恒久平和主義と平和的生存権の意義を確認し、その実現をめざす声明」を発表しました。   

◆メッセージ

 実行委員会のもとへ元高裁裁判官や弁護士、憲法学者など全国の様々な立場の人たちからメッセージが寄せられました。
(全て書き残しておきたいくらいの内容がいっぱいでした)

 現地視察・交流ツアーが行われ、道内外からの参加者や、札幌平和委員会青年部、民主青年同盟北海道委員会のメンバーが学び、交流しました。

◆今日的意義(自説)

 自衛隊をめぐり、組織内で起きている人権侵害、戦争法(安保法制)による集団的自衛権の行使容認や、敵基地攻撃能力の保有。安保3文書の改定。自衛隊施設の強靭化計画。沖縄南西諸島で進むミサイル部隊の配備。日米共同訓練の強化や、自治体による青年の個人情報の提供。学校行事への介入や、奨学金返済に苦しむ学生や子ども食堂への勧誘など、市民の願いに逆行する動きが加速する今、長沼判決から学びこれからの平和運動にどう生かしていくのかが問われています。

ショッピングモール駐車場に展示された戦闘車両

 北海道の矢臼別演習場で9月に行われた日米共同訓練「オリエント・シールド(OS)」では、ウクライナで実際に戦闘で使われた兵器高機動ロケット砲システム「ハイマース」の実射訓練が行われ、続く10月14日からは、「レゾリュート・ドラゴン」が始まり、市民らが毎日監視行動を続けています。

 度々行われる兵器を用いての実射訓練や米軍と一体に行われる共同訓練。その演習場の真ん中で、憲法の「平和的生存権」を行使し、土地を守り暮らしている川瀬牧場のD型ハウス屋根には「自衛隊は憲法違反」と「憲法9条」の条文が堂々と平和に生きる権利を主張し続けています。 

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