今を生きる。
最近、毎日のようにプロポーズをされている。
相手は職場の利用者さんで、一つ歳が上の女の子。
関係性としては職員と利用者というだけ。
以前書いたが僕は今、
「障がいのある方が自分らしく働ける仕事を提供する」
仕事をしている。
その子は、知的障害でさらに筋ジストロフィーという難病を抱えている。
もう、そう長くは生きられない。
そんな彼女は、出会って間もない僕に毎日プロポーズをしてくる。
というよりかは、もう結婚は彼女の中では前提の話で
その先の話をしている。。
「恋するフォーチュンクッキーを踊って〜、、、」
と話していた彼女に何の話?
と聞くと、結婚式の披露宴の話だった。
子どもの名前をもう考えていたりと、
少し怖さを感じてしまう時もあるけれど
彼女は僕に真っ直ぐ気持ちを伝えてくる。
初めは病気のことを知らなかった。
知ってからは自分の人生が長くないと分かっているため生き急いでいるのかなと思ったが、
おそらく違う。
彼女は誰よりも単純に今を楽しく生きようとしている。
悲観的な様子は一切無いし、生き生きしている。
それが逆に切なく映ってしまうときもあるけど、
知的障害があるから能力的に未来のことを考えられていないわけでもない。
自分の病気のことを理解したうえで、
「結婚したい!」「子供が欲しい!」
と言っている。
彼女は、夢を諦めていない。
夢を持ち続けている方が楽しく生きられるからだろうか。
映画に行こう、水族館に行こう、博物館に行こう。
朝ドラに一緒に出演しよう。
僕はオーディションを受けることなく、いつの間にかロンドン在住のエリート弁護士の役を勝ち取っていたらしい。
彼女には行きたいところが、やりたいことが、
たくさんある。
まだまだ生きなきゃならない理由がたくさんある。
周りの目を気にせずに、少しも恥ずかしがる素振りも見せずに、こちらが恥ずかしくなってしまうほどに、
ストレートに僕のことを褒めてくれる。
彼女はもうすぐ大きな手術を控えている。
もう手術は16回目だと言う。
自分は何かそんな大きな経験を16回も経験したことがあるだろうか。
16回手術をしても決して慣れることはないし、毎回怖いし、逃げたくなるし、たくさん泣いてしまうと彼女は言う。
僕は
「一度も手術をしたことがない」
と言うと、
「健康な身体に産んでくれた両親にありがとうって言いなね。」
って言われた。
こんな健康な身体なのに僕は少し前まで生きるのをやめたいと本気で思っていた。
もっと今を生きないと
って強く思った。
何かに怯えたり、自分の気持ちを抑えることなく
楽しんで生きようと思った。
彼女から見習うことは多くある。
自分は真っ直ぐ気持ちを伝えることが下手だし、
少しナナメな見方をしてしまって物事を真っ直ぐ楽しむことが苦手である。
だから、
彼女のように誰かに真っ直ぐ気持ちを伝えられるようになりたいし、色々なことを真っ直ぐ楽しめるようになりたい。
そんな彼女は、僕がいるから仕事に来るのが楽しいと言ってくれる。
彼女の気持ちに中途半端に応えることはできないけど、自分が生きていることで彼女に何かを与えることができているならそんなに幸せなことはない。
僕は福祉の仕事を始めてから与えることの喜びや幸せを知った。
自分もどん底にいる時に誰かの言葉に、行動に
勇気や希望を与えられたからこそ今がある。
今度は自分が与える側になりたい。
カッコつけでダサいかもしれないけど本気でそう思ってこの仕事に就いた。
一度もういいやと思った人生だから、
誰かのために何かを生み出せるような、良い影響を与えられるような生き方をしたいと思うようになった。
(勿論、自分のためにも生きたいし、誰かのために生きることが自分のためにもなっている気がする。)
段々大人になってきて自分達ぐらいの年齢になってくると、少し背伸びして大人になったフリをして将来について考えるようになる。
周りで結婚を決めた人も少しずつではあるが出てきている。
様々な面で、自分も未来を見据えて行動しなきゃ
と焦ってしまったり、不安になったりもするけど
最近はやっぱり今を大切に生きたい。
勿論、未来に夢を持ちそこに向かって計画的に進んで行くことも素敵で大切だとは思うけど、
まずは、目の前だけを見て生きて楽しみたい。
そうすれば、自ずと未来は開けるし夢も広がっていくような気がしている。
今はそんな風に考えている。
彼女の手術が上手くいきますように。
おわり
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