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中国伝統医薬産業の未来を加速させるAI技術の革新

中国の伝統医薬(中医薬)産業は、近年急速に進化しています。特に人工知能(AI)などの新技術との結びつきにより、その発展は一層加速しています。


「数智本草」AI基盤モデルの発表

天津市で開催された「第4回中医薬国際発展大会」では、天士力医薬集団とファーウェイクラウド(華為雲)が共同開発した中医薬のAI基盤モデル「数智本草」が発表されました。このモデルは380億のパラメータに基づき、中医薬の膨大なテキストデータを学習し、製剤の最適化、メカニズムの詳説、新たな適応症の発見を実現します。

AI技術を活用した中医薬の現代化

天士力医薬集団の閻凱境董事長は、「クラウドコンピューティングや基盤モデルなどの新しい技術手段を用いることで、中医薬の理論と現代化研究の全面的な分析を実現し、革新的な製剤の研究開発を加速し、AIによる新たな研究開発のパラダイムを構築できる」と述べています。

中医薬の品質標準化と生産技術の進化

中国では、多くの中薬メーカーが先進的な科学技術を活用し、生産のデジタル化、大規模化、標準化、集約化を進めています。天士力医薬集団の工場では、高周波振動スクリーン技術を導入し、中薬の抽出液を均一な速度で冷媒に滴下し、サイズと重量が揃った丸剤を1分間に7万粒生産しています。朱永宏総裁によると、生産プロセスでは2100個のセンサーでデータを収集し、丸剤の均一的で高い品質を確保しています。

デジタル管理システムの導入

一部の中薬メーカーは、生産工程にとどまらず、原材料のトレーサビリティー、スマート検査、アフターサービスまでをカバーしたデジタル管理システムを構築しています。津薬達仁堂集団が製造する「速效救心丸」のパッケージには、トレーサビリティーを可能にする2次元バーコードがついており、消費者はスマートフォンでコードをスキャンすることで、中薬の原材料の産地や生産・加工、輸送、品質検査などの情報を把握できます。

デジタルインテリジェンス技術の役割

中国工程院院士で現代中薬創製全国重点実験室主任の張伯礼氏は、「デジタルインテリジェンス技術を活用し、有名で優れた中薬製剤の二次開発に取り組み、臨床的位置づけの不正確、薬効成分の不明確、作用メカニズムの不明瞭などの問題を解決してきた」と述べています。この技術は、全国19省で100社近くの企業に導入され、生産額1億元を超える中薬の種類が95種類から500種類以上に増えました。

中医薬情報化発展計画

中国国家中医薬管理局は2022年、「第14次5カ年計画(十四五、2021~25年)期間の中医薬情報化発展計画」を発表し、中医薬のデジタル技術上の課題解決を加速することを打ち出しました。閻樹江副局長は、中医薬とデジタル技術の結合と相互促進を進め、データ要素の相乗効果を発揮し、中医薬の可能性を掘り起こすと同時に、膨大なビッグデータを通じて中医薬の理論のブレークスルーと技術のアップグレードを牽引する必要があると述べています。

まとめ

中国の伝統医薬産業は、AIやデジタル技術の導入により急速に進化しています。新しい技術を活用することで、製剤の最適化や新たな適応症の発見、デジタル管理システムの導入など、様々な面で進展が見られます。これにより、中医薬の品質向上と市場拡大が期待されます。

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