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『Smile』予告編から考えるホラー演出

2022年9月30日米国にて『Smile』という映画が公開されました。
興収は週末で2200万ドルを記録し、製作費の1700万円をわずか3日間で上回りました。
かなり良いスタートを切ったこの作品ですが、公開が未定の日本でもTwitterなど
SNSで公開前から予告編、プロモーションが話題となっていました。
そこで今回は、この作品がなぜこれほどの注目を集めたのか予告編から考えてみます。


ジャンプスケアの効用

まずは、ジャンプスケアに注目してみます。この予告編の最後の方に、近づいてきた女の人の首がビヨーンと垂れ下がるジャンプスケアがあります。最後にジャンプスケアを持ってくるのはホラー映画の予告編では定番ですが、首が垂れ落ちるという演出は斬新かもしれません。
ジャンプスケアの悪い面として低俗に見える、作り物感が出るということがあります。大きな効果音と共に派手な演出が挿入されるわけですから、ある程度の仰々しさは出るのは仕方ないでしょう。しかし、『Smile』はどうでしょうか。
私は、最初この予告編を見た時
「あー、低俗なびっくり系映画かなー。」
と思ったのですが(なんかヤな奴ですね)、
何度も見ているうちに、ジャンプスケアが調和しているように感じるんですよね。
まあ、ここら辺は人によりけりなので、あくまで私の捉え方についてのことですが、予告編の全体的な雰囲気がジャンプスケアとマッチしているというか、違和感をあまり感じない。

では、その全体的な雰囲気とはどんなものか。

狂気と意味不明

まず、印象的なのはデカデカと登場する赤い文字。シンプルのようで尖りのあるフォントからは冷たさ、暴力性を感じ、WHAT MAKES YOU SMILEが単語ごとに現れる、その文字の背後には人が不敵な笑みを浮かべています。これだけで、大体この作品の雰囲気は読み取れるのですが、加えて、街の空撮を逆さにした映像が流れることで、エキセントリックさが出ています。逆さにする演出はアリ・アスター監督の『ミッドサマー』でもありましたが、どこか狂気を感じますね。
そして、予告編全体を通して、割と意味不明ですよね。この謎感、不透明性が、唯一のテーマであるSmileを浮かび上がらせているように感じます。

先ほど、ジャンプスケアが調和していると書きましたが、この予告編では普通の日常的な穏やかな面は描かれていません。
「ホラー映画なんだから、そりゃそうでしょ。」
と思う方もいるかもしれませんが、
ホラーの予告は穏やかな日常から恐怖への落差を強調したものが割と多いです。
しかし、この作品は全体を通して狂気的な雰囲気で統一されており、ごちゃごちゃ感がない。故に、最後のジャンプスケアも狂気の延長線という見方ができ、調和しているように見えたのかもしれません。

テンポの良さ

そして、なんと言ってもこの予告編はテンポがいいんですね。
だいぶ、ざっくりとした言い方ですが、
「ポン、ポン、ポン、ポーン」
って感じです。
これも先ほどの雰囲気の統一感的な話と繋がるのですが、
余分な描写がないため、すっきりしている。
加えて、音楽も映像の断片的なイメージとマッチしており、
「ポン、トーン、カン、ポーン」
ではないんです。
雑ですねー。

Rotten Tomatoesでの評価

Rotten Tomatoes(ロッテントマト)はアメリカ合衆国の映画評論サイトですが、『Smile』の評価は如何なものか。見てみましょう。

✳︎白紙の状態で見たい方は閲覧注意


このサイトでは批評家と一般観客の評価を〜%でそれぞれ表示しており、目安として60%が良し悪しのラインとなっています。

『Smile』は現在、批評家77%、観客79%となっています。
これは、ホラー映画にしてはなかなかの高評価だと思います。

割と予告編で盛り上がって見てガッカリパターンは多いかと思いますが、この評価を見るとそうではないような気もします。
ただ、評価が全てではないので、実際に見なきゃわからんということで、日本での公開を首を長くして待ちましょう!

それでは。




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