【競馬】日本のダートスプリンターがサウジの地で示した可能性と、森秀行厩舎の功績
昨年に続き日本調教馬が大活躍の「サウジアラビアミーティング」となった。3歳馬ピンクカメハメハがサウジダービーを制覇。そしてリヤドダートスプリントではコパノキッキングとマテラスカイのワンツーフィニッシュ。地元勢や英米からの遠征馬との対戦で、存分に力を発揮してくれた。
中でもダート短距離の強豪たちが、異国の地で可能性を示してくれた意義は大きい。国内のビッグタイトルはJBCスプリントに限られる現状。こうして日本調教馬の特性にも合う舞台が新たに設けられたことによって、彼らの活躍の場が広がったのは歓迎材料以外の何物でもない。さらにここを経由して1ヶ月後のドバイゴールデンシャヒーンにも参戦するローテーションも組みやすく、ダートスプリンター達にとってはまさに願ったり叶ったりである。
その道を切り開いたのが、またしても森秀行調教師だったことも忘れてはならない。90年代後半に誰よりも早く海外遠征に目を向け、数え切れないほどの成功を収めてきたパイオニアが、20年近く経った現在もそのフロンティア精神を絶やすことなく挑戦を続けている。
第1回の開催だった昨年からマテラスカイとフルフラットを送り込み、「サウジアラビアのダートは日本馬向き」といういわば実験の結果を還元してくれた。だからこそ今回はコパノキッキングも迷うことなくここにターゲットを定めることができたし、来年以降もその流れはより強く受け継がれていくことだろう。最初に風穴を空ける役割の何と尊いことか。
ある時を境に社台Fの関連馬を手掛けることはなくなり、現在は小規模の個人馬主さんからの委託が中心。管理馬はお世辞にも国内でトップを張れるだけの実力馬ではないが、それでも勝機があると見るや参戦を続け、そして結果を残しているのだからこれは「森マジック」としか言いようがない。ピンクカメハメハに1着賞金90万ドルのレースを勝たせるなんて、他の調教師にはまず不可能な仕事ではなかろうか。
開拓者のおかげもあって、新たな楽しみが定着しそうな「サウジアラビアミーティング」。唯一、悔やまれたのは坂井瑠星のジャスティンが不完全燃焼な競馬に終わってしまったことだ。「ゲートでイレ込んで出遅れてしまった」ようで、本来の快速ぶりを発揮できず。どうにか次のドバイでは納得のいくレースを見せてほしい。
<関連情報>2021サウジカップデーの結果 (JRAオフィシャルサイト)