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画力って練習しなくても身につくよ?

絵描きを諦めてやったことが、全部絵描きになるため必要なことだった

イラスト初心者、漫画家になりたい人がもれなくぶつかる思い。
「絵を描いてるけど上達しない……」
「画力欲しい」
「〇〇(筋肉、表情、髪の毛、背景etc)がなかなか描けるようにならん……!!どうすればいいんだ」

んで、さい○うな○き先生やN○g先生の動画を観まくったり参考書買い漁ったりデッサンやクロッキーをがむしゃらにやったり、高い講座を履修するか悩んだり。するでしょ……しない?本気ならそうなる、ワナビー絵描きな貴方がそうならないのは、まだ余裕あるってこと。

私はね、崖っぷちだったんですよ。
25歳になっても漫画家目指してて芽が出なかったから。
漫画家、イラストレーター、絵を描く仕事をしたいと私が頑張ってた時代には、今みたいなデジタルペイントソフトは一般的ではなかったし、YouTubeで描けないテクニックを手軽に勉強したりはできなかった。

でも喉から手が出るほど画力が欲しかったし、悪魔と契約して面白い漫画が描けるなら後先考えず契約しただろうと思うほど、描くことで誰かを唸らせたいと願って、ずーーーっと絵を描いてた。

編集部に持ち込みもして、近所の漫画家さんを紹介してもらってアシスタントに行かせてもらえないか相談。そこで仕事をしながら自分の漫画も投稿し、20代のほとんどをそうやって過ごし。

結果はダメ。自分でも薄々わかるくらい、私には才能がなかった。
キャラクターに生き生きした言動を取ってもらえる方法がわかんない。お話の構成を起承転結で転がす理屈はわかっても、感覚が掴めず展開していかない。

絵も「素人ではない程度に巧い」だけ。
キャラクターが浮かび上がってくるような線画には遠く、線の強弱が甘いし細かい線を重ねると汚い。アシスタントに行くようになって、背景や小物は多少マシになっても、肝心の人物が……。

そうやっているうちに29歳。
もうあかんだろ。いい加減諦めよう、と決心して別の道に進んだ。
20代全部無駄にして何も得るものがなかった、今からどうすんの?人生立て直せるの?不安だったけど、諦めるなら今しかない……、損切りだ。労力の損切りをするんだ。

決心は簡単じゃなかったけど、「絵で食べていくのを目指す」をやめたら次は何をするか?まずそれをボンヤリ決めた。
決まったら次はそれに向かえばいいだけだから。
絵を描くのに集中したのと同じくらいそっちをやればいいんだもんね!と無理やり舵を切った。

専門学校行ったり勤めたり結婚したり妊娠したり子育てしたりした。
20年、子どもに「お絵描きして」って言われた時くらいしか描くことをしなかった。20年筆を捨ててた。

再度筆を取ったのは去年。2023年の8月だ。
意外と描けた。むしろ前より無駄な線が減って、人体の骨格や筋肉を描けるようになってた。

キャラクターも、設定した瞬間「その環境で育ったらどういう言動をとるようになるか」「こういう人物はどういう信念を持っているか」、を想像できる。
スルスル話が転がるようになって、ものすごく創作が楽しくなった。

8月の下旬、デジタルソフトでフルカラーのイラストを描く方法を知って、一枚描いてみた。最初の一枚がこれ。

漁師のおじさんと赤ずきんのイメージ。使用ソフトはAdobe Fresco

なんか今の絵師さんが描くイラストっぽくなった!って手応えがあった。もしかして、この感じで何枚も描いていったら、もっと色々描けるようになるかも?依頼を受注して修行させてもらいたいな……。と願望が湧いた。

9月に「イラスト受注します」の告知を恐る恐るX(その時はTwitter)に出した。pixivやskebのアカウントも作って……。
すると交流があった小説家さん達から、翌月までに4件依頼が入ったのだ。それ以降、毎月途切れず仕事が出来ている。

2023年9月〜10月に受けた依頼。この辺も全部 Fresco使用

(まだ「これで生活できる」というほどではないけれど……、実績もない、始めて半年、デジタルソフト触って1年も経ってない者の割には健闘してると思う。)

結果的に言えば、筆を捨ててる間にやってたことが全部、絵を仕事にするための準備になっていたのだ。
絵を描かなくなると画力が落ちるとか、とにかく描け、上達にはそれしかない、みたいな説はあるけど……。

そうとは限らない、お絵描きや漫画はその人の人生を反映したものだ。
日常生活をどのように受け取るかがテーマになる場合もある。
絵を描くだけでは得られなかった知識が、他の仕事で身につくこともある。

絵で食っていく……、それは「仕事として絵を描く」ってこと、当たり前なんだけど。
だけど絵しか描いてこなかった人が、仕事として社会的にばっちり問題なく立ち回れる可能性は限りなく低い。社会人はどう動くのか、社会的に責任ある仕事をするってどういうことなのか、身をもって経験してからじゃなきゃ、イラストレーターになったとしてもその後に詰む。

若くして画力が認められて成功して、ってロードマップを人は描く。
もう○歳なのにまだデビューできてない、と焦ったりする。
若いうちになっておかなきゃ、絵が古くなってからじゃ成功しない、と編集者に言われたりする。

だけど私は「あの時漫画家になって万一認められてたら」と考えるとゾッとする。
絶対何かやらかして顰蹙買ったり取引先に大迷惑をかけたり、天狗になって同業者に嫌われたり、ライバルの人気に嫉妬して頭がおかしくなったり、苦し紛れの創作で枯渇して心を病んで鬱になっただろう、if の人生が容易に予測できるからだ。

人生も半分過ぎてから、いろんなことを吸収した結果を画面の中に表現できるようになる、私のような人もいる。
今絵で食ってくことを目指して七転八倒、試行錯誤、キリキリ舞してる人には、どうか視野を広く持ってほしい。

お絵描きは人生の結果だ。私たち創作者は、現実から受け取ったものを自分の中で咀嚼して、理想や願望、美しさや醜さを、受け止めやすい形に変えたものにして、見る人に提供する。

だとしたら、絵描きになるのは現実の社会や世界を体験してからでも遅くはないのだ。
逆に言うと、若くして認められた人には、その人なりの壁が立ちはだかっていて苦労する可能性があって、遠回りしたのと同じぐらい大変なんだから、羨む必要もない。
人生はトントンになるようにできている。


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