レモンスカッシュ・サマー
ヒザにまとわりついた砂を払って、海の家の畳に転がり込む。ぬれた水着さえも蒸発してしまいそうな太陽だ。今年の夏が暑いのは、きっとキミが隣にいるせい。
火照った肌に、冷えたラムネの瓶を押しつける。小気味よい音を立ててビー玉が泡に落ちる。シュワっとあふれる笑い声。陽炎のむこうで、海と空の青がゆれている。
絵に描いたような大学生の夏旅、そして、ただの友達として輪の中にいる私たち。
それでも、夕陽が落ちるまで泳いで闇夜にまぎれて花火を散らす。この物語の続きは知らない。夏よ、どうか終わらないでいて。
「お、ラムネ」
小麦色のたくましい腕が、コバルトブルーの瓶をつかむ。
「ひとくち、交換」
ごくっと彼の喉仏がなってレモン色のカキ氷が私の前に差し出された。ひとすくいすると、すっぱくない甘さが舌にとけていく。
口の温度が1度さがり、胸の鼓動が頰を赤くする。
この恋の熱はまだ、冷めそうに、ない。
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