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この悔しいって感情は紛れもなくホンモノだろ。【#磨け感情解像度 × #おびコレ _Vol.3】

私設賞・note非公式コンテスト「#磨け感情解像度」の運営パートナーを務めるサトウカエデです。

おびコレ形式で投稿作品をご紹介するまとめ、Vol.3です。

おびコレとは?
twitterシェア時につけるツイート主独自のコメント」を、書籍カバーの帯になぞらえてnoteの帯と呼び、帯の世界と可能性を探究してみようという、2019年10月に開催されたillyさんによる【自主お題企画】「わたしの好きなnoteの帯コレクション」 略して #おびコレ です。

本コンテストも開催から17日。投稿本数が100本に迫ろうとしています。心がふんわり笑顔になるようなエッセイや、引き込まれるような小説、思わず「わかる」……とつぶやいてしまう作品など、読んで出会う感情が多彩すぎて心が忙しいです。

今回のまとめでご紹介するのは、No.39~58の20作品安らぎ、家族愛、怒り、悔しさ、幸福、嫉妬などなど、作品のバリエーションが豊かです。Twiterの帯を読んで気になる作品があれば、ぜひ本を手に取るようにクリックしてみてください。

※作品への帯の内容、および本記事でのコメントは一切審査には関係ありません。


なっちゃんへ by 綾子(詩とエッセイと短編小説)さん

「頼むから長生きしてよ。そうじゃないと私のバカ話聞いてくれる人いなくなっちゃうじゃん。」
凝縮感のあるセリフ。
入谷 聡 (illy)

「そしてあなたが言ってくれた言葉は、今でも私に何か嫌なことがあるたびに私を支えています。」

対面で言えなかった言葉を綴るお手紙的なエッセイ。手紙って、書くときなかなか書き出せないんですけど、エッセイみたいに書くと筆が進んだりするんですよね。

直には言いそびれても、文章だからこそ伝えられる気持ちがある。そんな一言が挟まれていて、これを受け取った人は嬉しくなると思います。


コロナが私を変えたのか私が変わるタイミングだったのか by 梢さん

ベルリンから!
新しいお店を始める期待感と、不安と、昂揚と。
入谷 聡 (illy)

ベルリンもロックダウンだったんですねえ……。noteを読んでいると、海を越えてつながっているのを感じます。

ずっと家にいる時間、自分と向き合っていた記録。扉が外に向かって開いたら、気持ちと時間は動き出したのでしょうか。あの時の気持ちを残しておいて、あとから振り返って何を感じるのかな。


急ごしらえの在宅勤務机がわたしを救う by かおるさん

すみっこ大好き族としては、この狭い部屋に小さい机のほっとする感じ、よくわかります。入谷 聡 (illy)

「ここが今、私の魂の休息地だ。」

在宅で仕事しているので、家のなかに「私の場所」が必要な気持ち、すごーく共感します。自分の家なのに、落ち着く場所がないって心もとない感じがしますよね。

部屋のなかに一人しかいない。その静けさが伝わってきます。机の時間が魂を満たす感じ、いいですね。


妹 by 奥村 まほ(okumaho)さん

なななななんてうつくしいのだ。ハネサエ
"夢で手渡し"
互いを尊重しあった、妹さんとの優しい距離感。成長するにつれ別々の道を歩きながら、心の柔らかい部分を渡しあって今日の空を見る。初夏の陽射しを一輪添えたような、花開く短歌集。素敵です…
嘉晶(Yoshiaki)|noteと絵描き

妹さんとの思い出を辿る短歌15首。上の帯がすべて紹介しているので、私からのコメントは「すてき」だけでいいかな。

31文字×15首ってことは、465文字しかないわけです。そのなかで、20年以上の月日を、一つひとつの歌に感情を凝縮させて、たったの数分もかけずに読み手に情景を見せてくれる。短歌が時間を超えて一瞬を取り込んでいる感じがすごく好きです。エッセイでも小説でもできない、短歌ならではの表現力。


「憧(あこが)れ」という恋の魔法のような感情を再創造してみる  by めるさいあさん

長文論考です。憧れといえばニーチェ「憧れの矢」……強いエネルギーを想起しました。入谷 聡(illy)

憧れの感情をパーセンテージで分解する試み。本コンテストに投稿された、たけのこさんの掌編小説『ある夜の告白』にインスパイアされての執筆だそう。

憧れの感情が分解され、長文思考はさらに憧れの再構築へと向かいます。感情の分解って物語を考えるときに大事だなと思ったり。最後にたどり着く新しい憧れの定義、けっこう好きです。


シティポップを聴きながら by 
はぴび/ナイルの水を飲んだからさん

同世代のはずなのに「80年代的」な明るさの感覚も理由もわかんなくて悔しい!入谷 聡(illy)

私も同世代!と意気込んだけど、80年代前半に分類されるので微妙に違いました。

曲、子どもの頃見ていたアニメのエンディングを思い出します。小さいころに聞いていた音楽って、印象に残りますよね。「2階の布団へと担いで行かれる世界」は、子ども目線にしか存在しない。想像していた「大人の世界」の描かれ方に懐かしさを感じます。


青い炎とピノキオ by こんちゃんさん

怒りのコントロールについて。確かに「他人への期待値を下げすぎて、怒りはなくなったが自分もなくなる」という事態はわかる。自己との対話を重ねると感情が戻ってくる、なるほど。入谷 聡(illy)
私はどう考えるのか。
聞き続けてくれるご友人も素敵。
るみ姉

"「わからない感情」を考えるのは海に潜るような感覚だ。"

怒りを青い炎にたとえ、怒りのない自分をピノキオにたとえる。相手を優先するがゆえに、なくなった「僕」を取り戻す方法。対話を重ね、言葉にすることで見えなくなった自分に気づくってあるなと思いました。

自分の感情とつながっておくの、ときに海に潜るみたいな苦しさもあるのだけど、やっぱり手放したくないな……と。


【流氷の天使】 by クリオネさん

"手を繋ぎたい"
濃厚な葛藤が染み出すテキストです。
#厨二か #思春期か ←タグw
入谷 聡(illy)

流氷の天使って、クリオネさんの名前そのものでしたね。だから、やっぱりこれはクリオネさんについて書いた文章なんですね。前半部はご自身の内部について書かれていて、「乱浮遊」から詩的なリズムになるのが印象的です。

最後まで読んで、(暑いのは苦手)に、クリオネさんらしさをさらに感じるという作品。


小2男子の学校に呼び出された我々は仰天した。 <ゆたかな社会とは> by  山羊課長さん

これは読んで「観て」ほしい。論じるよりずっと大事なことが描かれてる。ふみぐら社
ゆたかな社会をつくろうと、それぞれの場所でできることをやればいい。なにもせず文句を言うのだけはやめよう。タダノヒトミ☆くいしんぼ番長

息子さんへの学校の対応について、良い意味での驚きと、ご自身が体験した幼少時代を振り返りながら「一方的で単一な価値観」と「多様性」を紐解いた作品です。

息子さんが通う公立校の「いま」と、数十年前の学校の「むかし」が書かれていることで、考え続けるべき難しいテーマを取り上げつつ、重苦しいだけではなく、ゆたかな社会へと向かう明るさが出ています。海部町の事例が興味深いです。


悔しいって感情は誰だってホンモノだろ by アルマジロ武田さん

「必死で出した結果を見て適度に笑えるってことじゃない。笑いたくねぇよ。」これが言えるひとがカッコ良い、素敵だと思う。私も笑って誤魔化すのはやめたい。たなかともこ@みかんせい人
"好きなものくらいコレ以上は出せないってくらい頑張りたいよな。"
ここの語尾にどきどきした。
好きだからこそ生まれるどろっとした感情って、動力として十分すぎるほどのエンジンですよね。
大麦こむぎ

悔しさへの想いをストレートに文章にしているのが、どこまでもすがすがしいです。文章が光るはずがないのに、読んでいると青くキラキラして見えます。

「悔しい」は日常で感じにくい。たしかにそう。強い想いの裏側にあるのが悔しいなんだと、最初の一文で気づかせてくれます。そんな平穏の日常だって、いいのだけれども。

美大生を描いた漫画『ブルーピリオド』からの引用も、ガソリンと表現する悔しさを際立たせています。

どれだけ大人になっても、涼しい顔して打席に立ってるとは限らないんですよ。ほんとに。


いつもその日の精一杯で by suzucoさん

おおー記憶の解像が確かに現在に繋がってる感じがする。(フリーランスの値決めはそれはそれで分解が必要な切実な問題)入谷 聡(illy)

冒頭のお昼の支度のシーンから、すでにタイトルの意味をなんだか感じてしまいました。子どもがいて、仕事して。でも、「大変」だけの「精一杯」じゃないんですよね。ここで書かれているのは。

イレギュラーでやってきた仕事に取り組む姿勢と、思い出にある焼き芋売りのおじさんのセリフが混ざり合って、さわやかな読後感。仕事へかける労力をどうするかって個人的に悩ましい問題なのですが、誇らしげに笑えるっていいなと思いました。

アイキャッチに使われている三輪車、記憶のなかの風景と重ねているのも素敵です。


単巻マンガのススメ by うえはらけいたさん

へえーこれはどれも面白そう。「単巻マンガ」の切り口に絞った視点が、レビューnote的にナイスですね。マンガの海は広い。入谷 聡(illy)
昨日寝られないにかまけて「花と頬」買って読んだらとても面白かったので、イトイ圭さんの他の本も買いました(*´ω`*)出てくる音楽も好き。そして多分私は「告白というもの」が好き。たけのこ

1巻で完結する「単巻マンガ」(うえはらさん命名)の紹介。単巻マンガって呼び名いいですよね。本屋さんのポップにあったらつい買っちゃう。紹介されているのは5冊。説明文から、単巻マンガへの熱が伝わってきます。

「学生時代の苦い恋愛体験を思い出して身悶えしながら、それでも前向きな気持ちになる」

この部分が、私は一番惹かれました。人の読書感想文、楽しくなって読んじゃう。次はあなたの番、と最後まで単巻マンガの熱が燃えているのもいいです。


感情の着ぐるみ by あらしろひなこさん

天体でたとえるとひな姉のは「月」の文章だと思うの。
自分からは感情を強く押し出さないけど、読む方はなにがしかの感情を掻き立てられるよ。
マリナ油森
わかりみが強すぎる!
わたしも感情が苦手です。表現もだけど、日常的にあまり強いエモーションを感じない。抑圧してるのかも。
きのこ

感情の解像度を磨くために、感情に向き合う。ゆえに、感情との距離の遠さや、つかみどころのなさをテーマにする作品があるのも、本コンテストの特徴かなと思います。

感情がないわけではない。感じないわけでもない。でも、大きくは揺さぶられない。その状態を「着ぐるみ」と表現するの、個人的にとてもしっくりきます。着ぐるみをきているなら、いつか脱げる日もくるから。


街はもはや俺のソープラントだと。 by 吉原一憲@横浜スカウトさん

"だってそのアルコール、自分にしかベクトル向いてないでしょ?"
ある種のサービス業の人が持つ冷徹な観察眼ってどこから来るんでしょうね。ちょっとハードボイルド風味の、読まされる筆力。
入谷 聡(illy)

タイトルのインパクトが強い。

中を覗くと、静かで抑えられたような夜の街にまぎれた人々が並びます。男、女、僕、と名前のつかない登場人物が、行き交う通行人を見つめるスカウトの人の視点と重なります。ナンパの彼は、たぶんいい人なんだろうなと、なぜだかそんな気がする。


チョコレート、チョコレート。 by 定家明香さん

「こんこんと」「王冠を運ぶように」「恭しく」メタファーも精細な描写もとっても上手。幸せな時間がゆっくり流れていくのを味わいました。入谷 聡(illy)
なんだか心がほっと落ち着く。ー奥村まほ

甘くて特別なチョコレートの記憶。

描写がとってもかわいいです。「折り紙にないような」とか、延々と箱を重ねたりとか、衝動的に箱を乱暴に振ってしまうとか、目をキラキラ光らせ開けたくてしかたないとじっと見つめる子どもの姿を思い浮かべてしまいます。

箱を開け、チョコレートと対峙するシーンの丁寧さ。じゃんけんの結末もその後も覚えていないのも、子どもの頃の記憶ってそうだなあと納得感。

チョコレートを食べる、幸せな時間のおすそ分けをいただきました。


おばあちゃんに嫉妬して、笑顔でいようと決めた by 飯尾 早紀さん

これまた超難しい「嫉妬」の見事な解像。
"ワクワク見ていた気持ちが一瞬で消えてしまった。"このスっと気温下がる感じ。そして前向きな決着。
入谷 聡(illy)

キナリ杯の流れで本コンテストにご投稿された飯尾早紀さんの作品。私設賞のつながり、うれしいです。

扱う感情がなんであれ、文章を書いていると、どこかの「答え」や「正解」にたどり着きたくなります。でも、それってそんなに簡単ではないですよね。とくに、向き合うのにエネルギーを使う感情であればあるほど。

「嫉妬」って抱えてるだけでしんどい感情だと思うんです。その感情を言葉にして「笑顔」にたどり着く所まで書ききる。最後の都合のいいように…の部分に、気持ちと折り合いをつける誠実さを感じます。


RESTART PART2 by ハゲのタイタンさん

"目が離せないのです。"
ワダカマリ、分解したいですね。(こういう軽い感じの参加も歓迎ですw)
入谷 聡(illy)

ワダカマリって、なかなか消えてなくならない。そっち側にいるほうは消せないですよね。消したい側がなくしちゃうだけで。飲み会で見たという俯いた男性の様子が、軽やかな文体の締めとして印象的です。


ふたつのプールと夏 by すが(suga)さん

"今となっては好きなのか嫌いなのか、わからない"ってあるけど完全にこれ「好き」じゃないですかー描写を読めばわかる入谷 聡(illy)
必ずしも自分が戦いに参加するわけでなくても,切磋琢磨しあう環境にいることの充実感。一方,そのあわただしさから抜け出して静かにのびのびと過ごす時間の大切さ。人生はふたつのプールのように。個人的な感想

アイキャッチが綺麗ですよね。プールと夏と言われたら、輝いている光景しか思い浮かばない。

文章のなかで、飛び込んだプールの水が舞っています。水に潜ってないのに、たゆたう感触が気持ちいいです。違う生き物になれるプールの世界。もう戻れない夏であると同時に、きっと好きだったんだろうなって。


『愛の不時着』の女性に見る脱ジェンダーステレオタイプ by Yuna Parkさん

"「こう見えて私はアジアのファッション界を動かしてる人間よ」"
こういうセリフひとつで人の行動解釈は大きく変わりますね。
入谷 聡(illy)

強い女性像をからめて紐解く「愛の不時着」解説です。愛の不時着、わたしまだ視ていません。noteで「愛の不時着」をキーワード検索すると、844件の記事がみつかります。ぜんぶが解説記事ではないけれど、でもすごい。

「強い」けれども「多面的」に書かれた女性像。これまでにない「ヒーロー・ヒロイン像」が脱ジェンダーステレオタイプというYunaさんの視点で書かれていて興味深いです。

北朝鮮とソウルで舞台が変わったあと、守る役割が変化するカップルのチームワーク感の部分とか、あーこれは面白いんだろうなあと。Netflixが私に激推ししてくるので、見てしまうのも時間の問題だと思います。


人を好きになるのが難しい by ごはん #毎日更新中さん

'人間として"すき"な人は沢山いるのだが、それが恋愛になると難しい。'
この微妙~~な違いがいろいろな創作のタネになりそうです。
入谷 聡(illy)

”わたしのことが好きな人”ができたことへの、戸惑いからはじまる思考。

友達と思っていた相手から好意を向けられた際の当惑は、なかなか共感する人も多いのではと思います。人を好きになるのが時間がかかる、と自分で認めるごはんさんと、そんなごはんさんに「付き合ってほしい」と伝えた彼が交わした会話。

胡麻化さずに、面倒だと思わずに、言葉を尽くして気持ちを伝える時間が、そもそも好きがベースにあるんじゃないかな~……と読んでいてニコニコしてしまいました。勇気を出しての一歩に、小さく拍手です。


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以上、まとめVol.3でした。

そして次回から、参加作品まとめ記事の作成に新しいメンバーが加わります!

カラエ智春さんです。

キナリ杯で一発逆転優勝を受賞し、本コンテストへの応募作品ではまったく違った表情を見せる智春さん。くるくると自由に変化する文章が魅力的です。

私とも主催のillyさんとも違う視点でのコメントが加わり、かつみなさまの帯コメントが添えられるという豪華まとめ。わくわくとお待ちください。

(※まとめ隊への参加は審査結果に影響しません)


締め切りまであと13日。引き続き皆さんの投稿をお待ちしています!私設賞「#磨け感情解像度」の詳細は、下記をご確認ください。

▼応募作品の一覧は、下記のマガジンからご覧いただけます。


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