きみが笑えば
休日のお昼ご飯は、できることなら手抜きをしたい。
先週の土曜日。スーパーで5ドルで売られていた袋入りラーメン。なんと、日本の大手食品メーカーのもの。信頼の味。子どもも喜ぶ。作るのカンタン。休日のランチに、これほどぴったりなものはないよね。
袋入りラーメンには、気持ちばかりの「具」が入っている。ちいさな「なると」と乾燥したネギだ。
ちょっと料理した感をだそうと、目玉焼きをつくってラーメンの上にのせ、食卓に運ぶ。
「娘ちゃん、麺だいすき!」
休日だというのに午前中ずっと家にいて、いささか不機嫌だった娘が笑う。そうでしょう、いいでしょうラーメン。いただきますと手を合わせて、並んで食べる。
「あっ!」
娘が声をあげた。熱かったのかなと横を見ると、麺をなにやらほじくり返している。
「おかあさん、これみて!娘ちゃん、前に食べたやつだよ」
ああ、なるとだね。それは、なるとっていうんだよと教えてあげる。
「娘ちゃん、パンダのなると前に食べたよね」
小さな「なると」を手にもって、しげしげと眺めている。フォークを使ってほしいけど。パンダのなるとってなんだろう? しばらく考えて、ずっと前に購入したフリカケに入っていたことを思い出す。よく覚えているなあ。
「おかあさん、なると、みつけたら教えてね」
はいはい。早速、私のどんぶりのなかに浮かぶちいさな「なると」を発見したので、ハシでつまんで娘の器にいれてあげる。
ひとつ、ふたつ、みっつ……
「おかあさんのラーメン、なるといーっぱい入っていたねえ!」
ちいさな「なると」は、すぐさま娘の口へと入っていった。
ニコニコと笑いながら食べる娘。器の外に、麺がちらばっている。口元に、ラーメンの汁が飛んでいる。さっき家の中、掃除したばかりなんだけどな。また片付けなきゃな。
「おかあさんが作ってくれたラーメン、おいしいねえ!」
そんなこと言われたら、たとえ汚れてもたまにはラーメンもいいかなってなっちゃうな。
なると一つでそんなに喜ぶなら、おかあさんの分、全部あげるよ。たとえそれが残り1枚のチャーシューだって、きみが笑うなら惜しくないよ。
ご飯をもくもくと口に運ぶ子どもを、にこにこ見つめる親御さん、おじいちゃん、おばあちゃんって世の中にいますよね。
自分はコーヒー1杯で、アイスクリームを食べる子どもを眺めていたり。
「なんにも食べなくていいのかな?」
「なんでうれしそうなんだろう?」
子ども時代、ちょっと不思議だった。
でもたぶんそれって、こんな気持ち。
あたたかいものを見つめるような。幸せを、おすそ分けしてもらっているような。
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