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埴輪紹介所

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はにこが出会った埴輪たち。埴輪との出会いの衝撃をあなたにも。これはと思う埴輪がいたら、会いに行ってみて。埴輪のいる人生が始まります。
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#発掘された日本列島

こまりんぼ【埴輪紹介所その1】

埴輪紹介所はじめました。 初回はこまりんぼ。 埴輪ならではのプロポーション。 上着の下のトリック。 横から見ると、とっても細い。 クツは平べったい。 でも鼻は高く、立派なミズラを結っています。 弓もユギもないけど、鞆を腰に下げる。大刀も。 肩甲(かたよろい)と籠手(こて)で腕はがっちりガードも、胴体はのっぺりで甲っぽくない。大丈夫か。 冑は謎多し。 いつもこまり顔。ため息が聞こえる。 そんな彼がわたしは大好き。 群馬県藤岡市白石字滝出土の男子埴輪。 所蔵はトーハ

猫のヒゲ記号【埴輪紹介所その181】

埴輪を作るときには、型もろくろも使われません。一つ一つ、粘土紐を重ね、手びねりで生まれてきます。 そのためか 円筒埴輪も、よく見ると個性があります。 厚み、突帯(とったい)の形や位置、透孔(すかしあな)の形、上端の開き具合。 こちらの円筒には線刻があります。 透孔(すかしあな)の右に三本、左に三本か四本。猫のひげみたい。 このような、円筒埴輪に刻まれる紋様でも絵でもない線刻は、「ヘラ記号」ではないかとの説があります。何かの目印と推測されています。 何を示しているの

書類ケースとコンパス【埴輪紹介所その147】

もとになった物がイメージできない。 頭に一体なにを乗せているの? 図録では「箱形の器」となっていた。 たしかに箱形。薄型の箱。やや台形。書類ケース? 埴輪時代、まだ紙はないか。ギリギリあるか? そして額の左端に挿している棒は? 櫛かかんざしのようなもの? ペンじゃないよね。筆はあるか? 筆は挿さないか。 円盤状の髷が丸顔に似合う。 白地に赤い水玉模様の上衣も。 円の中心には小さな穴がある。コンパスみたいな道具で円を描いたらしい。正円である。きちょうめん。 はっ 

カーディガンをはおって踊る【埴輪紹介所その139】

埴輪の上衣はたいてい左前の一枚物だ。 ところが彼女は 三枚着ている。 上着の上に一枚重ねて、さらにもう一枚はおる。 三枚目は前を開けている。カーディガン? 新しいモードなのか。左右対称も珍しい。 ところで 美人ね。 美人の埴輪は大勢いると思うが、いまひとつ活用されていなくてもったいない。 ヒビが入ってたりするから使いにくいのか。 いや、埴輪の真髄が、美とはまた別のものだからか。 髷は板状だが輪郭は曲線を描く。 額に、というかおそらくは前髪に、櫛。 耳玉あり。耳

読み取りきれないからこそ【埴輪紹介所その122】

凛々しさと 憂い? その横顔は 衝撃的なまでに立体的。モデルの実在を想像させる。 髷の前側は欠けているものの、情報はいろいろ残っている。 後ろに垂れ下がる髷は重みが感じられるほどの立体的な厚み。 頭部以外は出土していないにもかかわらず、埴輪界では有名人の彼女。写真がさまざまな埴輪本に載っている。 その理由の一つは読み取りきれない表情を持っているからでしょう。その謎に人は引きつけられる。 もう一つあるとすれば、日本最大の古墳から出土したからか。 大阪府堺市の大仙(

片翼の愛おしさ【埴輪紹介所その121】

上部に浮かび上がるやじり。 その下には、この写真では分かりにくいですが、直弧紋が描かれています。矢入れのユギです。 背板は右が一部残っている。左と上は欠けている。 ともかく、矢は守られた。 背面の棒状の支えは展示用。たぶん。 背部の円筒がわずかに残っている。 片翼の愛おしさ。 アンデルセン『野の白鳥』を連想する。片翼では、飛ぶことも矢を射ることもできない。 大阪府羽曳野市の墓山(はかやま)古墳(応神(おうじん)天皇陵飛地(とびち)ほ号(史跡墓山古墳))出土のユギ形埴

三角の補強で迫力の通せんぼ【埴輪紹介所その120】

この迫力よ。 宮内庁のサイトによれば、現状での高さはおよそ116.5㎝。上部が欠けており、本来は150cm以上と推測されている。 そして「渡土堤をふさぐように並べられていた埴輪列のなかの一つ」。 通せんぼするにふさわしい盾である。 縦横斜めに走る線刻を確認。 背面も迫力。 後ろ側に突帯(とったい)がめぐっている。 本体は円筒埴輪、それに板をつけたということがわかる。 側面をあおると、三角が見える。 なるほど。補強してあるのね。 奈良県奈良市の佐紀陵山(さきみささぎや

きれいな丸い孔の情報【埴輪紹介所その119】

底に孔があけられているのがよくわかる、うまい展示。 きれいな丸い孔。焼く前にあけたということになる。 角度によっては底部が花のよう。 まさかこれも計算か? まさか。 口縁はくっきりとした二重口縁。 埴輪黎明期の埴輪。 奈良県桜井市の箸墓古墳(倭迹迹日百襲姫命大市墓(やまとととひももそひめのみこと おおいちのはか))出土の壺形埴輪。高さ45.0㎝、口径33.7㎝。前方部頂上に直接置かれていたらしい。 後方部からは突帯三条の壺形埴輪が出土しているようだが未見。見たい。

一文字口【埴輪紹介所その118】

頭にはちまきを巻いているらしい。髷は残念ながら一部しか残っていない。 顔の彩色もよく分からず。 くび飾りの玉はだいぶ取れてしまったらしい。埴輪のおしゃれの基本の耳環もない。 かろうじて上衣のあわせが斜めに残る。ちなみに埴輪はたいてい左前。 そんな彼女の口は一文字。 しかし同じ古墳出土の埴輪と見比べると、面白いことがわかる。 への字口の彼と姿が似ているのだ。 卵形の頭に寄り気味の目、長い腕、全体にすらりとしている。 そうなると口の違いが気になる。 栃木県下野市の甲塚

への字口【埴輪紹介所その117】

上げミズラ。おだんご形は珍しい。 すらっとしています。 しかし顔。 眉に沿って赤いライン。ほほには赤い+印。 それはいいとして、なぜおもいっきりへの字口なのか。 どうしたのさ。 かぶり物がないから? くび飾りがないから? 鍬がないから? お団子ミズラがイヤなのか? 腰に佩いた大刀がお箸みたいで気に入らないのかも。 栃木県下野市の甲塚(かぶとづか)古墳出土の男子埴輪。高さ97.1cm。 甲塚古墳出土品は一括で重要文化財に指定されています。 所蔵は下野市教育委

労働がもたらす余裕の笑顔かもしれない【埴輪紹介所その116】

ながーい帽子にくび飾り。そこそこ着飾っていると思うが、肩には鍬。 顔の左右に突き出す上げミズラ。どうやって結っているのか。 右の袖はどうなっているの? なぜ左と違うの? 彼は赤い顔でにっこりするだけである。 畑仕事のあとに一杯引っかけた、かのようだが、赤いのはたぶんメイク。 埴輪時代の労働と美と弔いの感覚はまだつかめない。 栃木県下野市の甲塚(かぶとづか)古墳出土の男子埴輪。高さ107.6cm。 甲塚古墳出土品は一括で重要文化財に指定されています。 所蔵は下野市教

トンカチくんの半笑い【埴輪紹介所その115】

赤いほほ。なぜか口が右半分しかない。 でも笑顔に見える。 半笑いというとあまりいいイメージではないが、彼の半笑いは温かみがある。 トンカチ形の下げミズラを結う。 脚部は復元。左腕は失われたまま。 右手で何を差し出してくれているのか。 栃木県下野市の甲塚(かぶとづか)古墳出土の男子埴輪。現存高さ56cm。 甲塚古墳出土品は一括で重要文化財に指定されています。 所蔵は下野市教育委員会。 撮影は『発掘された日本列島2015』(於・江戸東京博物館)にて。 またね。

大刀を盾つきの鞘から抜いたらどうなるとか考えない【埴輪紹介所その112】

まず、これは大刀です。 その 大刀の鞘に 盾をつけてしまう。 なんという荒技か。 鞘から大刀を抜いたらどうなるのか。盾は盾として使えるのか。盾のサイズは。そもそも腰に履けるのか。 とか考えない。埴輪なのだから。 組み合わせ埴輪はいろいろある。冑と甲の組み合わせまでは実際に存在しただろうが… 現実に盾つきの大刀などない。少なくとも出土していない。 さすが埴輪。 ちなみに 上端開放型。U字カットあり。 柄が鹿の角でできている鹿角装(ろつかくそう)大刀がモデルと思わ

どうしてもギザギザしたい【埴輪紹介所その107】

分類するなら円筒埴輪の仲間です。 ですが 頭が ギザギザだらけ。 上端が平坦な埴輪をつくるより、手間がかかるのに。 どうしてもギザギザしたいらしい。 ギザギザたちをまとめてご紹介、ですが名前がまだ確立されていません。はにこは鋸歯筒形埴輪と呼んでいる埴輪。 突帯(とったい)2条。 透孔(すかしあな)は四角と円。半円もあったかも。突帯の間や下。 左チームは墳丘と出島(墳丘から陸橋でつながっている島状遺構)との間から出土、右チームは造り出し(墳丘から突き出た壇)から