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埴輪紹介所

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はにこが出会った埴輪たち。埴輪との出会いの衝撃をあなたにも。これはと思う埴輪がいたら、会いに行ってみて。埴輪のいる人生が始まります。
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#江戸東京博物館

こまりんぼ【埴輪紹介所その1】

埴輪紹介所はじめました。 初回はこまりんぼ。 埴輪ならではのプロポーション。 上着の下のトリック。 横から見ると、とっても細い。 クツは平べったい。 でも鼻は高く、立派なミズラを結っています。 弓もユギもないけど、鞆を腰に下げる。大刀も。 肩甲(かたよろい)と籠手(こて)で腕はがっちりガードも、胴体はのっぺりで甲っぽくない。大丈夫か。 冑は謎多し。 いつもこまり顔。ため息が聞こえる。 そんな彼がわたしは大好き。 群馬県藤岡市白石字滝出土の男子埴輪。 所蔵はトーハ

書類ケースとコンパス【埴輪紹介所その147】

もとになった物がイメージできない。 頭に一体なにを乗せているの? 図録では「箱形の器」となっていた。 たしかに箱形。薄型の箱。やや台形。書類ケース? 埴輪時代、まだ紙はないか。ギリギリあるか? そして額の左端に挿している棒は? 櫛かかんざしのようなもの? ペンじゃないよね。筆はあるか? 筆は挿さないか。 円盤状の髷が丸顔に似合う。 白地に赤い水玉模様の上衣も。 円の中心には小さな穴がある。コンパスみたいな道具で円を描いたらしい。正円である。きちょうめん。 はっ 

気になる中身ふたつ【埴輪紹介所その146】

右手に持っているのはなに? 図録では「ひさご形の容器」となっていた。 何にせよ、モデルがあったはず。 柄杓のようなものだとしても、その持ち方だと今はカラね。 中に何か入るとしたら、液体かな。 頭に乗せた器の上は閉じている。 あけて見せて。 壺を頭に乗せて水を運ぶ、というのは世界各地で行われる行動のようだけど、これは壺ではない。 何を入れるための器なんだろう。フタの形状から見て液体っぽくないな。 鼻から眉にかけての整った曲線。 頬を赤く塗る。 凝ったネックレス。 耳

布は残った【埴輪紹介所その145】

上から左側へと垂れているのが布。 その下の板は経送具(たておくりぐ)というものらしい。 右側の丸みのある部分は機織る人の上着の裾らしい。 織る人は、ほかは腕のかけらしか出土していないらしい。 頭部がないと髪型がわからない。ということは厳密には性別不明なのだ。 そして、顔がないと、図録やポスターのメインからは外されてしまう。 機も不明部分が多いが、原始機(げんしばた)や腰機(こしばた)と呼ばれる機らしい。 栃木県下野市の甲塚(かぶとづか)古墳出土の、機台を持たない機で機

縞・水玉・市松を難なく着こなす【埴輪紹介所その144】

よく見ると、色付き。 中央の布は赤と黒の縞。 それを織っている機(はた)は白黒。 織る人の上衣は、白地に赤の水玉もようで裾はぐるりと赤い。 スカート状の裳(も)は、白黒の市松文様で赤い縁取りがされています。 腰の後ろにあるのは何だろう。体を支える道具? 衣装の一部? 復元すると、鮮やかな色の縞・水玉・市松もよう。 埴輪は難なく着こなすが、当時の人々が本当にそうだったのか、埴輪世界の色彩と紋様なのか。 顔はないけれど、髷(まげ)は出土しているもよう。 ということは女子で

カーディガンをはおって踊る【埴輪紹介所その139】

埴輪の上衣はたいてい左前の一枚物だ。 ところが彼女は 三枚着ている。 上着の上に一枚重ねて、さらにもう一枚はおる。 三枚目は前を開けている。カーディガン? 新しいモードなのか。左右対称も珍しい。 ところで 美人ね。 美人の埴輪は大勢いると思うが、いまひとつ活用されていなくてもったいない。 ヒビが入ってたりするから使いにくいのか。 いや、埴輪の真髄が、美とはまた別のものだからか。 髷は板状だが輪郭は曲線を描く。 額に、というかおそらくは前髪に、櫛。 耳玉あり。耳

一文字口【埴輪紹介所その118】

頭にはちまきを巻いているらしい。髷は残念ながら一部しか残っていない。 顔の彩色もよく分からず。 くび飾りの玉はだいぶ取れてしまったらしい。埴輪のおしゃれの基本の耳環もない。 かろうじて上衣のあわせが斜めに残る。ちなみに埴輪はたいてい左前。 そんな彼女の口は一文字。 しかし同じ古墳出土の埴輪と見比べると、面白いことがわかる。 への字口の彼と姿が似ているのだ。 卵形の頭に寄り気味の目、長い腕、全体にすらりとしている。 そうなると口の違いが気になる。 栃木県下野市の甲塚

への字口【埴輪紹介所その117】

上げミズラ。おだんご形は珍しい。 すらっとしています。 しかし顔。 眉に沿って赤いライン。ほほには赤い+印。 それはいいとして、なぜおもいっきりへの字口なのか。 どうしたのさ。 かぶり物がないから? くび飾りがないから? 鍬がないから? お団子ミズラがイヤなのか? 腰に佩いた大刀がお箸みたいで気に入らないのかも。 栃木県下野市の甲塚(かぶとづか)古墳出土の男子埴輪。高さ97.1cm。 甲塚古墳出土品は一括で重要文化財に指定されています。 所蔵は下野市教育委

労働がもたらす余裕の笑顔かもしれない【埴輪紹介所その116】

ながーい帽子にくび飾り。そこそこ着飾っていると思うが、肩には鍬。 顔の左右に突き出す上げミズラ。どうやって結っているのか。 右の袖はどうなっているの? なぜ左と違うの? 彼は赤い顔でにっこりするだけである。 畑仕事のあとに一杯引っかけた、かのようだが、赤いのはたぶんメイク。 埴輪時代の労働と美と弔いの感覚はまだつかめない。 栃木県下野市の甲塚(かぶとづか)古墳出土の男子埴輪。高さ107.6cm。 甲塚古墳出土品は一括で重要文化財に指定されています。 所蔵は下野市教

トンカチくんの半笑い【埴輪紹介所その115】

赤いほほ。なぜか口が右半分しかない。 でも笑顔に見える。 半笑いというとあまりいいイメージではないが、彼の半笑いは温かみがある。 トンカチ形の下げミズラを結う。 脚部は復元。左腕は失われたまま。 右手で何を差し出してくれているのか。 栃木県下野市の甲塚(かぶとづか)古墳出土の男子埴輪。現存高さ56cm。 甲塚古墳出土品は一括で重要文化財に指定されています。 所蔵は下野市教育委員会。 撮影は『発掘された日本列島2015』(於・江戸東京博物館)にて。 またね。

大刀を盾つきの鞘から抜いたらどうなるとか考えない【埴輪紹介所その112】

まず、これは大刀です。 その 大刀の鞘に 盾をつけてしまう。 なんという荒技か。 鞘から大刀を抜いたらどうなるのか。盾は盾として使えるのか。盾のサイズは。そもそも腰に履けるのか。 とか考えない。埴輪なのだから。 組み合わせ埴輪はいろいろある。冑と甲の組み合わせまでは実際に存在しただろうが… 現実に盾つきの大刀などない。少なくとも出土していない。 さすが埴輪。 ちなみに 上端開放型。U字カットあり。 柄が鹿の角でできている鹿角装(ろつかくそう)大刀がモデルと思わ

どうしてもギザギザしたい【埴輪紹介所その107】

分類するなら円筒埴輪の仲間です。 ですが 頭が ギザギザだらけ。 上端が平坦な埴輪をつくるより、手間がかかるのに。 どうしてもギザギザしたいらしい。 ギザギザたちをまとめてご紹介、ですが名前がまだ確立されていません。はにこは鋸歯筒形埴輪と呼んでいる埴輪。 突帯(とったい)2条。 透孔(すかしあな)は四角と円。半円もあったかも。突帯の間や下。 左チームは墳丘と出島(墳丘から陸橋でつながっている島状遺構)との間から出土、右チームは造り出し(墳丘から突き出た壇)から

ギザギザが過ぎる【埴輪紹介所その106】

上端がぜんぶギザギザの、方形筒形埴輪。 ギザギザキング。 高さ34cm、長幅56.2cm、短幅51.6cm。何かを囲うための形と大きさ。 しかし中はからっぽ。いや、何かしらあったはず。 図録によると、周囲には家形埴輪があったが、内側にはなく、小円礫が敷き詰められていた、とのこと。 石庭? いや、図録では、瑞垣(みずがき)によって聖域や禁足地を囲った状態では、とあった。 間隔の狭い突帯(とったい)が2条。 透孔(すかしあな)は四角い。出入り口か。入れる人もいた。 造り出

目がない魚形埴輪【埴輪紹介所その91】

目は見当たらないが、エラが刻まれている。まっすぐすぎるが。 口もちゃんとある。 胸びれ・しりびれ・尾びれがある。 背びれもあるのかな? とれちゃったか? 何の魚だろう。 下記の野田市のページでは「利根川を遡上する鮭の可能性がある」とのこと。 しかしそれならもう少し大きく作ってほしいところ。 魚の全長18cm。 そんなことより むりやり円筒に乗っけたところがすごい。さすが埴輪。高さ23cm。 しかしこんなに埴輪にしにくい魚を作ったのはなぜか。 千葉県流山市の