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「マネージャーが、部下に指示を出す」という発想は、なぜダメなのか?

多くの変化が日々生まれる中、その変化に適応し、結果を出し続けている企業と、変化に適応できずに苦戦している企業が存在します。

そんな中、一般的な組織運営のスタイルである「マネージャーが部下に指示を出し、部下の実行を管理する」というマネジメントがデファクトになっている企業の多くは、苦戦をされているように感じます。

どうしてなのでしょうか?

それは、「マネージャーが指示を出す」「部下を管理する」という(組織としての)やり方が、部下(および組織)のパフォーマンスを下げる原因になってしまうためです。

言い換えれば、そもそも「マネージャーが部下に指示を出し、部下の実行を管理する」という考え方をしている時点で、変化への対応に苦戦し、パフォーマンスを上げられない立ち位置になってしまっていることになります。

以下では、「なぜ、ダメなのか?」と「じゃあ、どうすればいいのか?」について、書いてみたいと思います。

なぜ、ダメなのか?

「マネージャーが部下に指示を出し、部下の実行を管理する」というマネジメント・スタイルだと、部下のパフォーマンスが低下する理由は、以下の3点です。

① 部下のモチベーションを下げてしまう。
② 創意工夫や試行錯誤が減退し、パフォーマンスが落ちてしまう。
③ 現実とのギャップへの適応に時間がかかってしまう・うまくいかない(=機動力がなくなる)。

会社員時代の自分の経験と、コンサルとしてプロジェクトに参加した際の経験を引用しながら、上記の3点についてご説明します。

経験 - その①
私が新卒で就職した会社での経験です。

3年半、ある支店で勤務した後、本店に異動になった時のことです。支店では「自分が考え、計画し、実行する。そして、仕事の結果に責任を持つ」という環境で仕事をしていたのですが、本店では「上司が考える方針に従って仕事をする。自分の考えを入れる余地はない」という環境になりました。

途端に、仕事がつまらなくなり、私のモチベーションは急降下しました。「自分の考えで仕事をすることができない」という状況が、仕事をまったくつまらないものにしてしまいました。

それにより、仕事に対する努力の総量や、(仕事のために)考えたり勉強したりする総量も激減しました。創意工夫や試行錯誤への熱量も減退し、成績も「普通」まで低下してしまいました(支店時代は、常にトップ層に入っていたのですが・・・)。当然、成長も鈍化しているはずです。

経験 - その②

まったく同じ経験を、転職した会社でもしました。

会社の規模、職種、(多分)仕事の難易度は大きく異なりますが、「自分の考えで動けないと、仕事がつまらなくなる」「仕事がつまらなくなると、モチベーションは低下する」「すると、努力や勉強の総量も減少する」「創意工夫・試行錯誤への熱量も低下する」というパターンはまったく同じでした。

人は感情に強く支配されるので、「仕事から楽しさがなくなる」「仕事がつまらないと感じる」時には、モチベーションが低下します。そして、モチベーションの低下がその人のパフォーマンスと成長スピードにブレーキをかけます。

経験 - その③

3つ目の経験は、コンサル・プロジェクトで遭遇した事例です。

ある企業の新規事業がなかなか立ち上がらず、その立ち上げをサポートするプロジェクトに参画した時の経験です。

その企業では、本部が目標、戦略、戦術をすべて決めると共に、現場スタッフの具体的な仕事の仕方まで(本部が)マニュアル化していました。本部の発想は、「綿密に練られた戦略・戦術と、最適化された業務マニュアルが、事業の成功確率を最も高める」というものでした。そのため、現場スタッフへは業務マニュアルに忠実に従うことを強く求めていました。

これに対する現場スタッフの反応は、「業務=やらされている仕事」という感覚が強く、モチベーションが高まらない様子でした。当然、仕事への熱量も低い状態です。

加えて、マニュアル通りの遂行を強く求められたため、現場スタッフが「考える」ということをしなくなっていました。なので、創意工夫や試行錯誤などはまったく起こらない状態です。

そして、大きな壁になったのが、本部が戦略・戦術を立案し、業務マニュアルを作成する上で土台にしていた「顧客ニーズ」が、実際のお客様ニーズから乖離していたことです。それがボトルネックになっていて、ビジネスが想定通りに回っていきません。

本来なら、その乖離を現場スタッフが敏感に察知し、戦略・戦術・マニュアルの修正へとつなげていくべきです。

しかし、「本部からの指示は絶対」という環境の中にいる現場スタッフからは、そうしたフィードバックはあがってきません。なので、乖離がある状態のまま、日々の業務が継続されていました。もちろん、業務がうまくいくはずありません。

最終的に、本部が乖離に気づいたのは、かなり時間が経ってからのようでした。

結局、組織として高いパフォーマンスを発揮し、結果を出すためには、部下一人ひとりのモチベーション(=がんばる原動力)が必須になります。

また、どんなビジネスも、どこかで必ず問題に直面するわけで、その時にその問題を解決し、前進するための「考える力」「創意工夫」「試行錯誤」がカギになります。

しかし、「マネージャーが部下に指示を出し、部下の実行を管理する」というスタイルでは、そうした必須となるべき要因を潰してしまうことになります。

だから、そのマネジメントはダメなのです。

じゃあ、どうすればいいのか?

解決策の第一歩は、マネジメントの土台になる発想を、「メインプレーヤーは部下。だから、部下が考え、判断し、実行する。マネージャーは、そのサポートをする役」というものにすることだと考えます。

あわせて、「結果への強い執着」「創意工夫・試行錯誤への執念」という組織文化を醸成することと、「組織内のコミュニケーションをフラットで活発なものにする」こと。

すると、部下のモチベーションが上がりやすくなり、部下は自ら創意工夫・試行錯誤をするようになります。また、機動力のある仕事の仕方をするようにもなります。

そして、その時に(部下が)より効果的に創意工夫・試行錯誤が出来るようにサポートするのが、マネージャーの役割になります。

もう少し詳しく書いてみます。

①「部下が考え、判断し、実行する」と、どうしてモチベーションが上がるのか?

モチベーションを左右する最も重要な要素のひとつが、「(仕事が)楽しいかどうか?」です。

そして、自分の仕事において、自分で考え、判断し、実行できる「裁量(=自由)」があれば、仕事は楽しくなりやすい。

反対に、自分には考える自由がなく、上司の指示に従うだけの場合、「仕事がつまらない」と感じてしまう可能性が高まります(優秀な人材ほど、“つまらない”と感じてしまいます)。

よって、部下に「自分の仕事を、自分で考え、判断し、実行する」という自由を与えることで、部下は仕事に対して「楽しさ」を感じ、それがモチベーションを高める原動力になります。

もちろん、「どこまで自由を与えるか?」は部下の能力によりけりなので、そこを見極めるのがマネージャーの仕事になります(要は、マネージャーの仕事は、部下の能力にあわせて部下の仕事を設計することになります)。

②「部下が考え、判断し、実行する」と、どうして創意工夫・試行錯誤をするようになるのか?

理由は2つです。

ひとつは、(上記のように)モチベーションが上がるからです。

仕事に対してより前向きになり、仕事について考える総量も努力の総量も大きくなります。これが、創意工夫・試行錯誤を生み出す土壌になります。

もうひとつは、自由が広がること。

創意工夫の源泉は、自分が自由に考え、自由に行動できること。また、いろいろなことを試みること(=試行錯誤)の源泉も、そうした自由が存在すること。

よって、自分の仕事を自分で決められる自由があると、部下は創意工夫・試行錯誤をするようになります。自分が考え、実行できる範囲が広いということは、「大きな自由」を手に入れていること。大きな自由は、創意工夫やいろいろな試みをする(=試行錯誤)ことの強い源泉になります。

もちろん、そこでより効果的に創意工夫ができるように。また、粘り強く試行錯誤をするように部下を導くのが、マネージャーの役割になります。

③ 組織文化は、どのように寄与するのか?

組織文化は、その組織内の人間が、どのように考え、判断し、行動するかを司る力を持ちます。

例えば、結果を出すためにどれだけ創意工夫をするか? 試行錯誤を積み重ねるか?は、(個人の資質に加え)その組織に属する人達がどのような振る舞いをしているかに大きく影響されます。

例えば、何事においても創意工夫をすることが常となっている組織に入った新人は、同じように創意工夫をすることが「あたり前」になっていきます。

そして、その組織内の「あたり前」を司っているのが、組織文化です。創意工夫や試行錯誤を貴ぶ組織文化を育む。同時に、結果に執着する組織文化を育む。

それによって、結果を出すために、創意工夫や試行錯誤を粘り強く続ける仕事の仕方が定着していきます。

※ 組織文化の役割や育み方については、(長くなるので)別記事にまとめたいと思います。

まとめ

マネジメントのやり方として一般的に理解されている「マネージャーが部下に指示を出し、部下の実行を管理する」という発想が、部下や組織のパフォーマンスを妨げる要因になっているのではなかという考え方を書いてみました。

根本にある原因は、「マネージャーからの指示を実行する」「マネージャーから管理される」という状況に置かれることで、部下は「仕事の楽しさ」や「仕事における自由」を失い、それが部下のモチベーション、創意工夫、試行錯誤、機動力などを奪ってしまうというメカニズムになっているためだと考えています。

よって、マネジメントの発想を転換し、「メインプレーヤーは部下。だから、部下が考え、判断し、実行する。マネージャーは、そのサポートをする役」と考えることで、部下(および組織)のパフォーマンスは大きく改善できると考えています。

以上が、私が自分の経験から感じていたことを、書籍や論文を読む中で得た知識によって整理した結論です。

いかがでしょうか?

共感していただける部分や、参考にしていただける部分があればいいなと思います。

そして、最後まで読んでいただきありがとうございました。

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