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The anatomy of spatial neglect

HO Karnath ,C Rorden:Neurophychologia,50 2012

・空間無視の定義

・空間無視とシルビウス周囲ネットワーク

・付加的側成化がある注意と空間障害

・急性期と慢性期損傷の違い

・構造的、機能的画像

空間障害を引き起こす原因病巣を右半球優位の脳のネットワーク障害としてとらえている。急性期・慢性期で構造の変化と機能的変化の関係について述べている。

側頭頭頂結合部(TPJ)と下頭頂葉(IPL)、上中側頭葉と島、腹側外側前頭前野の皮質領域がシルビウス線維に広がることを提示している。(左半球損傷後の患者群が空間無視を示す場合、これらの皮質領域は左半球にも含まれる)Karnath(2009)はシルビウス周囲ネットワークに右半球の上/中側頭、下頭頂葉、腹外側前頭葉を含んでおり、空間定位の過程を含む解剖学的な基礎となっている。

これら神経群は空間における身体位置・動きについて、情報を与える。これらは外部空間における身体位置の適正化に重要な役割をはたす(Karanath2006)。身体オリエンテーションの生成過程で重要である。

下頭頂葉と外側前頭前野(上従束SLFⅡ・Ⅲ‐Ⅱ・Ⅲと上頭頂前頭束SOF),腹外側前頭葉と上/中側頭葉、島(弓状束AF、包/下後頭前頭束EmC/IOFを通過),上側頭葉と下頭頂葉(中縦束の後側MdLFとEmC/IOFを通過)。


右半球損傷は多彩な注意と空間障害を示す。多くは線分二等分線課題でエラーを起こすが線分二等分線でのエラーは物体中心表象であり、空間無視は自己中心表象のエラーである。自己中心表象は上側頭葉、物体中心表象は後/下方。

Verden(2010)らは、80人の右半球損傷患者に対して行動検査を行った。従来の消去課題は前頭側頭損傷と関連し、線分二等分線や読書課題でのエラーはより後方域での損傷患者で起こった。物体中心障害は中下側頭回と下位構造(海馬周囲を含む)への皮質損傷と関連している。

視覚の消去も右半球でおこる知覚障害である。空間無視と消去は似たような発生で起こるが行動的には別物のように感じる(能動的と受動的の違いか?探索・意識しているから?)KarnathらによるとTPJがこの障害の責任部位であるとしている。Gradjean(2008)によるとTPJの損傷で聴覚刺激の消去を起こした。Ticini(2010)によると消去はTPJの低血流障害と強く関連していることがわかった。TPJ(右半球)が消去減少と強く関連していることが示唆されている。

Samuelsson(1997)の先駆的業績で、側頭葉の白質が永続的な空間無視の因子であることを同定した。急性期を通過した症例では上中側頭葉、島、下中前頭葉、島、下中前頭葉、下頭頂葉が因子となる。

Karnath(2011)らは皮質下の基底核と上中側頭葉の損傷が無視の続く因子と予測している。この部位損傷がない急性期患者で空間無視があった症例で回復していく予後がいいことを示すことに言及している。


*Karnathとの比較として・・下頭頂葉(縁上回+角回)の皮質・皮質下病巣が典型的なUSNを生じる病巣。下前頭回を中心とし一部中前頭回にも及ぶ皮質・皮質下病巣も半側空間無視を起こすがより軽いことが多い。そのほかの空間性注意の神経ネットワークも複合的に損傷されるとUSNがおこることがある。(石合2017)