「ブラックジャック」(手塚治虫)で印象的なお話~<海賊の腕>~

何巻掲載か忘れた。思い出せる範囲で、あらすじを記す。

〇海賊の腕→優秀な鉄棒選手。大輪が得意で、それによってかなりの自信+知名度。学校でも有名な男の子、イッチン。ある日、練習中に砂場に落下。誰にも言えず隠し通し、練習に励んでいたが、遂に母親にバレ、病院へ。ガス壊疽(えそ)を引き起こし、切断。ピーターパンのフック船長さながらの義手。「海賊の腕」となってしまった彼は、完全に自暴自棄の生活に陥る。鉄棒選手として再起不能以上に、精神的な落ち込みが余りに酷く、その腕を鉄棒に叩きつけては憂さ晴らしをしたりする。

「痛いじゃないか!」腕が何と喋ったのだ。何なんだと思っていたが、その声の主は、実は秘かに彼に恋心を抱いでいた、某女の子。「やだね、あんな奴」好みじゃねぇやと忌み嫌っていた彼。女の子はトランシーバーをどうにかし、その腕に自分の声を吹き込んでいたのだ。精神的ダメージが大きく、誰にも心を開けなくなった彼は、知って驚く。同時に段々、誰にも言えない本音をその腕に言うようになる。「将棋なんか、いいんじゃない?」挫けそうになる彼を、悪までも声の主として、彼女は励ます。鉄棒選手としては再起不能になったが、将棋によって彼は再び、自信を取り戻すようになる。

みたいな話である。相手が余りに有名すぎ、近づく事すらできない思い。嫌われていると分かっている辛さ。「ケッ!」で終わる以上に受ける、精神的ダメージ。女の子の辛さを、鉄棒選手として再起不能になり、身体的ダメージを受けさせることにより、彼にも与える手塚。ここで2人は、或る意味逆転、或いは平等になる。距離が縮まるのである。

そこから「何か力になりたい。けど、嫌われてるし、、、」。恋の小道具として、「海賊の腕」を用いているのも素晴らしい。なかなかそこまで「過不足なく」「さり気なく」相手。相手を思いやるのは、大変なのではないだろうか?どこでブラックジャックが出て来て、何と言ったか忘れてしまったけれど。「水とあたくれ」「動けソロモン」等も同じ系統となるだろう。

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