トホホ、トホホの七回忌

〇気分悪し 初っ端退席 バイキング(夕飯)の
                 楽しみ失せし 温泉旅行

<短歌 なかむら>

※最悪。NG。ノーグット。
父の七回忌。終えて温泉旅行の一日は、最悪であった。
全くトホホ。全てがトホホ。
今から思えば、予めがあった。
オールトホホの、旅行記だ。

その年の最大予定は、法要。亡父、七回忌の法要である。
「いつにしようか?」
話にのぼったのは、そろそろの春先、3月頃。
各々の都合もあるし、早い方がいいやねと、菩提寺に連絡を入れた段階から、違っていた。
連絡係りは喪主を務めた、わたしである。

埼玉県の我が家から、山形県の菩提寺に、固定電話の番号を押す。
「お早うございます。早朝から申し訳ございません。わたし、平成29年の11月に没しました、、、」
菩提寺→妹宅→菩提寺→妹宅→菩提寺→妹宅。
周回忌の度にやりとりをするのに、今回に限り決まらない。こじれる。
「今、お寺に電話を入れたら、その日はまずいんだって」
「お世話になります。先ほどお電話差しあげた、埼玉県北本市のなかむらですが、、、」
妥協日を見出そうとしているのに、どちらかが拙(まず)い。「どうしても」の先約がある。
自然、往復電話回数が、重なる。10回近くになっていた。
どうにかの妥協日を見つけ、時間を調整。
「この日の午前11時30分からですね。はい、4人で伺いますので、宜しくお願い致します」
受話器に向かって軽く一礼。即、妹宅へ。
「あっ、決まったんで」
連絡しつつも、ぐったりだ。

間(あいだ)1ヶ月半前後。
その日から、わたしは緊張していた。眠れなかった。元々の気質(たち)にこの手の付録(?)。
気になったり、引っ掛かったりしていると、余計に眠れない。
(どうしよう)
思うだけでも、ドキドキする。志向はマイナス。悪循環にハマり込む。
何せ、山形。山形までだ。
<七回忌><山形><用意するもの><忘れたら>
いろんな単語が、グルグル廻る。忘れたら、おいそれと戻れない。
お布施は?花は?
供物を買うのは、あそこでいい?
物入りになるよねぇ。予算の方は、どうしましょう?
終わってからゆく温泉の楽しみより、何故か力(ちから)が入ってしまう。
妹と相談を分かっていながら、(忙しいのよねぇ)
(時間を取ってくれるだろうか?)
ヘンな方向性を考える。

二週間前から、緊張の度合いが高まった。
何かを忘れるような夢を見て、うなされては起きた。息が荒い。
妹はちゃんと時間を取ってくれ、様々が決定。
「温泉の予約もしておいたよ。少しだけ安くなった」
にこにこと報告をしてくれる。

三日前、苦しくなった。
色々とわたしも準備を進める。けど、乗れない。
何かが起こる。
終われば温泉。湯煙りにゴー!
「お疲れ様」バイキングの食事で、傾ける飲み物はさぞ、美味しかろう。
(でも)
でも何だ?何だの部分が良く分からないまま、前日を迎えた。

夜。妹宅に電話。確認を取る。
「明日、朝の4時半に、車で迎えに来てくれるんだよね?」
と、奥から義弟の声がした。
「4時」
「4時ってパパが。いい?」
(4時!4時かぁ~っ)思いはしたけど、こちら連れてって頂く身、
あちら連れてゆく身。
「んー、じゃあ4時に。4時ね。4時に宜しくお願いね」
そして迎えた当日だ。

朝の2時から、起きていた。
4時に来る。2時間なんて、あっと言う間だろう。
喪服をチェックし、靴を確認。ストッキングは大丈夫か?破れてない?
靴はビニール袋に入れておこう。
バッグの中には、老眼鏡も忍ばせる。

3時を廻った。
軽く食すか。パンでいい。余りないけど。
コーヒーは、冷たいのを2杯。緊張している自分が分かる。
おっと。大事な習慣を忘れていた。
仏壇の花の水替え、飲み物替え、お線香あげる。毎日しているから、今日もしないと、気持ちが悪い。
お線香が消える前後に、自動車が近づく音がするだろう。

30分前。
歯でも磨いて、着替えますかね。荷物も玄関先に置いとくか。
5分前。
(そろそろ)
気配すらない。そっと雨戸を開けると、まだ暗い空だった。
体操でもしようかな。第一ラジオ体操を2回やっても、変化がない。
と、4時を15分ほど廻った頃。電話が鳴った。
「ごっめぇ~ん。今、起きた。急いで支度するから」
車の音が近づいて来たのは、約1時間後。午前5時を少し廻る。
玄関のドア鍵が、何故か抜けずに、時間を喰ったそうだ。
「大変だったね」
口で労い、心で怒る。(誰が4時出発、って言ったんだよッ!!)
序に義弟に言ったが、優しい言葉だ。
「一寸遠いし、大変だけど、宜しくね」

道中。
休憩先のドライブインの店内で、飲み物ぐらいは買ったか?
菩提寺に到着したのが、午前11時少し過ぎ。
11時30分からであったが、
「11時からの方が、まだお見えになっていませんで、、、」
結局、12時近くからの法要となった。
終了後は、わたし、妹、義弟、姪の、4人で墓地へ。
墓を洗い、卒塔婆と生花を新しいのに替え、線香を手向ける。神妙な気持ちになる。
暫くしてから戻り、私服に着替える。お茶とお菓子がとても美味しく、3、40分寛いだ。
「ありがとうございました」
一礼をし、菩提寺を後に。

何ともなかった。かつて思った(でも)部分も、消えかかっていた。
さぁて、これから温泉だ!
湯煙りに塗(まみ)れに塗(まみ)れ、ぐっすり寝るのだ。
少し遅めの昼食は、山形駅近くのカレーチェーン店へ。
「どうせバイキングで食べるから、軽めでいいじゃん」
姪は初めてと言ったが、わたしもここは2回目だ。

いろんな面でズレていて、知らずとわたしは、疲れていたのかも知れない。

ホテルに着いたのが、午後の4時半近くと記憶する。
「温泉に入って、少しゆっくりしよう。7時30分でいいね、夕飯は」
話がつく。案内された部屋が、卓球室の近くで、とてもうるさい。
ドアを開けてプレーしている。
「早めに予約したのに、これはない」
妹のお冠である。
「とりあえず、温泉。お風呂ゆこ」
三回忌の時にも泊まったが、泡風呂施設がとてもいい。うっとりする。
今は、女性の利用時間と、係の人から説明を受けていたが、完全忘却。
わたし、妹、姪の女の子ちゃん組は、何故か普通風呂(?)へ。
と、ヘン。
(ん?)ヘンなのだ。
寛げない。邪魔。湯船の水面が、邪魔くさい。
視界のどこかで揺れている。疲労回復どころか、疲れが段々溜まって来る。
妹達より、10分ぐらい早めにあがったが、体を拭いても疲れてくる。
それでも普通を装い、妹達と一緒に部屋に戻る。
ドア開け卓球室では、相変わらずうるさい。
暫くして、義弟も風呂から戻り、「じゃっ、食べにゆこうか」
そして、トホホとなる。

案内をされ、席に着く。
各々プレートで好きな食事を選ぶバイキング方式。
(まずは、ステーキをば)コーナーに行った。
どうにか1皿、手に取った。プレートに乗せるのが、やっとだ。
腕に力が入らない。気持ちが悪い。ふらふらする。
どうにか席に。義弟と姪が何やら笑って話していた。
妹が来る。「なんか、気持ち悪くて」
「えっ!」義弟も驚く。姪もビックリ。
「ちょっと大丈夫?」
妹に寄りかかるようにして、お楽しみの場所から退席。
折角のお楽しみをわたしは、棒に振ってしまったのだ。
ホテルの人から、注目されているのが分かった。食事の時に、こんな姿をさらけ出す客なんていない。

部屋に戻ると同時に熟睡。
バイキング会場に戻った妹は、一旦、様子を見に来た。すやすやぐっすり寝ていたという。安心して再び、夫・娘とバイキングを楽しんだが、イマイチ喉を通らなかったと言っていた。

嗚呼!(でも)の部分って、コレなのね。
何となくスレまくった結果、折角の楽しみは奪われ、いつもはゆく朝風呂も「止めたら?」に「うん」。
義弟が、ホテルからもらった薬を飲みました。
その分、朝食は結構、食べましたけどね。
(あ~っ)
トホホな感情を丸出しにしながら、ホテルを後にする時
「途中で、ご気分が優れなくなったお客様がいるとお聞きしましたが、
大丈夫ですか?」
モロ、わたしに声を掛けて来た従業員がいた。
あなたもきっと、ヨレヨレなわたしを見ていたのね。
「大丈夫です。ありがとうございます」
恥ずかしかったゾ。バビンチョ!

今度は、法事の序でではなく、最初からそのホテル目的にゆきたい。
して、「奪われたあの日」を目指し、バンバン温泉とバイキングを楽しむ。

そんなこんなの、トホホ旅。
世にも珍し(?)トホホだらけでございます。

<了>





























#忘れられない旅


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