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80代のセンパイと暮らす。(52)

実感のないまま、今年も半年終わった。センパイとの自粛生活も3か月を超えた。

全国的な緊急事態宣言が解除になった翌週前半、センパイの同級生が我が家にやってきた。センパイの息子のお参りに来たかったから、と、もうすぐ亡くなって10か月にもなるのに、このタイミングで1人で電車に乗ってやってくるのがすごい。80代恐るべし。外で天ぷらを食べ、お茶してから、うちへ。ひとしきり話してから帰った。何やら微笑むセンパイ。最近、手が動かないのが悩みだったが、「あの人も手が震えてたし、そんなもんなのね」と安心した様子。私が何度慰めても届かないが、ナルホド、そうやって納得していくものなのか。

同じ週の後半、今度は仲良しのトミと映画を観に行った。まだ誰かと一緒に映画館に行く気にならない私を軽やかに越えていった。数週間前、新聞にカトリーヌ・ドヌーヴの新作の映画評が載った。「これ、もうやってるの?」と興味津々。すると次の日、同じ記事を見たトミから電話があった。「やっぱり!ドヌーヴ、観たいわよね〜」と盛り上がる。80代2人をここまで行く気にさせるドヌーヴってすごいパワーがある。

トミが時間や場所を調べて電話することになっていたらしいが、センパイは待っていられない。仕方ないので、どこの映画館でやっているかを私が調べ、センパイとトミの安全な移動プランを考える。そしてトミにメールをすると、やはり朝の電車に乗るのは怖いからやめとく、との返事。仕方ないか、、、とセンパイが諦めようとした時に、トミから電話。「娘に途中まで送ってあげるから、行ってらっしゃい!」と強く勧められたとか。私と同じように思ってくれる娘さんでよかった。そう、80代のセンパイたちに大事なのは、家に籠もってコロナを避けることではないのだ。

朝から出かけ、ランチして、映画観て、お茶飲んで、買い物して、嬉しそうに帰ってきた。「やっぱり映画館で映画観るっていいわねー!」とトミと何度も言って、次はこれを観よう!と約束したらしい。一時気弱になっていた自分を謝ったというトミ。迷いがあって当然だが、会ったことで絶対に2人の免疫力は上がっただろう。

ドヌーヴ含め、ホントにすごいよ、80代のセンパイたち。私も友達に会いたくなった。

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